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第7話 スキャンダル

 フェニアックと点満堂(てんまんどう)からの取引打ち切りをされた翌日の事だった。


「? 何だ?」


 丸山ゲームスの社長は自分の会社の周りに人が集まっているのを見た。何事か? と思って近づくと……。




 バシャッ! バシャッ! バシャッ! バシャッ!




 カメラのフラッシュが一斉に()かれ、社長の姿が激写される。




「何なんだお前らは!」


「社長! 今回の証拠隠滅の件についてどうお考えなのですか!?」


「社長! 世間に出回っている音声に関して何か一言お願いします!」


 待機していた週刊誌や新聞の記者が一斉に社長に群がる。




「ぬうう……今の時点では何のコメントもできない! 帰ってくれ!」


 丸山社長はそう言ってカメラマンや記者を追い払って社内に入る。だが追撃は終わらない。


「社長、TV局やWEBメディアから取材の打診が多数届いているのですがいかがいたしましょうか?」


 出社したらしたらでTV局やネットニュースの発信元からの取材のオファーが殺到していることに気が付く。


「無視しろ! そんなのにかまっていたら時間がいくらあっても足りなくなる!」


 イライラしながらも社長はそう指示を出す。




「交渉の際、証拠隠滅をするためにボイスレコーダーに水をかけて破壊した会社の社長」


 今時ここまで「分かりやすい悪」などそうはいない。週刊誌や新聞、さらにはTVのニュース番組やネットのニュースサイトからしたら「のどから手が出るほど」欲しい格好のネタ、もとい「エサ」だ。

 スクープに飢えていたマスコミにとっての貴重な燃料となった丸山ゲームス。ピラニアの群れの中に血の(したた)る肉片を投げ込んだかの如く、一斉に群がった。


「ゲーム会社社長、元部下に逆ギレ!? 証拠隠滅を(はか)りながら『記録を取りもしないでそんな言いがかりを言われると人権侵害で訴えますよ?』と高圧的な態度をとる」


 週刊誌にスッパ抜かれ、さらには……


「次のニュースです。ゲーム会社の社長が交渉の際、ボイスレコーダーに水をかけて証拠を隠滅しようとした事件がありました」


 ローカルTVのニュース番組もそれに追従する。


 ニュース番組は「丸山ゲームスは取材に対し、何もコメントをしていません」というメッセージでシメていた。




【到底成熟した大人のやる事じゃない。このゲーム会社の社長は何を考えているのかさっぱり分からない。同じ日本人として恥ずかしい】


【WEB小説原作のマンガに出てくる「レベル1チンピラ」でもここまでの雑魚ムーブはやらないぞ『事実は小説より奇なり』って本当だったんだな】


 WEBニュースのコメント欄も、終始散々にけなされる内容だった。

 さらにはSNS上では丸山ゲームスが関わったソシャゲが全て暴露されており、そのソフトは軒並み低評価を付けられ散々な風評被害を浴びていた。




 丸山ゲームスは立ち上げ以来最大の危機にぶち当たった。既に仕事は無くなり新たな販路拡大のための営業部隊からもいい知らせは一切ない。

 社長はスマホを手にして龍護(りゅうご)へと電話をかけた。




「もしもし? 丸山さんじゃな……」


「テメェーーーー! 何をしやがった!?」


 怒りで血走った眼をしながら社長は元社員に憎悪を叩きつける。


「あれ? 言ったじゃないですか? 『言った言わないの水掛け論を防ぐために交渉の内容は録音いたします』って。その言葉通りただ話の内容を録音してただけです。

 まぁ、録音機器は1つだけではない。とは言ってませんでしたがね」


 社長の通話相手は余裕の表情をしているのが口調からでも伝わる。




「この野郎ーーーーーーー!!! オレをハメやがったな!?」


「ハメやがった? 酷い風評被害ですなぁ。そもそもあなたが証拠隠滅のためにボイスレコーダーに水をかけなきゃここまで酷いことにはならなかったでしょ?

 週刊誌やTVを見ましたけどあなたが()いた種なんですから、責任もって自分の手で刈り取ってくださいね。では」


ガチャ。

ツー、ツー、ツー……



 通話が切れた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 今話もありがとうございます! >『事実は小説より奇なり』って本当だったんだな 龍護が受け取った様な賞状ならぬ「症状」を送り付けてパワハラし、社員を自殺に追い込んだ糞会社がリアルに存在し…
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