それで良いの?
ともあれ、仕切り直しとばかりに再度群衆を押しのけ間隙をすり抜け別のバスケットへ到着。……えっと、中身は……あった! あと一つ! よし、今度こそ――
「――あっ!」
「……あら、残念。あと一歩だったわね」
寸前、別の手がさっとパンを掻っ攫っていく。思わず声を上げると、何とも愉悦の窺える笑みでそう口にする女子生徒。……くっ、でもまだチャンスはある。ショルダーチャージでどうにかパンを奪って――
「――ほら、頼んだよ美和子!」
「あっ!」
再度、大きな声を上げてしまう。何故なら――彼女の手を離れたパンは、綺麗な放物線を描きラインの外にいる女子生徒へ届いたから。……いや、だけどこれは――
「……ねえ、あれって『魔女』じゃない?」
「……やっぱり、今年も手強そうだよね」
「……えっと」
再び、何とも不思議なやり取りが届く。すると、戸惑う私に何か察したのか――
「――あれ、あんた私のこと知らないの? その類稀なる魅惑で以て、審判すらも幻惑し虜にすると評判の『魔女』たる私のことを」
「それってありなの!?」
そう、悠然とした笑みで話す魔女さん。……うん、なんかいろんな人いるねこの学校。いろんな変な人が。
……ところで、それはそれとして――
「――審判、オフサイドです!!」
購買の前で何を叫んでいるのだろうと自分でも思うが気にしない。冷静になったら負けなのだ。
「はぁ? よく見なさいよあんた。美和子の後ろに二人もいるでしょ」
「あれ味方じゃん!!」
そう、あっけらかんと話す魔女に速攻でツッコむ私。いや味方じゃんあれ!! それは駄目ってさっき図解で説明したじゃん!!
「はぁ? 味方ぁ? よく見なさいよちんちくりん。あいつら思っ切り喧嘩してんじゃん。ねぇ審判?」
「喧嘩って……えっと、あれのこと?」
何か悪口を言われた気がするけど、ひとまず気にせず見ると……うん、確かに喧嘩はしてるよう。ようだけども――
「おいてめぇ〜ぱんをよこせ〜」
「そうだ〜ぱんをよこせ〜」
「なにを〜そうはいくか〜。ぱんはぜったいわたさねぇぞ〜」
……いや、もはや酷いなんてものじゃない。喧嘩と言うか、もはやじゃれあってるだけ……よもや、あんなので誤魔化せると本気で思って――
「――ノーオフサイド!」
「なんか今ちらっと諭吉みたいなの見えたんだけど!?」
いや買収されてんじゃん!! と言うか虜ってそういう意味かい!! それも、一枚二枚じゃなくなんか封筒にぎっしり――
……あの、それで良いの? 原価が如何ほどか知らんけど、あの量じゃ流石に元取れないと思うよ?




