幸い?
「おはよう、雪那ちゃ……あの、大丈夫?」
「……うん、大丈夫だよ暁人くん」
それから数分後。
通学路にひっそりと佇む神社の前で、心配そうに声を掛けてくれるあどけない顔立ちの男の子。彼は斉川暁人――私と同じ松代高校の一年生でクラスメイト……そして、愛しの恋人だったりするわけで。
なので、本来ならもっと前の地点から――願わくば、どちらかが家まで迎えに行って、そこから一緒に登校したいくらいなのだけど……如何せん、私達の家は校舎を挟みほぼ反対側に在するわけで。
そういうわけで、間を取ったこの辺りでいつも待ち合わせをしている次第で……まあ、でも今日に限っては幸いか。絶叫とか見られてたら、早くも心折れそうだし。
「……あの、雪那ちゃん。その……ほんとに大丈夫? なんか、すっごく大変だって聞くし……ほんとに、無理しなくて良いんだよ?」
「……暁人くん」
そう、尚も心配そうに尋ねる暁人くん。……ほんとに優しいなぁ。だけど――
「――うん、大丈夫だよ暁人くん。今日は、私がばっちり食物を調達してくるからふんぞり返って待ってて!」
「いや、ふんぞり返りはしないけど……」
ビシッとサムズアップしてそう伝えると、少し困ったように微笑み答える暁人くん。……まあ、私も全く想像出来ないけど、彼のそんな姿。
ともあれ――いつも私にお弁当を作ってくれる暁人くんに、いつかお返しをしたいと思っていた。そして、その絶好の機会が本日と言うわけで――
――それから、数時間後。
間もなく四限目が終わらんとする頃、俄に教室が慌ただしくなる。……いや、俄でもないか。数十分前……いや、朝のホームルームの時点で、大半の生徒がそわそわしてた感じだし。
――それから、数十秒経て。
――キーンコーンカーンコーン。
チャイムが響くやいなや、即座に教室を駆け出していく生徒達。もちろん、負けじと私も駆け出し……うん、今日だけは最前列で良かった!
その後、普段はまずお目にかかれない人混みを掻き分け到着した先は、購買――正確には、購買の前に広がるロビーの中で。
そして、改めて見渡すと……うん、何とも溢れんばかりの人、人、人。これが通勤電車なら、きっと速攻で勤欲が落ちて……いや、元々ないか。あと、勤欲ってなんだ。
ともあれ、時間が来たようで――卒然、黒一色に身を包んだ男子生徒が、メガホン片手に快活な声で告げる。
『――皆さま、本日はお集まりありがとうございます。間もなく、本日限定50食――スーパープレミア焼きそばパンの争奪戦を始めます!』
――直後、地鳴りのような歓声がロビー内に響き渡った。




