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7 それぞれの行動

「ゲイル隊横に並べ!剣士は魔銃士よりも前に出ろ!」


 荒れ狂う大地。今国同士の命の削り合いが行われようとしている。


「ゲイル小隊長!敵軍の姿が見えました!」


 進軍してくるアティスト共和国軍の軍勢は双眼鏡で捉えることができる範囲にまで近づいていた。


「敵の数は………」

「おい何人なんだ!」

「…数えることができません」

「は?」

「多すぎて数えれないんです!この平原の地を横断するかのような長蛇の横列、双眼鏡で軍の奥を見ても敵が絶えないほどの縦列。。今までで一番の進軍です!!」


 ゲイルは驚きのあまり声が出なかった。今までの敵軍は多くて三万。幸いその数であったためなんとか耐えることができたが、今回の進軍はこのグルラ平原を覆い隠すような軍勢。


 勝てない。ゲイルは哀れにもそう感じてしまった。


「今すぐ他の軍と合流する!!急げ!敵が来てしまったら壊滅するぞ!」


 小軍では数の優劣で負けてしまう。よって他の軍と合流することで少しでも軍勢を上げようとゲイルは試みた。


「おいシウス!」


 シウスはゲイルと同じ小隊長でありゲイルとほぼ同時期に騎士団に加入した者。


「ここから一番近い我が国の軍は第七野営地の軍だ。行こう」

「さすがだシウス」


 ゲイルとシウス軍はすぐさま第七野営地へと向かう。


「おい、アリエア親衛隊の冒険者共!主人様のアリエアはどこだ!?」

「あ?何ハゲおじさん。別に私たちあの人の親衛隊じゃないんですけど。訂正してくれます?」


 野営地はAランク以上の冒険者が統治する。もちろん野営地にいる冒険者は統治者だけでなく、統治者が自分で選んだ冒険者を五人から十人ほど自由に選ぶことができる。


「ああ訂正してやるよ!そんなことよりもアリエアの場所を教えてくれ!あいつの強力な力が必要なんだ!」

「私たちにも分からないわよ。あの人はいつも一人で行動してるから。言わば一匹狼?的な奴」


 第八野営地には冒険者が五人いる。男三人女二人で構成されていてこの五人は一つのパーティーだ。


「あ?お前らアリエアと仲良いんだろ?」

「別に良くないわよ。ただアリエアに選ばれて依頼金が高かったから来ただけ」

「そうだ。俺たちは少しだけアリエアと関わったことがあるだけだ。すまないが期待しないでくれ」

「ちっ、そうかよ」







 グルラ平原に沿って連なる山、グルラ山。標高はさほど高くないがグルラ平原を円のように囲むほど長いグルラ山は荒地として有名。地盤が悪く、まるで大雨の後のように湿っている。そんなグルラ山で疾風の如く走る者がいる。ジーク・グレイ。又の名をカインだ。


「もうすぐ第一野営地だな」


 野営地と野営地との一定距離はさほど遠くない。しかし地盤が悪く地面ではなく木を踏み台にして走り抜ける方が早い。


「……これは」


 足を止め前方を確認すると数多の魔獣が俺を睨みつけてくる。

なるほどな。裏からの侵入はこいつらを倒すしか方法がないのか。


 ここから十歩ほど動けば殺しにかかってくるだろう。もし魔獣が動いてしまえばリニアに俺という侵入者の存在がバレてしまう。


 リニアの魔獣はリニアと魂で繋がっている。だからリニアも魔獣のことを信用しているし魔獣もリニアのことを信用しているのだ。その主従関係がリニアと魔獣を強くしている。


「困ったな…」


 俺がもし透明になれることができればこの場は簡単に治るだろうが不運にも俺は補助魔法は一切使えない。鑑定はおそらく補助魔法に分類されるだろうが、俺の鑑定は魔法ではなく生まれつきのもの。魔法使いのようにはっきりと見えるわけではなくただ感覚で感じ取れるだけ。


「まあ単純にこの方法でいいか」


 三秒ほどすると頭に浮かんできた方法。

俺は魔獣の方に歩み寄り、案の定魔獣は俺を襲いかかってきた。その攻撃を剣の柄で急所を突き、魔獣を気絶させる。


 そう。俺は悪役を選んだのだ。








〜〜第一野営地〜〜


「ん〜〜この戦は負けたな!ガハハハ!!!」

「おいクソダルジ。それ以上笑ったら殺す」

「笑ったら殺す?ガハハハ!女のお前に俺を殺せるものか!」

「私の剣は一瞬にしてお前の図体を百等分にすることができる」

「そこまでにしろ。今は作戦を練る時だ。そのためにお前ら”隊長”に集まってもらった」


 リニア王国直属騎士団。一人の騎士団長と五人の隊長から連なる軍隊。他の国より人数は劣るが、その力の強さは全世界に知れ渡っている。


「申し訳ありません騎士団長。ところでリニア様は今どこに?」

「魔獣たちの力を活性化させるため我らの目につかない所で集中していらっしゃる。無闇に探そうとするなよ、ナーリア」

「はっ」


 騎士団長は一呼吸置き、作戦を話し始める。


「いいか。正直言って今この状況はまずい。相手の数は尋常じゃなく多い」

「もし情報通りの数であればおかしくないですか?アティスト共和国に限らずどの国を見てもあれだけの兵士見たことがありません。何か謎がありそうです」

「そうだビィルガ。そこが謎なんだ。アティスト共和国の人口は確かに多いがあそこまでの数となると話が変わってくる」

「大人の男だけでなく女や子供までもが兵士として導入されているなら解決でしょう」

「お前もダルジと同じでバカだなバルベド」

「は?僕がバカだって?何を言ってるんだ君は?」

「ナーリア。いちいち文句を言うな。そしてバルベド。残念ながらその考えはない」

「なんでですか!?僕が導き出した天才的な考察なのに!」

「リニア様がアルキメデスがそんなことをするはずがないとおっしゃっているからだ」

「そうですかそれは仕方ないですね」


 意見と喧嘩が混じり合っている会話の最中、一匹の魔獣が鳴き声を上げた。


『『プオオオオオン!!』』


 六人は一斉に戦闘体制に入った。なぜならこの魔獣の鳴き声は侵入を許した場合にのみ発動するからだ。


「何人だ!ワクワクするな!」

「うるさいダルジ」


 森の奥から人影が見えてくる。


「……は?一人?

この僕をバカにしているのか?」


 現れたのは一人の白面を被っている者である。





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