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3 船内

 〜〜船内〜〜

船内はとても物静かで船の揺れを感じない。そして男三人とも優雅にコーヒーを飲んでいる。


「誰か舵を切らなくていいのか?」

「ん?…ああそうか。お前は十年前の人間だから今の技術は知らないのか。

最近の船は行きの道を記録し、帰りはその道に沿って動いてくれるんだ。まあ実際には船ではなく先端についている魔導具の効果だがな。

そしてもう一つ魔導具が備わっているんだが、それは船から半径十キロメートルにいる生物や物体を感知しレーダーに映す役割がある」


 つまり行きは舵を切る必要があるが、帰りは船に任せると。

なるほど…とまではならないがなんとなく分かった。


「ま、そういうことだ。

何か話でもしようぜ」

「…気になることでもいいか?」

「ああもちろん」

「リニア王国の現状を教えてくれ。未開発の地を探して占領するぐらいだ。

大変なんだろ?」


 明らかに空気が悪くなったが仕方ない。

リニア王国という国を把握しておかなければ行動の意図が掴めない。


「…分かった。

我が国リニア王国はーーー」


 男が話した内容はこうだ。

リニア王国は現在、隣国の”アティスト共和国”との戦争の最中であり、アティスト共和国の軍事戦力の強さと軍事人数の多さによって押されている。リニア王国は元より国王である魔導王リニアの戦争放棄の意思で訓練を全くしていなかったがために国の直属騎士が少なく、市民が武器を取り扱って戦っているようだ。


 リニア王国は最弱小国だが、魔導王リニアと魔獣を狩る”冒険者”がなんとか前線で耐えており、新しい領土を探しているところらしい。


「そうか。ありがとう。。気になったんだが、アティスト”共和国”とあるが、十星王は国王ではないのか?」

「ああすまん説明が足りなかったな。精密に言うと十星王は国王ではない。”支配者”だ」

「つまり、国王でなくとも指示を出せると?」

「それはそうなんだが、アティスト共和国は特殊でな。

支配者である”アルキメデス”が自分だけで国の行方を決めることを反対したんだ」


 アルキメデス…十星王序列九位”錬金王アルキメデス”。

様々な鉱物や貴重生のある物を合体させる錬金の王。アルキメデスは錬金だけでなく鍛治王としても名がしれている。アルキメデスは戦うことはできないが、その錬金と鍛治の圧倒的な技術により国を支えているのだろう。

”アティスト”という名前はおそらくアルキメデスの大好物である”アティストジュース”から来ているのだろう。


 力のリニアと技術のアルキメデス…性格も得意分野も何もかも真逆な二人。しかし仲は十星王の中でも特段に良かった。


「戦争を仕掛けたのはどっちなんだ?」

「もちろんアティスト共和国さ」


 アルキメデスが戦争を!?

な訳ないだろ。アルキメデスはとても穏やかな性格で臆病者だ。そしてアルキメデスが支配する国は”共和国”。

全会一致制でなく、多数決制だとしても過半数が戦争を承諾しただと?

厄災の恐怖を忘れたのか?


「戦争を始めた理由は?」

「それが急にアティスト共和国が攻めてきたんだ。本当に突然だった」


 何か裏があるな。

動機が分からないこともそうだが、何よりあいつが勝手に人の命を奪うわけがない。

でもその裏が何か全く見当がつかない。


「ところで、そのボロい服いい加減着替えたらどうだ?

俺の予備の”黒備服”をあげるからよ」

「いいのか?」


 茶色の胸元が空いた服を脱ぎ、右の胸元に紋章が入った黒備服を着る。


「おおっ。なんだこれ」

「すごいだろ?その服はよ、身体強化されるように備わってんだ。一種の補助魔法だ。

黒備服を着て市民たちは戦場に行くんだ」


 身体強化自体は十年前でもさほど珍しくなかったが、市民一人一人に施されるほど一般的ではなかった。


「その腰の武器はもらえないのか?」

「魔銃のことか?俺の家にあるから後で渡す。

この魔銃も今や市民全員が持っている。物騒な世の中になったもんだな」

「俺はこの魔銃?っていう武器を使ったことがないんだが、説明してくれないか?」

「ああもちろん」


 男は腰から魔銃を抜いて分かりやすく指で示してくれる。


「いいか、魔銃ってのはなこのレバーを引いて人差し指でこの三日月型のスイッチを強く押すんだ。

そうすれば魔弾(まだま)が光の速度で相手へと向かう。決して味方がいるところで無闇に使うなよ?

当たればすぐに死ぬからな」


 なるほど。この魔弾は一つ一つに攻撃強化魔法が付与されている。

並大抵の身体強化じゃ防げないな。


「分かった。気をつけるよ」

「…お前は戦場に出てもらうことになるからな」

「覚悟はできてるよ。こう見えて実力には自信あるからね」

「魔銃ごときに怯えていたお前がか?」

「未知の武器に恐れていただけだよ」


 力を封印した今でもある程度の活躍は出来るだろう。実際の力の半分も出せないが部隊一つくらい壊滅できる実力は備わっていると思う。


「自信だけは認めてやるぜ。

じゃあそろそろ名前で呼び合おうぜ。

俺の名前は”ゲイル”。そこら辺にいる男だ。

そしてこいつらはギルとギラ。顔でわかるだろうが双子だ。

そして無口。滅多に喋らないからめんどくさいんだよ。よろしくなカムイ」

「ああよろしくゲイル。

ギルとギラも」


 俺たちは互いに握手をし友情を深める。





















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