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パローナツ、冒険なんてもう遅い異世界。~冒険家を夢見る記憶喪失の魔女と獣は、冒険を諦めた現代異世界を夢と冒険で再点火する。~  作者: 紅茶ごくごく星人
第3章 牧場と偶像とテレポート

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3-16 危険な放牧

アズアズは私と同じ牧場の服に着替えた。


「似合ってます!」


「いいね」

私は手の指で窓を作った。

アズアズが撮影魔法を使うときの仕草だ。


もっとも私はブブヤツリクサ紙を持っていないので、

彼女の姿を撮影することはできないのだけれど。


「それじゃあ只今より牛さんの放牧の時間です!

今から私が牛さんの部屋の扉を開けていきます。

お姉ちゃんがこの鐘を持って誘導するので、アズアズさんはよく見ててください!

次の厩舎ではアズアズさんに誘導してもらうので!」


「わかったわ」


ベルが牛さんの部屋の扉を順々に開ける。

私は鐘を鳴らす。


すると私の方に牛さんたちは歩いてくる。


「モ〜」


「これなら私にもできそ...」

アズアズがそう言いかける。


すると牛さんたちは鐘を持つ私ではなく、アズアズの周りに集まっていた。


「な、何かしら」


すると牛たちは一斉に鳴き出した。


「どうしたの...?」


「う、うるさい...もう、少し黙ってくださる!?」


「モ〜!」


牛の一頭が、アズアズの顎に頭突きした。


ゴッ、という痛そうな音が鳴る。


「うっ...」


私はアズアズの前に立って、牛たちの攻撃から彼女を庇った。


「モ!?」


「お姉ちゃん!私に鐘を投げてください!」


「はい!」

私がすぐさま投げると、鐘は音を慣らしながらベルの手に収まった。


ベルは鐘を鳴らしながら、喉笛から優しい旋律を発した。


すると牛さんたちは頭突きをやめた。

彼女の発するなだらかな音に乗って牛さんたちは歩いていく。


ベルは私たちの横を通る際に、

(アズアズさんを連れて戻ってください)(お父さんに言って手当てを)

と、喋らずに口の動きだけで私に伝えた。


(わかった)


私はアズアズを連れて戻った。


ーーーー


「ん...」


「目が覚めた!大丈夫?」


私はアズアズをベッドに寝かせ、彼女の顎を手当てし終えていた。


「ここは...」


「ロスヒハト牧場」


「それは知ってるわ」


アズアズは自身の顎を触った。


「いたっ」


「待って、あんまり触らないほうがいい」


「ステラさんが手当てしてくれたの?」


「うん」


「ありがとう、ステラさん」


「うん。

でも私が誘っちゃったせいでこんなことになっちゃったから...本当にごめんなさい」


「確かに...それじゃおあいこね」


そう言うと、アズアズは周りを見回した。

「ここって...?」


「誰も使ってない部屋らしいけど、ベルが定期的に綺麗に掃除してたみたい。


それにこのベッドも、牛さんほどじゃないけど羊さんも何頭か飼ってて、

毎年羊さんの毛を刈ってはベッドを作るのがグルーさんの趣味なんだってさ。」


「それはすごいわね」


「もしここが養鶏場だったら、干し草の上で寝かせることになってた。」


「そしたら顎より背中が痛くなっちゃうわね。

ベルさんとグルーさんにも後でお礼を言わなくちゃ。」


私は頷いた。


「グルーさんもベルも、アズアズを新しくやってきた牛さんと間違えたんじゃないかって言ってた

別に攻撃してるわけじゃなくて、ただじゃれてるだけだとも言ってた。」


「ああ、この髪ね...」

アズアズは自身の銀色の髪を指して行った。


「カイルが帰ってきたら、彼にも気をつけるよう言わないとね。

だって彼の髪、茶色に真っ白だし。私より牛さんっぽい色の組み合わせしてる」


確かに、アズアズの髪色は白というより灰色というか銀色っぽい。

対してカイルの髪の白い部分は雪のように真っ白だ。


「そうだね...。でも、カイルはウシじゃなくてウサギだから。」


「そう...すごくどうでもいいわね」

「ええ!?どうでもよくないよ!」

「はいはい、どうでもよくないよくない」


そう言っていると後ろから、ガチャリとドアが開く音がした。


「どうですか、具合は」

ベルがきいた。


「ええ、大丈夫よ。ありがとう。まだ少しだけ痛むけれど」


そしてアズアズは続けた。

「それより、ウシさんたちは大丈夫かしら

私のせいで怪我とかしてないかしら」


「全然大丈夫ですよ、肉体的にも精神的にも、アンジェラからゾーイまでみんな元気です!」


「そう、それはよかったわ...よかったけど、本当に強靭なのね」

そう言いながら、彼女は自身の顎をさする。


「メルネさんが鍛えてるのも、動物と対等に話すためなのかしら...」

アズカット・デレクタは窓の外を眺めた。


私も窓の外を見る。

私には、屈強な動物たちと筋肉をぶつけ合い、友情を深めるメルネの姿が見えた。


もちろんそれは幻覚だった。

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