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十二司教審議会

「それでは、最寄りの神殿にお連れします。」

長身の僧侶が恭しく頭を下げる。

私が[癒しの勇者]と解ってからは全員態度が激変した。


この国はフリューエル神聖国と言う太陽の女神を主神に戴く国だそうだ。

もちろん、他の五女神を信仰しては行けないということは無い。

神殿は六女神を祭ったもので、特に太陽の女神の信者が多いというだけだそうだ。

私が転移前にいたヴェスパリアはアレスノ王国と言う国の辺境に当たるらしい。

元はヴェスパリアにいたと言ったら驚かれた。

ヴェスパリアに魔物が侵攻下と言うことはまだ誰も知らなかった。

この世界は情報の伝達が遅いので知らなくても不思議ではない。

エミリさん無事かな?


ダンジョンから出ると、神聖国の首都に当たる聖都リューエルの太陽神殿に連れていかれた。


なんというか、デカい。

ヴェスパリアもかなり大きな城塞都市だったが、こちらの神殿は次元が違うと言ってもよかった。

神殿は庭なども含めると一つの町なみの大きさがあり、夜でも魔力光で明るく照らされていた。

中にはちょっとした商店街もある。


私は6人に太陽神殿に引き渡された。


そこでミカミのパーティーと別れたが、ミカミたっての希望で私と情報交換したいとの申し出を受けた。

後日、返答をすると言うことで神殿からは返事を受けたようだった。


私の面倒は一人の助祭の方が見てくださることになった。

もちろん女性だ。


年齢は20代前半だろう。

それで助祭と言うのは結構な出世頭のようだ。

元は貴族の出とかなんとか。


とりあえず仮住まいに10畳くらいの小さな部屋を与えられた。

現代日本の感覚からすると小さいとは言い難い部屋だが、何もかものスケールが大きい神殿(と言うより一つの町)からするとかなり小さいほうらしい。

場所は神殿の見習いが共同で住んでいる寮の一角だ。

もちろんだが、寝具の片づけから、食事の準備まで交代制でやる。

神殿の見習いと同じように扱われた。

後で、本当に勇者かどうか身の証を立てさせられるようだが、エライ人たちが全員集まるのに1か月くらいかかるらしい。

身元の引受人はミカミがしてくれているらしく、武の勇者の名前と信用は絶大で、孤児の時のような酷い扱いは受けなかった。

何より1日3回まともなご飯が食べられて、ちゃんと寝床も与えられる。

孤児の時代と比べると雲泥の差だ。

扱いは神殿に見習いに上がっている貴族の二女、三女などと同じらしいが、特別に個室が与えられていた。

普通は貴族の出でも4-6人部屋らしく、ミカミが如何に信用されているかよくわかる話だ。


偉い人たちが集まる間、ミカミと情報交換したかったが、勝手なことは一切できないらしく、その間何もできなかった。

毎日、身の回りのことを終えると何もすることが無いので神殿の図書室で本の閲覧許可をもらって本を読んでいた。

ヒーリングの魔法や従者の力を上昇させる加護について調べてみたが、ヒーリングの魔法は情報があったが、従者の力を上昇させる加護については一切の情報は無かった。

ヒーリングの魔法の使い方や種類について大体のところは学んだが、やはり、実戦でレベルを上げないとどうにもならないようだ。

ヒーリングの魔法についてははほとんどゲームと同じだった。



私は毎日図書室に通った。

女神たちに見捨てられてしまったので仕方ないが、最初からある程度の情報をもらっていた勇者ミカミと違って何の情報もない私はかなり出遅れているなと感じていた。

最初から勇者になることを受けていたら小さな女の子にされることも無かったし、もっと有利だったのかもしれないと思うと激しい後悔が押し寄せてくる。



そんな日々で、夢の中に私と同じくらいの小さな女の子が出てくるようになった。

髪と瞳が緑色で丈が短めのシンプルな白いワンピースドレスを着ていた。

美少女(美幼女?)と言ってもよい整った顔立ちをしている。

夢の中で私はその子と一緒に遊んだ。

一緒に空を飛んだり、歌を教えてもらったり、踊りを教えてもらったりした。

空を飛ぶなんて実際にはあり得ないが、夢だから何でもありだ。

毎日夢が終わりそうになると、夕暮れになり、その子は私と別れるのを嫌がった。

手を繋いで、海が良く見える丘で別れる。

絶景と言ってもよい綺麗な夕暮れが見える。

なかなか手を放したがらない。

「明日もまた逢えるよ」

そう言うと何度も何度も振り返りながら、どこかに帰っていく。

どこの子なんだろう。

夢に出てくるから、どこかで会ったことがあるのかなと漠然と考えていたが覚えはない。

やがて、深く考えるのを止めて、夢の中でその子と一緒に遊ぶのが普通になった。



やがて、1か月が過ぎ、偉い人たちが戻ってきたので私の加護を確認することになった。

巨大な円形の聖堂に12の席があり、全員が座っている。

真ん中には巨大な装置があり6コの宝石が浮いており、金色の巨大な円がいくつも同心円状に配置され、様々な角度で回っている。


司会の40歳くらいの渋いオジサンが口を開く

「では、これから十二司教審議会を始める。

この場において偽証すると神に反逆したとみなされ、極刑も有り得る。

注意して受け答えするように。

いいね?」


「はい」


「では、中央の魔具についているプレートに触れなさい。」


言われた通りプレートに手を置く。

すると宝石が回転しながら光った。


「では、少女よ名前を言いなさい」


「はい、コレットと申します。年は10歳です。

宝石はずっと光ったままだ。

嘘を吐くと光が消えるらしい。


「ではコレットさん。あなたはどこの生まれですか?」


「以前はヴェスパリアにいました。その前と言う話であれば、私はこの世界ではない別の世界から来ました。言っても解らないと思いますが、言いますか?」


「教えてください。」


「東京都のM市と言うところです。」


「あなたはこの世界の人のように見えますが・・・」


「この体はこの世界の人のものですが、心のみ異世界から呼び出されたものです。」

宝石は光ったままだ。

12人からどよめきが起きる。


「異世界人ではなく、異世界から転生してきたということなのでしょうか」


「そうだと思いますが、女神様がおこなったことですのでその御心は私にもわかりかねます。」

宝石が光続け、それが嘘でないとハッキリすると、質問者はその件に触れるのは止めにしたようだ。


「ヴェスパリアにいたのはいつ頃ですか?」


「勇者ミカミに発見された一時間前くらいです。女神様の力で転移させられたのだと思います。」


「あなたは女神の加護を3つお持ちとの事ですが、間違いないですか?」


「はい、間違いありません。月の女神様、水の女神様、土の女神様、3つの加護を持っています。」

この発言が嘘でないとわかるとまた聖堂がどよめく。


「あなたは自らを勇者と名乗ったようですが間違いありませんか?」


「私が勝手に名乗ったのではありません。女神様から癒しの勇者としてこの世界で魔王を倒せと天界で直接啓示を受けました。」

この言葉も嘘ではないと証明されると聖堂がさらに大きくどよめく。


司会の40代のオジサンが「静粛に」と場を鎮めて質問が続く。

「あなたは勇者としてこの世界で命を懸けて戦う覚悟がありますか?」


「はい、女神様にそのように啓示を受けました。ただし私はつい1か月前に目覚めたばかりのLv1です。準備に暫く時間をいただきたいのです。」


「解りました。これから我々十二司教で話し合いを行いますが、あなたの希望がかなえられるように最大限の配慮を約束します。」


そうして私は退出させられた。


この翌日十二司教審議会で司会をしていた40代の渋いオジサンに呼び出された。



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