第20話
「あー、仕事ないなぁ」
「社長はそう言いますけれども、それだけ世の中が平和だと思えばいいのではないでしょうか?」
「聖ちゃんが言うならね」
今日は休日なので、事務所にほぼフルメンバーです。
「あ、そうだ。忘れる所でした。大変!先日はうちの神社に多額の現金をありがとうございます!両親からくれぐれもと言われていました」
「いいのよ。あのくらい、ちょっと小銭を…ってくらいだから」
小市民には多額なんです。賽銭箱に札束は入りません!
「あ~あ、暇だし。エルフでも探しに行きましょうか?」
「エルフってどこにいるんですか?」
「自然豊かなところって言われてるわね。アマゾンにでも行ってみる?」
ひえ~っパスポートもないし、そんなところに行ったら死んでしまう!
その時事務所のインターホンが鳴った。
「隣に越してきた、エルフのルチアーノ=モテナと申します」
彼は日本に詳しいようで引越しそばの生麺をくれた。
「あら、ちょうどエルフを探しに行こうと思っていたのよ!」
「どこに?」
「アマゾン」
「危ないじゃないですか!今どきのエルフは都会慣れしちゃってますよ。確かに自然豊かな所に惹かれますけど、現代そんなところを探してもそれこそ僻地になってしまうでしょ?自分はエルフとしては若輩者の76才なので、全くの都会っ子ですね」
「時代がものを言うのねぇ。コンビニがないのも嫌よね?」
「そうですね。ジャンクフードも食べますし」
エルフさんは草食のイメージだっただけにぶち壊しです。
ルチアーノさんは職探しをしていたそうで、‘ツクヨミセキュリティ’にいきなり入社することとなりました。
せっかくほぼフルメンバーなので自己紹介などをしました。ほぼフルメンバーっていうのは…大神君、寝坊かな?肉を減らされるよ?レオンちゃんは大神君がいなくて快適みたいだけど。
「エルフで長寿って何才くらいなの?」
「そうですね、4000才くらいでしょうか?」
すごいな。西暦を2回くらい?
「そんなに長寿なのもつまらないわね。いつか死ぬから、必死なのよ。絶対に死なないなら頑張らないわよ」
確かに4000年も生きてるのはちょっとなぁ。まっとうなことを社長が言うから驚いたけどその通りだと思う。
あ、頂いた引っ越し蕎麦(生麺)は我が家がいただきました。
正直なところ、社長のお口には合わないそうで…。お蕎麦美味しいのに。
今後、事務所の隣で生活をするらしいです。
「仕事ないし、暇だからショッピング行く?そうねぇ、今回は聖ちゃんにレオンちゃんでしょ~?リヒトと大神君とルチアーノの6人で行きましょうか?」
これはまた、煌めくようなメンバーで…。
「店の方には予め海外仕様のメンズサイズを用意しておいてもらいましょう。前回はリヒトの足が長すぎたのよね~」
「つんつるてん…」
大神君…それはあのお店に似合わなかった言葉だよ。
「ルチアーノも多分足の長さが合わないだろうから…」
「つんつるてん二号…」
大神君、サイズ合う方が足が短いってことなんだけどわかってるのかなぁ?とりあえず楽しそうなのはわかるんだけどさぁ。
予め爪をしっかりと生地に傷をつけないように爪やすりをかけておき、いざ出陣!
ルチアーノさんはエルフだけあって美形ですね。76才って言うけど、見た目年齢は20代です。肌もキレイだし。
やっぱりハイブランドのお店です。
「レオンちゃん、会計は社長持ちだから、社長に任せましょう?」
と、レオンちゃんに言っておいた。
「聖ちゃんはこれかなぁ?」
「流石に最上様お目が高い!先日入荷したばかりの品となります」
「レオンちゃんはこういう感じ?」
「そちらも先日入荷したばかりのもの。いやはや感服します」
「いいのよ、お世辞は。そこの男性3人にもそこそこの服を見繕ってやって」
「最上様は連れている男性まで麗しいんですね」
「ただの荷物持ちよ。一緒に歩いてて恥ずかしい思いはしたくないもの」
社長はブレないなぁ。
「あぁ、海外より取り寄せておきました。前にいらしたときに服の丈が足りなくて申し訳ございません!」
「いいのよ。そのくらい。今回なら足りるかしら?」
「おそらくは」
全員が着替えた。
海外から取り寄せただけあって丈は何とか足りた。ホッとしたのはお店のスタッフの方だろう。
「レオンちゃん、可愛い~‼…値札見ちゃダメよ!」
「値札なかった。時価?」
それはまた恐ろしい。そういえば私もなかった。
「二人とも可愛いわよ!そうねぇ、私はこの棚のここからここまでを頂けるかしら?」
と、こともなげに言う社長が怖い。
男性陣は口を開かなければトップモデル。…大神君口開いちゃうんだもん。
「俺はそこの猫娘に興味ないんだよ。おっ、今回はリヒトさんもルチアーノさんもつんつるてんじゃないっすね!」
…だから店にそぐわないんだってば。
「3人共着るものが変わるとやっぱり変わりますね~!」
3人共クリーニングとかどうするんだろ?
その後もハイブランドの店を何軒か廻り、男性陣は本当に荷物持ちとなりました。
エルフがごくふつうに引っ越しをしてきたのです。




