聞き落とし?
偏差値はそこそこ、部活動でも特筆すべきほどの経歴はない。そして、何かしら目を引くような特別な施設や制度もない――そんな、言ってみれば至って普通の高校なんだけど……そんな我が校には、一つだけ類を見ないであろう異色な行事があって。
それが、この行事――年一回のみ開催されるという、数量限定スーパープレミア焼きそばパンの争奪戦で。
――いや、これだけなら多少なり珍しくはあっても、類を見ないというほど異色ではないかもしれない。……ただ、風の便りによると――どうやら、その規則が何とも特殊なようで……まあ、どんな規則でもどんと来いだけどね!
「――さて、開催に先んじて……皆さまのお目当てたるスーパープレミア焼きそばパンについて、粗方の説明をさせて頂きます。既にご存知の方も、悪しからずご了承願います」
熱狂的な開催宣言の後、落ち着いた声音でそう伝える男子生徒。まあ、知らない人もいるもんね。かく言う私も、実質ほとんど知らないし。
「――まずは、皆さんの強い関心事であろう料金に関してですが……なんと、あのクオリティーで一つたったの300円!」
「嘘でしょ!?」
思わず叫びを上げるも、とりわけ耳目を集めることもなく安堵を覚える。まあ、私の声なんてほぼ響かないほど至る所から歓声が上がってるわけだし。
「そして、その驚くべき内容ですが……最高級と称されるカナダ産小麦を100%使用したこだわりのパンに、A5ランクの霜降り肉をふんだんに詰め込み、そこへイタリア産の白トリュフで丹念に仕上げたソースを惜しみなく――」
「……ゴクリ」
滔々と続く魅惑的な説明に、思わず喉が……うん、聞こえてないよね?
ただ、それはともあれ……いや、それで300円とか無理だよね? どんだけ赤字なの? そもそも、なんで一高校の購買でそこまでする必要が――なんて、そんな根本たる諸々の疑念はひとまず消し去ることに。まあ、年に一回だし数量限定だし、どうにか大丈夫なのだろう。なんでそこまでするのかは……まあ、企画者が頗るお祭り好きだったとかそんな理由だろう。うん、そう思うことにしよう。
……ただ、それはともあれ――
『――以上が、スーパープレミア焼きそばパンの詳細となります』
……あれ、焼きそばどこいった?




