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第1話 袋小路亜里沙

ということで、久しぶりのバイク小説。色々と悩みましたが、今回は林道ツーリングがメインの話。Vストローム250SXはちょうど今、自分が乗ってるので書きやすいというのもあり。基本、実際に行ったところを描きますが、一部は行けなくて、You Tubeなどで行った人のを参考にしながら書きます。なお、更新は遅くなる予定。何しろ、「行ってから」書くのが基本になるので。

 関東の北部、栃木県にある、とある田舎の高校を卒業して、大学生になったばかりの、僕、瀬崎せざき涼介りょうすけは、都内 ―と言っても、外れの八王子にある― 大学に通うことになった。


 その入学間近の3月末。


 東京で桜が開花し始めた頃だった。


 僕は、田舎の栃木県で使用していた、125ccのスクーター、スズキのアドレス125に乗って、下道だけを走り、やっとの思いで、八王子市に到着。


「やっと着いた」

 ジェットヘルメットを脱いで、一息つく。


 身長173センチほど、体重60キロ程度の痩せ型の僕は、見た目にはスマートに見えるかもしれない若者だが、いかんせん「線が細い」印象を見た人に与えるらしい。

 学生時代、特にスポーツを経験していなかったことも影響しており、文化部の軽音楽部に所属していたが、ほとんど幽霊部員に近かったからかもしれないが、どこか浮世離れして、のんびりしているところがあると言われるのだ。


「確かここのはず」

 スマホをナビに使っている僕は、スクーターのスマホホルダーからスマホを外し、改めて地図を確認する。


 八王子市でも、中心部から離れた西八王子駅に近いその場所。4階建てのマンションが建っていた。


 そこで、僕はある人と「待ち合わせ」をすることになっていた。


「あ、あの……」

 古ぼけて、壁のところどころがくすんでいる、年季の入ったマンション。1階エントランスには郵便入れがあるが、その銀色の箱が、いかにも昭和を感じさせる作りだった。

 一応、入口には防犯のための、自動ドアがあり、つまりオートロック式になっているらしい。

 そのオートロックのドアを開けて出てきたのが、一人の少女だった。


 身長165センチほど。体重も軽そうに見える。瓶底びんぞこみたいな分厚い眼鏡をかけて、オシャレとは言い難い、ボサボサのショートボブの髪型をしている。服装も、地味な印象のワンピースみたいな服に、ジャンパースカートっぽい丈の長いスカートを引きずるようにして履いていた。

 女子にしては、割と身長が高いので、胸はそれなりにあった。


「はい」

「瀬崎さんですか?」


「ええ」

 頷き、彼女を見る僕。

 だが、ジロジロと無遠慮に視線を走らせたことが、彼女の警戒心を引き出したのか。彼女は視線を逸らしてしまった。


「私、袋小路ふくろこうじです」

「ああ、お約束してた」

「はい」


 ようやく、合点がいった。

 この日、僕はこの大学が管理する「寮」に入寮するため、その手続きとして、寮の管理人経由で、1つ先輩の袋小路という女性に、案内してもらうことを約束していたのだ。


 と言っても、LIME(ライム)などの通信アプリではなく、スマホの番号から送れる、ただのショートメッセージでのやり取りだった。


 名前は「袋小路亜里沙(ありさ)」。可愛らしい名前の割には、地味で、目立たない少女だった。


 その彼女に案内され、一通りマンションの中を見ることになった。


 このマンションは、一応、大学が管理する「学生寮」で、朝と昼は食堂で食事を摂ることも出来るらしい。


 その他には、別に普通のマンションで、管理費や維持費、もちろん家賃もかかるが、一般的な賃貸マンションよりは安い、学生には良心的な値段だった。


 家具一式は、備え付けられており、地方から学生が上京してきても、すぐに使える仕様になっていた。


 それらのことを一通り、教えてもらい、部屋から食堂まで案内された僕は、最後に、


「では、私はこれで」

 と、あっさりと立ち去ろうとした袋小路亜里沙に声をかけた。


「あの、袋小路さん」

「はい?」


「何学部ですか?」

「経済学部です」


「あ、僕もです。授業で会ったらよろしくお願いします」

「はい」

 言葉少なく、ほとんど無表情のまま、彼女は去って行った。


 少なくとも、僕、瀬崎涼介にとって彼女の第一印象は、「陰キャ」で「地味な」少女に映った。

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