1-32 魔法壊す鎧②
「これさ、すごく硬い鉱石でできてて、それでいてすごく鋭い武器なんだ。」
カイルは自身の砕けた武器のことを言った。
「何でできてるんだ?その鎧」
彼がそう聞くと、騎士ゴーシュは答えた。
「王は私にこうおっしゃった。
この鎧はあの勇者の剣"電聖剣スマトラフォ"と同じ物質でできているのだ、と。」
「ふざけた冗談だな、そりゃあいい。」
すると騎士は私の方を向き、ただならぬ殺気のような気配をむけた。
それを感じた私は鎧に向かってまた、炎の球を投げた。
しかしさっきと同じように、鎧にぶつかった途端に拡散し煙となる。
「...ステラ・ベイカー。魔法使い。ベイカーなんて姓の人間はこの世界にいくらでもいる。
でも、魔法使いのベイカーと言ったら、あのベイカー家だけだ。
...名家に生まれ、才能に恵まれ、何の苦しみも味合わず努力もせずに生きてきた。
悲しいが、それゆえにお前は罪人となったのだ」
「私は養子としてベイカー家に特別に入れてもらっているけど、血は引いていないよ」
「でもどんな魔法でも使えるって聞いてるぞ!それは事実だろう」
「...確かに。」
「俺はお前とは違う。もちろんそこにいるカイルだって。
日々努力し、兵士として正々堂々この国の平和のために尽くしてきた。
お前のようなずる賢い悪人を捌くことができて、俺は幸せだ。」
そしてこちらに向かってくる。
「この鎧は王から直接賜った魔崩の鎧!
この鎧を着た俺の前に、魔法はすべて砕け散る!」
魔法は効かない。武器も全く歯が立たない。
だけど、
「ステラ!」「カイル!」
「「いい考えを思いついた!」」
!?
私と同時にカイルも策を思いついたようだ。
「私は何か大きなものに風魔法をぶつけて、それごとあいつを崖下の川に落とす手段。
後ろの森に丸太とかないかな?」
「俺は奴の鎧を砕いてステラに魔法をぶつけてもらうつもりだった」
「できるの?」
「できる!
だが万が一のため、近くにやつにぶつけられるものがないか探しておいてくれ!
大きなのがなければある程度丈夫なら木の枝でも構わない!
その間鎧をできるだけ砕いておく!」
「わかった!」
そう言って私は森の、なるべく遠くに行かない場所で探す。
しかし、多分倒木や丸太はないんじゃないかという気がしてきた。
私は木の枝をたくさん拾ってツタで縛る方針にした。
途中で大きなものがあればそれを持っていけばいいし、なければ作った枝の束を持っていけばいいのだ。




