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パローナツ、冒険なんてもう遅い異世界。~冒険家を夢見る記憶喪失の魔女と獣は、冒険を諦めた現代異世界を夢と冒険で再点火する。~  作者: 紅茶ごくごく星人
第1章 冒険家たちの邂逅

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1-33 魔法壊す鎧③

「ねえ、大丈夫!?」

ボルカニアが小声で言う。


大丈夫じゃない


(!?)


俺はボルカニアに運ばれ、崖から少し離れた森の中にいた。


すると走ってくる音がする。


(ステラちゃん!?)


さっき怪人ウサギ男といた少女だった。

俺を抱えたボルカニアはとっさに隠れる。


(何をして...?)


ステラなる彼女は、必死に木の枝を拾い集めていると、伝わってくる。


...


ボルカニア、俺はもう長く生きられない。

だから、怪人ウサギ男のいたさっきの場所に連れて行ってくれないか...。


ステラは去っていくのを見届けて、ボルカニアは俺に言った。

「...わかりました」


ーーー


ステラを見つからないように追いながら、たどり着いた。


怪人ウサギ男が俺を刺した騎士と戦っている。

どちらも少し息を切らしている様子だった。


ボルカニアを通じ、光景が見えなくとも伝わってくる。


騎士が剣を振り、怪人ウサギ男がそれを手で掴む。

掴み合いになり、騎士は怪人ウサギ男の脛を蹴る。

しかし動かない。


「お前は昔は強かった!

でも変わってしまった!

そいつの魔法も!

お前の武器も!

俺に比べて弱すぎる!!!!

今の俺に、道を外れたお前が、勝てるわけがないだろ!!!!」


騎士は怪人ウサギ男を蹴って引き剥がそうとするが、離れない。

怪人ウサギ男は、騎士の左手首を掴んだままの拳で鎧を殴りつけた。

それも何度も。同じ箇所を何度も、何度も。


「おい、やめろ!何やってんだ!」

「何って、鎧を壊すんだよ」


怪人ウサギ男の拳が鎧に何度も叩きつけられる。


騎士が引き剥がそうとするが、それでも怪人ウサギ男は鎧を叩き続けている。

そのうち彼の手袋の裾から赤い血がこぼれ、肉がぐちゃぐちゃになる嫌な音がする。


「やめろ!鎧より先にお前が壊れるぞ!」


「武器は意思を出さない。

だから俺に無理やり投げられて、この硬い鎧にぶつかって、そのせいで粉々に砕けちまった。


でも、俺の体を動かすのは俺の意思だ!

だから骨が砕けようと、肉が裂けようと、俺の意思が壊れない限り、

こうやってずっと殴り続けられる」


血がぼたぼたとこぼれ落ちるその場所で、鎧の一箇所が肉の塊(右のこぶし)に執拗に叩き続けられる。

「クソっ...離れろ!」


「伏せて!!」


ステラはその痛々しい様子に耐えかねたのか、

束ねた木の枝の塊を、風を吹かせて飛ばした。


怪人ウサギ男は伏せ、その場を離れる。

騎士に直撃した木の枝は視界を奪うが、すぐに取り払われてしまう。


怪人ウサギ男はその隙に武器を2つ投げたが、

1つは大きく外れ、もう1つは鎧にぶつかって砕け散った。


木の枝は踏みつけられ、その場に散乱した。


「やっぱり壊すしかない...!」

怪人ウサギ男が言う。


「だめだ!それ以外の方法を考えよう!

それか一旦逃げよう!」

そう言うステラ。


でも怪人ウサギ男は振り返って、落ち着いた口調で、確かにこう言った。

「...大丈夫だ。見ててくれ!」


「ふざけやがって...頭も悪くなっちまったのか!」

そこに騎士が剣を振りかぶる。

怪人ウサギ男は避け、鎧を確実に殴る。


骨が折れる鈍い音がする。

血がぽたぽたと垂れる。


騎士が怪人ウサギ男を蹴り飛ばし、2人が離れた。


どちらも息をぜえはあと切らし、大粒の汗を流す。

そんな中で、怪人ウサギ男はふうーっ、と息を整えた。


一瞬その場が静かになる。

そして武器を一つ、左手で投げた。


すると鎧はピシリと音を立て、わずかにヒビが入った。

武器にも大きなヒビが入り、その場に落ちた。


「ステラ!」

彼がステラに話しかける。


「何?」


「もう少しでいける!風を頼む!あと、木の枝持ってきてくれてありがとう!」


「...うん!」


それを聞いた怪人ウサギ男は、また騎士に対峙し、にかりと笑った。


彼が鎧に最後の一撃を見舞うべく、走り始める。


騎士はそれを迎え撃つ。

「カイルゥゥ!!」

「ゴーシュ!!」

怪人ウサギ男は一直線に鎧のヒビ目掛けて殴る。


当然騎士はそんな無防備に飛び込んできたカイルに剣を振り下ろす。

しかしその剣はカイルの左腕で受け止められた。

彼は左腕を上に振り払って、受け止めていた剣を打ち返す。


そして彼はなんと右手で木の枝を拾い、騎士の兜に差し込んだ。

「おい!やめろ!...ふざけやがって!」

「武器の強さは使う人間次第だ...こんな風にッ、なァ!!!」


ゴーシュはカイルを突き放す。

差さった木の枝を引っ張るが、枝は太く、嵌って外れない。


ぐったりして立ち上がらない怪人ウサギ男。


「お前は正々堂々だって思ってたのに、失望した...もう許さない!」


カイルは今更騎士の方を向き、拳を握り構える。

でももう遅い。

それより先に、剣が振り下ろされる。


しかしその瞬間、聞き覚えのある風切り音がした。

「「ブォン」」


直後、何かがバキっと音を立てて割れる音。


木の枝の破片が宙を舞った。


割れたのは木の枝だった。

それが差さっていた鎧の騎士は、その一瞬だけ、真横によろめいていた。


「今だあああああ!!!!」

そう言いながら、怪人ウサギ男の拳が鎧に繰り出された。


鎧は音を立てて割れ、ヒビが一気に広がり、砕け散っていく。


その瞬間、魔法の突風が吹いた。


鎧の砕けた騎士は、その風に吹き飛ばされる。

そして一緒に怪人ウサギ男も吹き飛ばされた。

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