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パローナツ、冒険なんてもう遅い異世界。~冒険家を夢見る記憶喪失の魔女と獣は、冒険を諦めた現代異世界を夢と冒険で再点火する。~  作者: 紅茶ごくごく星人
第3章 牧場と偶像とテレポート

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3-17 木漏れ日レモネード①

翌日。

アズカットの顎の痛みはだいぶ引いていた。

しかし大事をとって今日のところは安静にしてもらうことにした。


私とベル、そして休日のメルネは会場に出向き、1日中舞台(ステージ)の設営を行った。

メルネがその筋肉力を生かし、一番働いてくれた。


「やっぱり森の動物たちと筋肉披露大会とか、筋肉武闘試合とかしてるの!?」

「何それ、してないよ!でも面白そう!」


そのおかげか、想像より早く設営が完了した。


「ふう...完成しましたね!お2人ともお疲れ様です!」

メルネはそう言って、外していた眼鏡を拭いていた。


眼鏡はキュッと音が鳴った後、彼女の顔に装着された。


「お疲れさま〜」

ヘトヘトの私は返事をした。


ベルも同じくヘトヘトで、返事をする。

「お疲れ様...メルネちゃん、お姉ちゃん、ありがと...つめたっ!?」


ベルの頬に冷たい水滴の垂れる、金属のコップが当たる。


コップを持っていたのはポルテナだった。


「ポルテナ!」

メルネが言う。


「お疲れ、サマ」

ポルテナはぶっきらぼうに言う。


ポルテナは冷気の閉じ込められた箱を持っていた。


「ポルテナ、それって—」

私が聞くと、ポルテナは小さく会釈した。


「飲んで」

ポルテナはベルに言った。


「これ、綺麗ですね!」

ベルがそう言いきる前に、ポルテナは「飲め」と念を押した


「は、はい」


ベルはついにその金属製のコップをおそるおそる傾けて、ぐいっと中の液体を飲む。


私もメルネもその様子をじっと見守る。


「...ふはーっ、この飲みもの、すごく美味しいです!」

暑い汗を流し溶けているようだったベルの顔は、途端に涼やかな瑞々しさを取り戻した。


「ポルテナ、私ももらってい冷たっ!」

メルネが言い切る前に、ポルテナはメルネの頬にコップをぶつけていた。


「ふっ、私の勝ちね」


「今のは勝負じゃないから!もう...ありがと」

メルネは飲み物を受け取った。


「どんな飲み物なの?」

メルネの受け取ったコップを見せてもらった。


蒼い液体が木漏れ日に照らされ、揺らめいていた。


「綺麗...でもこんな真っ青な飲み物初めて見た。不思議だ...」

私がそう言うと、


「ステラ先輩も」

と言ってポルテナは箱から飲み物を取り出して私に渡した。


「ありがとう。...これって—」


「ボルカニア先輩からです」


「やっぱりそっか」


ポルテナが持ってきた冷気の箱、

あれはルカ...ボルカニア・ベイカーが彼女の熱泥魔法でよく作っていたものだ。


「今度あったらありがとうって言っておいて」


「はい、必ず。」


「冷たくておいしい〜」

メルネの声が聞こえた。


それから私はその飲み物をごくりと飲んだ。

冷たい空気が私の喉を通って頭に広がり、手の先足のつま先まで癒す。

瑞々しい甘味と酸味の混ぜ合わされたその味は、冷気とともに私の体に染み渡った。


「これ、すごくおいしい!何これ何これ!ポルテナっ!何これ!」


「ごめんなさい私も知らないです...」


「やばいのみものなのでは...?」

私はそう呟いたが、またもう一口ぐいっと飲んだ。


「おいし!」


「もしもし〜!!!!!!!!!!!聞こえますか〜!!!!!!」

唐突に聞こえてきた大声に、私は咳き込んだ。


「ああっ...!」


私は謎の青い飲み物をこぼしてしまった。

残りあと一口あるかないかくらいだったが、私にとっては惜しかった。


ベルは飲み物をメルネに一旦持ってもらい、ポケットから鏡を取り出す。

鏡の先には服屋のコマチさん、カイル、エー坊ことニエ・ギルテがいた。


「どうも初めまして、バリトノ・コマチさん。ベル・ロスヒハトと申します。」


「どうも、ベル・ロスヒハトさん。話は聞いています。アイドルの衣装を作って欲しいと、そう言うお話でしたね」


「...はい!」


それからベルはコマチさんに自身の要望を発注した。

その様子は、淡々としながらもどこか楽しそうだった。


その最中に、

「飲み物、本当はアズカット先輩のなんですけど、どうぞ」

とポルテナが渡してくれた。


「わ!ありがと!!!!!!!!!!」


「おい、この香り...」

鏡の先でカイルが呟いた。


「なんか、食べてる?」

やけに神妙な言い方をする。


「ほんとおまえ鼻いいな。別に食べ物っぽい匂いはしなくないか?」

ニエが言う。


「ちょっと今話してるところなんだから静かにしておくれよ」

コマチさんはわりと本気で煩わしそうに言った。


「これです」

ポルテナは私に渡すはずだったコップをカイルにこそっと見せた。


「...これっ!

サファイアレモン...!蒼鉱床樹(サファイアレモン)じゃねえか...!!」


カイルは驚いて大きな声を出した。

^ivi^[ネコニス'sTips]

蒼鉱床樹(サファイアレモン)はパローナツにおいては最北端のごく一部の地域にしか自生していません。

サファイアレモンの育つ土壌がパローナツの外郭近辺にしかないことも理由の一つです。


サファイアレモンの実を食べると、少量でも魔力を大きく回復する効果があります。

通常は問題ないのですが、普段から魔力を大量に使う癖がある人が食べると記憶力が欠如したり、思考や発言が短絡的に...よく言えば素直になるなどの効果があります。


私も昔そのせいでひどい目を見ましたが...

今のパローナツではキューブの魔力を使って魔法を行使するのがとれんどですし、

今時自前の魔力を使い込む習慣がある人なんて、さすがにいませんよね!

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