祝日、不必要な電車の中で。
がたごとがたこと。
電車は進む。
ずいぶん閑散とした電車だが、それでも座席は全て埋まっていて、あぶれた幾人かがドアを背もたれにスマホをいじる。
自分もその1人だ。今日は必要のない方へ行ってしまい、その場でぶらつくことも考えたが、やめた。
なのでこうして1人わびしく電車で帰っている。
家へ家へと向かう列車は、いつも自分が見る景色とまったく同じに模写をする。いつもと違うのは空の明るさだろうか、現在午後二時。時間の使い方が下手だなあ、そう自嘲して、バッグの中の本に気分じゃないわ、とお断りしてスマホをいじる。
がちゃん、向かって正面とびらが開く。席に座った赤の他人が、ぞろぞろと降りていく。入ってくるのは祝日だからか、五つくらいの子を連れた母親を、おしゃれに身を包んだ女性が強引に押し退け座席に座る。
赤の他人の私が憤慨に満ちながら、次の駅で母親は降りていく。そのまた次の駅でその女も降りて行き、席が空っぽになる。座る人間もいないので、私は座る。
電車は進む。きぃきぃ音を鳴らしながら。暇潰しの当てはバッグにあるが、どうしても活字を読む気になれないので、活字を書くことにした。
また電車が止まる。扉が開く。ぞろぞろと人が入ってくる。子連れの家族もだ。今度はちょっと離れたところでお母さんと子供が座る。しかし、お父さんは立ったまま。
なんだか心がざわついたので、立ちましょうかと、そう言おうと思っていた。
しかし、吊り革につかまり、座席の前で家族と会話する父親は満面の笑みでこう言うのだ。
「あちらの街の方でうまいパン屋が開いたらしい。今度の休みに行ってみないか」今日がまだ終わらないまま、今度の楽しみのことを夢想していた。出過ぎた真似をしないよう、私はそっとスマホを触る。
やはり電車は進み、動き出す。遠くへ遠くへ連れ去るように。家族はどこかで降りてしまった。しかし、私の心に決着をつけなければならない。また電車が埋まってきた。また駅に止まり、また子供を抱えた父親が乗ってきた。これ幸いと私は彼を手で呼び席に座らせ、私は立って区切りをつける。ああ、隣の席のお婆さん。どうか私に微笑まないでくれ。私は私の満足のために席を譲ったのだ。
がたんごとん、それでも電車は進んでいた。




