3-3 ロスヒハト牧場
私たちはロスヒハト牧場に到着した。
「ふ、不審者か!?」
クワを持ったおじさんが駆け寄ってくる。
「違います、お客さんです。僕の知り合いなので怪しくありませんよ。」
リュートがそう説明した。
「そうですか、大変失礼致しました。」
その人は頭をあげると、目を丸くして私の方を二度見した。
「どうかされましたか?」
「...いえ、なんでも。私はこの牧場をやっておりますグルー・ロスヒハトです。」
「どうも、カイル・リギモルといいます。」
「ステラ・ベイカーです。」
「カイル...ああ、なんか見たことあると思ったら君か
いつだったか、ここに来たことがあるだろう」
「覚えてくださってたんですか、ちょっと来ただけなのに」
「ああ、何の連絡もなしに訪ねてきて、ミルクを直接買いたいなんて言う人はあんまりいないのでね...」
「すみません」
「いやいや、今回もミルクがお目当てですか?それならすぐに詰めてくるよ」
「ありがとうございます。でも少しの間でいいので、牧場を見学させてもらえませんか?」
「ああ、いいけど、失礼だけど、泥棒じゃないよね?兵士さんの知り合いということだし」
「はい!...では僕は門番に戻りますね」
リュートが言った。
「それじゃあな」
カイルが手を振った。
「じゃあ」と私も手を振ったが、
リュートは私にもカイルにも手を振り返さずに、そそくさと山を下って行った。
「忙しいのかな」
「あいついつもああだから」
「それじゃあ私は勝手に仕事してるから、ウシたちに直接触れたり、嫌なことはしないと思うけどね...くれぐれもお願いね」
「はい、もちろん」
カイルが言った。
「ありがとうございます」
私はそう言うと、グルーさんは私を見て何か考えるような顔をして去っていった。
「なんか、なんだろう、グルーさん...あの人私を不思議なものを見る感じで見てた気がする」
「いやだなあ、自信過剰でしょ」
カイルは、私が町で言ったことを真似した。
「真似しないで。
それより、吟遊詩人さんについて聞くの忘れてたな...」
「あ、本当だ...でも牧場を回ってたら見つかるかもな。
この牧場に戻っていったはずだし、案外雇われじゃなくてここの従業員とかだったりして。」
「そうかもね。」
「モー」
牛が放牧されていた。
私たちはそのまま、牧場を見て回った。




