勇者コレットちゃん爆誕
通路の奥には大きな広間があった。
フレイムボアが光っているので隠れるのは無意味だ。
私は正面から、広間に入っていく。
その部屋にはゴブリンの呪文使い、ゴブリンシャーマン1匹とゴブリンの上位種ホブゴブリンが3匹居た。
ホブゴブリンは人間の大人くらいの背丈がある。
私の身の丈を超える大きな曲刀を持っていた。
『ホブゴブリンよ。ゴブリンシャーマンもいるわ。手ごわいから気を付けて』
ホブゴブリンが動いた。私は地面を転がり、一体にフレイムボアをたたきこむ。
フレイムボアの炎の加護がホブゴブリンの太い足を焼くが、シャーマンの呪文で即座に回復した。
シャーマンを倒そうとするとホブゴブリン3体が邪魔をしてくる。
ここからは持久戦だった。
ホブゴブリンに手傷を負わせてもすぐにシャーマンが回復する。
ホブゴブリン2体はなんとか倒したが、タリスマンの力を使い切ってしまった。
ここでシャーマンが初めて攻撃のために魔力を使った。私の目の前が真っ暗になる。
恐らく、盲目の暗黒魔術だ。
視界を失った私はホブゴブリンの一撃を躱すことが出来ずもろに食らう。
右腕にあたり、壁まで叩きつけられる。
当たった右腕はドレスアーマーの加護で無事だった。
壁にたたきつけられた左腕はドレスアーマーの加護を貫通し、骨折した。
『コレット!!!!』
風の女神様が悲鳴のような思念を送ってくる。
「だ・・・・いじょうぶです。」
全く大丈夫は無かったが、そう言ってウィンディア様を安心させようとした。
視界はまだ戻らない。私は地面を転げまわりながら、滅茶苦茶にフレイムボアを振り回す。
偶然、ホブゴブリンの剣を何度か弾き飛ばす。
視界が少し回復してきたので、一か八か、風のアーマードレスの神通力で天井や柱を跳ね回ってホブゴブリンに一撃を入れひるませた後、隙をついてシャーマンにフレイムボアをたたきこんだ。
シャーマンが真っ赤に燃え上がる。
それで勝負は決した。
左腕の激しい痛みに耐えながら、残った一体のホブゴブリンにトドメを指した。
『コレット、しっかりしてコレット。」
折れた左腕はだらりと下がった。
激しい痛みが左腕を襲う。
風の女神様の声が聞こえるが段々と気が遠くなっていく。
目の前が真っ暗になる。
一匹でもゴブリンが残っていたら私はこの暗い迷宮の中で死ぬのだろう。
時を同じくして地上で待っている神聖騎士15人に風がささやいたそうだ。
『勇者コレットが神命を果たしました。でもケガをしてしまったの。早く中に入って救けてあげて。』
本来であれば数人は残らなくてはならないが、全員が一斉にゴブリンの巣穴に突入したそうだ。
「おい、嘘だろ。全部で50匹くらいいるぞ。全部コレット殿が一人で討ったのか。」
「副団長。全て死んでいます。」
「奥に急ごう。」
奥には広間があって倒れている私を見つけて慌てて駆け寄り、無事を確認するとクマの副団長さんが私を抱えて地上に戻ってくたれそうだ。
Lvは3から一気に12になっていた。
かなりの激戦だった。
一人の男が早馬として駆けていた。
男は神聖騎士だったが、神聖騎士の誉れと称されるミスリル製の重厚な鎧は身に着けてない。
神聖騎士はよほどのことが無い限り、この鎧を脱がないが、男は教会に知らせるために喜んで早馬の任を引き受けた。
男はあるメッセージを伝えるために命を削って地を駆ける。
曰く「勇者コレットが神命を無事に果たした」と
同日、聖都、大神殿
ジェローム卿の元に息も絶え絶えの男がやってくる。
不眠不休で馬を変えながら、その日の内にたどり着いたのだ。
「勇者コレットが単身でゴブリンの巣穴に入り、ゴブリン45体とホブゴブリン3体、ゴブリンシャーマン1体を単独で撃破、討滅しました。無事、神命を果たし聖都に帰還中です。」
その知らせは一瞬で聖都中に広がった。
わずか10歳の少女が勇者となって世界を蝕む邪悪と対峙する。
その始まりの物語として、聖都中の吟遊詩人が、その英雄譚を謳い上げた。
一方でホブゴブリンを倒したあと気を失った私は地上へ救助され、すぐに治癒の魔術をかけられて体は完全に治癒していたが、神具の神通力を使い続けて戦い、精魂尽き果てて三日三晩眠り続けた。
目を覚ました時ももう聖都は目と鼻の先と言う状況だった。聖都では既に早馬で知らせが入っており、見事に困難な神命を果たした[癒しの勇者]を一目見ようと聖都のみならず近隣の町や村からも人が集まってちょっとしたお祭り騒ぎになっているとの事だった。
聖都の隣の町で私たちは教会が準備した白に金の縁取りの入った教会の上級幹部のみが使う馬車に乗り換えた。
馬車はオープンになっており、群衆からよくみえるように配慮されているらしい。
どうせ、通りに二十人とか三十人くらいエキストラのような人たちが用意されているだけだろうと私は簡単に考えていた。
なんせタダのゴブリン討伐だからだ。
しかし、この時代の人たちは娯楽らしい娯楽と言うものはなく、娯楽に飢えていたこと、女性の社会進出と言う概念そのものが存在しない社会で年端も行かない少女が大の男も躊躇するような恐怖を乗り越え、成果を上げたことを軽く考えていた。
ゴブリンと言えども聖都の少し郊外に出れば普通に存在する身近な魔物でその危険性は子供でも知っている。
私は町に入る前にみんなの勧めもあって、風のアーマードレスとフレイムボア、タリスマンを装備した。
聖都に入ると、何十万人もの人たちが一目私を見ようと神殿に続く道に集まっていた。
割れるような歓声が響き渡る。
随行の騎士たちもどこか誇らしげだった。
「あれが[癒しの勇者]様か。まだ本当に子供じゃないか。」
「女の子なのにゴブリンを500匹も一人で討伐したらしいよ」
「すごーい」
噂にはかなり尾ひれがついて、あちこちに泳ぎ回っているようだった。
私は騎士の一人に勧められて手を振ってみる。
割れんばかりの歓声がひときわ大きくなった。
大神殿に続く大通りには見渡すばかりの人、人、人だった。
暫く進むと大神殿の正門が見えてきた。
人々の歓声を聞いていると本当に私は一人で神命を果たしたんだという実感が湧いてくる。
そうして私は懐かしい神殿に帰還した。
小さな勇者コレットちゃんの物語はまだまだ続きますが、ここでひとまず一区切りとしようと思います。
ほんのわずかの人の目にしか留まらなかったようで、自分の力不足を痛感しています。
「なろう」に発表されている小説の典型的なパターンなのでしょうが、0pt小説でした。
ランキング上位の方の凄さを改めて実感した次第です。
私のつたない文章を読んでいただけた方には本当に感謝しています。
ありがとうございました。
とてもささやかな結果でしたが、自分の書いた物語を誰かに読んでもらうというのは私にとって非常に新鮮な体験であり、とてもドキドキすることが出来ました。
このような貴重な体験をさせていただいた全ての方に感謝を捧げます。
別の作品になるか、この作品の続きになるかはわかりませんが、また皆さんとお会い出来ることを祈念し、あとがきといたします。




