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焼きそばパンを巡って?  作者: 暦海


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1/6

運命の日?

「――くっくっく……ようやく、この日が来たようね」



 柔らかな陽光照らす、ある朝のこと。

 起き上がるやいなや、瞼を擦りつつそんな台詞を口にする。……そう、今日はすっごく大事な日。今日のために、ここ二週間ほど血の滲むようなトレーニングに耐え忍び……うん、ごめんなさいだいぶ盛りました。


 ……ただ、それなりに――少なくとも、私にしては厳しいトレーニングに励んだのは事実。そして、そんな私らしからぬ苦行を遂行した理由は――



「――くっくっく……ようやく、この時が……あの伝説のブツを、我が手中へと収めるこの時が――」





「……ねえ、雪那ゆきな。さっきから、何をぶつくさ言ってるの?」

「――うわっ、急に入ってこないでよママ!」

「いや、さっきからずっといたんだけど。入って良いか聞いたら、うぃ〜っすって言ったじゃないあんた」

「いやそんなこと言っ……いや、言ったかな?」


 ……うん、そう言えばそんな記憶もあるようなあるような。まあ、寝起きでぼおっとしてたし適当に答えたんだろう。


「……ところで、ほんとに良いの? やっぱりいるって言うかもしれないから、一応作っておいたんだけど」


 そう、少し心配そうに尋ねるママ。その気持ちは有り難いし、また申し訳ないのだけど……それでも、さっと首を横に振り――


「……うん、ごめんねママ。でも……今日は、どうしてもお腹を空かせておきたいから」





「――い〜しや〜き〜も〜おいもだよ〜」

「……ん?」



 登校中、少し遠くから何とも陽気な声が届く。どうやら、こちらへ近づいているようだ。……ふむ、腹が減っては戦はできぬと言うし、ここらでいっちょ――


「――馬鹿かお前はーーー!!」

「ええっ!?」

「あっ、いえ違い……すみませんでした」


 突如、住宅街の一本道にて絶叫する私。すると、丁度通りかかったスーツ姿の男性が驚愕の声を……うん、ほんとごめんなさい。


 

 ……いやいや、馬鹿か私は。ここで誘惑に負けたら、もうほんと全部台無しじゃん。


 と言うのも……全ては、今日のために昨日――正確には、昨日の昼食を最後にずっと空腹に耐え忍んできたから。それもこれも、全て今日の……あっ、ごめんなさい夜ちょっとだけ食べました。いや、タコワサとスルメが余りにも美味しくって。


「――今日はなんと〜出血大サービスだよ〜」


 ともあれ――寸でのところで目的を思い出し、改めて気を引き締める。……うん、大サービスは大変捨て難いけど……まあ、石焼き芋はいつでも食べられ――


「――なんと〜衝撃の9割引!」

「血ぃ出過ぎじゃない!?」




 その後、破格の誘惑をどうにか振り切り歩みを進める私。……うぅ、いしやきいも。


 ――いや、でも今日は仕方なかった。むしろ、何とか誘惑に耐え凌いだ自分を褒め称えてあげるべきだろう。うん、頑張ったよねわた――


「――本日〜本日限定増量サービス〜本日限定盛り盛りサービスだよ〜」

「……ん?」


 頑張ったよね私――そんな思考の寸前、ふと底抜けに明るい声が耳に届く。見ると、某コンビニの店員さんのようで。


 でも……盛り盛りサービスって、ちょっと前に終わらなかったっけ? もしかして、前回とは違うのかな? なんか、今日だけみたいだし。


 ……まあ、いずれにせよ今は素通り(スルー)一択。非常に残念ではあるけど……まあ、増量と言っても実際そこまででは――


「――なんと〜今回は増量470%!」

「盛り盛りにも程があるよ!!」







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