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5 戦場へ

「本当に魔銃を使わないのか?」

「ああ。俺はこの剣の方が使いやすい。慣れてない武器を使っても足手纏いになるだけだからな」


ゲイルから魔法が使えない人向けの武器である魔銃を渡されたが拒否した。慣れてないからというのもあるが一番の理由は邪魔だからだ。俺は今までで武器はこの剣一つしか使ったことがない。


「何か魔法は使えるのか?

流石に今の時代じゃ剣士はそこそこの実力を有しているか冒険者かのどちらかじゃないと活躍できないぞ」

「実力もあるし魔法も使える。これで十分だろ?」

「…まあそうだが。。分かった。その代わりすぐに死ぬなよ?」


首を激しく縦に振るとゲイルは心配しつつも承諾してくれた。戦場にはどうやら明日すぐに向かうようで今日は早めに寝ろとのことだ。


「俺は床でいい。今じゃ床の方が寝やすくなっちまった」

「俺も辺境の地に家出した時、最初の一年ぐらいは床だったから床でいいよ」


遠慮とかではなく戦場はベッドがないだろうから慣れるためだ。俺とゲイルは互いに背を向け合いながら寝る。


「人を殺す覚悟はできてるか?」

「ああ出来てるよ」


嘘だ。俺は人を殺さない。ただ戦闘不能状態にするだけだ。傷跡も残らないようにする。


「そうか。戦場で泣くんじゃねえぞ?」

「泣かないさ」


ゲイルも戦場に行くのは怖いはずだ。しかし実際に今こうして俺を励ましてくれている。ゲイルは惜しい人だ。


ゲイルによると、リニアはどうやら戦場にいるらしい。国王が自分から戦場へ行って国は大丈夫か?と聞いたのだが、リニア様以外にも国を統治する人材はいる。とのこと。


ようやく明日リニアに会える。そして会ったら真相を聞く。元気か?俺がいない間は何をしてた?聞きたいことは山ほどあるが今は馴れ合いしている暇はない。

リニアも驚くだろう。急に消えた奴が戻ってくるからな…元気にしてるといいな。


俺は深い眠りについた。







「おーーーーろ」

「おいーーーーーろ」

「…おい起きろつってんだ!!」


ゲイルの怒鳴り声から朝は始まった。時計を見ると今の時刻は六時。いつも八時台に起床している俺からすればとても早い朝だ。


「六時?ちょっと早くないか?」


眠い目を擦りながらあくびをする。


「ああそうか昨日言ってなかったのか。

リニア王国は…いやこの世界に存在するすべての国は六時十五分になったら”ジーク様”を拝むんだよ。この行為は何をしてようが関係ない。戦争をしてようが何か大事な作業をしてようが関係ない。

拝むんだ。我らの英雄を」

「……そうか」

「分かったなら行くぞ」


ゲイルと俺はすぐに着替え昨日は行かなかった方面へと走る。石畳の上を走り続けると王都の中心部に着く。そこには数多の人がおり何かを囲んでいる。その囲みの中心にいるのがジーク・グレイ。俺の像だ。


左右対称の黒い紋章が入った仮面…間違いない。厄災対処時に俺が付けていた仮面だ。その仮面はもう捨ててしまったが長年使ったのではっきりと覚えている。


「さあ六時十五分になった。拝め」


人々は手を合わせ、一分間無言で拝み続ける。

そこには数多の人がいるにも関わらず誰一人として話をしない。一分経つと最後にお辞儀をしその場から離れる。


「絶望の淵に立っていてもこうして人々は英雄のことを忘れない。自分たちの命、そして家族を守ってくれた英雄の帰りを俺たちはいつでも待っている。いつか英雄は帰ってくる。十年経った今でも俺たちは信じているんだ」

「………ただいま」

「ん?何か言ったか?」

「いや何も」


ただいま。ただそう言っただけだ。







拝みを終えると俺はゲイルに頼んである物のおつかいに付き合ってもらうことに。


「仮面を買う?なんださっきの英雄像を見て欲しくなったのか?」

「いや違う。殺した相手に顔を覚えさせないようにするためだ。つまり恨まれないようにするため」

「なるほどな。それじゃあ顔全体覆えるのがいいな」


本当は違う。もし俺が活躍して俺の顔が広まったら有名人になって注目の的になってしまう。俺が注目されてしまったら戦場で戦った兵士たちのことを人々は忘れるだろう。

人の命は平等。だから俺は仮面を着ける。


俺が選んだ仮面は何もデザインがなく真っ白をしたとてもシンプルな物。


「なんか地味だな」

「地味でいいんだよ。派手な物を着けると逆に相手が嫌な気分になる」


仮面を買った俺はゲイルに誘導されギルとギラと合流した。ゲイルもギルとギラも昨日より装備が頑丈になり魔銃も二つになっている。


「準備はいいかカムイ?」

「もちろん」


ゲイルは全員が準備が整ったことを確認したら戦場での行動について説明しだす。


「俺たちはリニア王国直属騎士団に属している。俺は部隊長で、お前は俺の部隊に入ってもらう。俺たちの隊は剣士が少ないからお前の加入はありがたい。しかし剣士は部隊の中で最も最前線に位置しないといけない。できるか?」

「任せてくれ」


ゲイルにはすまないが俺は一人で行動する。一刻も早く戦争を終わらせるために俺自身が最も動かなくてはならない。


「それじゃあ行くぞ」


俺たちは魔獣に乗って戦場へと向かった。





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