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懺悔には優し過ぎる

作者: 秋暁秋季
掲載日:2024/01/07

注意事項1

起承転結はありません。

短編詐欺に思われたら申し訳御座いません。


注意事項2

明日は何処にいきましょうか。

でもきっと、この世界からは逃れられないと思うんですよ。

太陽の光が登り切らない時刻。ブランチの時刻。女は気怠げな半眼のままに、某所の喫茶店を訪れた。時計兎のように案内されたその場所は、なかなかにメンヘルだった。こってりとした原色に彩られた領域は、美術館の一室をそのまま喫茶店に転じた様だった。

女はその空気に入り浸りながら、長い、長い、吐息を吐き出した。体の中の毒素を吐き出す様に、長く。

この場所を選んだのは、大いに必然。土地との相性、空気感を鑑みても、此処しか有り得なかった。どうやら本気で削れた精神を元通りにするつもりであるらしい。

「奢ってあげる。昨日は沢山、迷惑を掛けたかたら」

「そんな時もあるだろうよ」

「別の場所も回るから、その時は出してくれると」

「いや、自分の取り分くらい自分で払うよ」

別の場所にも連れていくらしい。

聞いている様で聞いてない。朝目覚めた時から、ずっと半分は延々と眠りに着いている。此処でそれ以上の会話は続かない。だからさっさと注文を済ませる事にした。

女によるとオススメは二つ。そのうちの一つであるシフォンケーキを頼んだ。その間もただただぼんやりとして、体の毒を吐き出しているようだった。

暫くして二人分の菓子が届いた。女は自分の取り分であるシュークリームをじっと見据えている。

「どう、食べれば良いんだろう」

「千切るなり、なんなり、あるだろう」

「そっか」

女はそう言うと、クリームの上に乗ったパイ生地を小さく千切りながら、中のクリームに擦り付ける。指周りまで纏ったクリームをそのまま口の中に捩じ込んだ。

「……優しい……かな。今の私には優し過ぎる。一口あげよーか」

虚ろな目でクリーム塗れの指を舐めながら、女は吐息を漏らす。それから自分の一口目よりもさらりべったりとクリームを纏わせて、俺の口元まで運んでくる。

人の少ない時間だった。客は皆、自分の話に夢中になっていた。誰も他の客に気なんて止めなかった。

戸惑う俺を他所に、女は手を引っこめる事はしなかった。ただ口を開けるのを待っている。ただ言葉を発する為に口を開く。其れを見計らったかのように、女の指が口の中に捩じ込まれた。

女の言う通り、優しい味がした。シューは温かく、ふわふわしていた。中のクリームも、くどくない。クリームである事を忘れる程に、ただ優しい。

「感覚、麻痺してるね。色々と。でも……うん。だからこそ……出来ることも、分かることもあるんだ……はぁ……んっ」

そうしてその俺の唾液塗れの手で、残ったシュークリームを掴むとそのまま口の中に流し込む。味わっているのか、いないのか。それでも何処か潤んだ瞳が、苦しい事を示していた。

「今の私に、この味は苦し過ぎる。散々悪いことした人が、生粋に無垢な子供と向き合う様な、そんな気分。ふふふ。あぁ……」

そうして女はポットから紅茶を注ぐ。罪を洗い流すように。


オマケ

「此処は紅茶が美味しいんだね。あとポットで来る。前は珈琲にしていたけど。長く浸るには姉妹店じゃなくてこっちかな」

「初めてだったのか」

「うん。紅茶は初めて。ちなみに姉妹店はワンカップ。姉妹店は姉妹店でいい所もあったけどね。内装とか、カップとか。でも、長らく浸るにはやっぱりポットが良いかな」

タイトルに着いて。

彼女のデトックスというか、毒の吐き出し方が何とも懺悔に似ていたから。

何も悪いことをしていないのに、した気分になってます。

そんな人に優しい味って致命傷なんですよ。

苦しくて泣いてしまう。

罪人が聖人に受け入れられる時、こんな気分なんだろうな。

と思います。


またふらりと出掛けます。今日はチャイが飲めると良いと思います。

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