癒しの魔術の鍛錬 その三
コレット視点。
朝の礼拝が終わると、昨日のアンゼリカとばったりあった。
何でも私を探していたそうだ。
「どうしたのですか?アンゼリカ様。」
「貴方のせいよ。私はあなたのせいでウソツキにされて、昨日は夕食を抜かれて折檻されたんだから」
やっぱり優秀でも子供なので正直何を言っているのかさっばり要領を得ない。
彼女の話を総合すると私が昨日魔道具の光でクマを作ったことを信じてもらえなかったらしい。
「誰でも出来ることなのですよね?」
「そ、そうよ。でも子供だとちょっと難しいかな。私はちょっとだけできるけどね。」
なるほど、それは悪いことをした。
恐らく、子供だとよほど才能が無いとできないのだろう。
「それでは今日の鍛錬でレスト助祭とルミナス侍祭がいらっしゃいましたら、私がクマを出せることをお見せしますよ。だから、アンゼリカ様はもう叱られません。」
「そ、そう、ありがと。貴方、友達いないんでしょ?仕方ないから私が友達になってあげてもいいわよ」
なかなかテンプレ通りのツンデレ娘だ。
「ありがとうございます。アンゼリカ様、レスト助祭とルミナス侍祭にはくれぐれもよろしくとお伝えください。」
「わ、解ったわ」
「友達いない」の下りは前世も含めてかなり痛恨の一撃だったが、何分子供の言うことなので気にしないでおくことにした。
そう言えば前世も含めて私には友達と言える存在は一人もいなかったなあ・・・。
その日も鍛錬に向かう。
今日はレスト助祭とルミナス侍祭が来ていて、昨日の件を謝罪された。
私はアンゼリカと友達になったことをルミナス侍祭に報告する。
そして友達であるアンゼリカの言うことは本当の事だと言って、実際にやって見せた。
今日はクマを三匹くらい出してみよう。
子供でも才能があればできるなら大人ならこのくらいは普通に出来るだろう。
面倒なので一気に魔力制御の解像度を1000倍くらいに上げる。
ゆっくりと体が持ち上がる。
すると昨日よりかなり緻密に作られたクマのヌイグルミの幻像を作ることができた。
まず手始めに一体を生成する
二人はあんぐりと口を開けている。
ん、誰でも出来ることなんだよね?
そう言ったよね?アンゼリカ?
二人の顔色を伺い、これはちょっとまずいなと思い、慌てて像を消す。
魔力制御の解像度を落とすと私の体がゆっくりと床に降りた。
「アンゼリカ様からは大人なら誰でも出来ると伺ったのですが・・・。」
「無理よ。普通はこんなこと逆立ちしてもできないわ。それこそ、かの知の勇者アルバートなら出来るかもしれないわね。」
「アンゼリカ様は自分も少しなら出来るとおっしゃっていましたが、」
「もう・・・あの子は」
「あの・・・アンゼリカ様にはとてもよくしていただいたので、あまり責めないで上げてください。」
「解りました。申し訳ないですけど、コレット様。貴方の指導は私たちでは出来かねます。
貴方の実力が低すぎるのではなく、私たちの力が及んでいないのです。
いえ、この国中をさがしても貴方の指導が出来る方はいないかもしれません。
図書室も含めて神殿内の機材・設備を自由に使って構いません。
他の講師をお望みならばおっしゃる通りに準備いたします。
ご相談は受けさせていただきますが、当面はご自分で魔力の使い方を習得していただければと思います。
治癒の術は魔力の使い方を覚えれば自然とついてくると思いますが、そうでなかった場合は改めて私がご指導させていただきます。」
「そう・・・ですか。」
「当面は今のクマを出したような訓練をもっと進められた方がよいでしょう。
あのクマは何体まで出せますか?」
「えーと・・・」
もう偽っても仕方ないので、正直に言うことにした。
「全力では試したことが無いのでわかりません。
でも10体くらいなら確実に出来ると思います。」
二人は顔を見合わせる。
「申し訳ないがの、コレットさん。老い先短いおいぼれのために少し出来るところまでやって見せてくれないかね。?」
「解りました。」
全力かあ・・・魔力解像度を10,000倍くらいまで上げる。
ふわり、と体が持ち上がる。
まだ行けそうだが、これ以上は魔道具が持たないと感じて、途中で止めた。
床の紋様からはアーク放電のような稲妻のエフェクトが下から上に向けて発生しだした。
バチバチと音を立てている。
二人とも後ずさっている。
全力でやってみた。
10体・・・・
20体・・・・・
まだ全然いける。
30体・・・・
余裕だ。
一気に100体まで増やす。
まだ全然いける。
300体を越えたあたりで魔道具が怪しい音を立てだしたので、慌てて止めた。
しかし、間に合わなかった。
魔道具の全ての宝珠にひびが入った。次の瞬間、半分くらい割れて砕けてしまった。
もうこの魔道具は使えないかもしれない。
直せるのかな?
修理代を請求されたらどうしよう。
孤児の時代から、お金に縁が無かったので少しも持ってない。
「申し訳ありません、壊してしまいました。」
ちょっと涙目だ。
私は二人に何度も謝罪する羽目になった。
二人からは何か別の種類の生き物を見るような目で見られてしまった。
ごめんなさい。私はお金は持ってません。
ヒールの呪文でお金を取って回復屋さんでも始めたら弁償できるかな・・・。
これが原因で半年経たずに神殿から追い出されたらどうしよう。
これでは[癒しの勇者]ではなく、[借金少女]になってしまいそうだ。
火の女神が焼き土下座の鉄板を用意してニンマリ笑っている姿が目に浮かんだ。
癒しの魔術の鍛錬ではコレットさん無双です。
コレットさんパネェです。
俺たちに出来ないことを平然とやってのける。
そこに痺れる憧れるぅ。
本来ならドヤってもおかしくないところですが、焼き土下座で鼻っ柱をへし折られトラウマになっているコレットちゃんはひたすら火の女神の無理難題に怯えます。




