1-31 魔法壊す鎧①
「こ—「断る!」
怪人ウサギ男が言いかける前に、私が言った。
「人を殺しておいて断る権利があると思っているのか」
騎士がそう言うと、カイルは言った。
「俺も断らせてもらう、ゴーシュ。」
騎士は少し黙っていたが、すぐに笛のような音を鳴らした。
すると、多くの兵士が森から出てきた。
「言っただろう、断る権利はないと」
「う、わああ!?」
悲鳴がして、騎士は振り返る。
すると、そこではベアが兵士の一人の槍を折っていた。
周りにいた他の兵士がすぐさまそれに加勢するが、人間がクマに勝てるわけがなかった。
兵士たちは次々と負傷していく。
流石に数が多く、ベアについに槍先の一つが当たろうとする。
しかしカイルの投げた刃物がそれを曲げ、兵士たちの鎧をも砕いた。
「負傷者は戻って治療しろ!ただし逃げ場がないように橋だけは封鎖しておけ!」
「わ、わかりました!」
兵士たちは去っていく。
「どうする?逃げるか?いや、逃げても—」
「西に戻ったらまた捕まるだけだもんね」
それから騎士は、Sランク指名手配されているはずの私ではなく
カイルの方をずっと見ていた。
「カイル...久しぶりだな。2年ぶりか?今まで何してたんだ。」
「ゴーシュ。お前こそそんな仰々しい鎧着て、随分偉くなったみたいだな」
「知り合いなの?」
「2年以上前に騎士団で兵士をやってた時期があった。その時の同期だ。」
「...戻ってこいよカイル。お前がその女に騙されてることはわかってる。早く戻ってこい」
は?
「それは違う。俺が彼女を誘ったんだ。それで断られた。」
「じゃあ何で一緒にいるんだ」
「偶然というか、成り行きみたいなもんだ。
ステラは冒険し、この世界のすべてをその目で見ると言った。
俺は彼女がそれを果たすのを見たいと思った。
そんなことを言う奴、初めて見たんだ。
...俺が冒険者ギルドを作りたいって言ってたの、覚えてるか?」
「ああ、覚えてるさ。
でもそんなこと、まだ言ってるなんて思ってもみなかった...!」
そう言って騎士はカイルに打ちかかる。
カイルはブのつく武器を短剣のように扱い、剣をいなす。
その間何度もカイルの武器が騎士の鎧を叩くが、びくともしない。
何度も打ち合っているうちに、騎士はカイルのガードを解き、一撃を見舞おうとする。
「危ない!」
私はとっさに、鎧に向かって炎の球を飛ばした。
しかし鎧は動かず、炎の球を避けなかった。
鎧にぶつかった魔法は、なぜか破裂したように拡散し、煙を撒いた。
煙が晴れる。
すると騎士ゴーシュは剣に体重をかけ、それをカイルは下から両手の武器で抑えていた。
「カイル!冒険なんて...人の敷いた道路を歩きたくないだなんて考えは、反抗期の子供がやることだ!
お前はあのまま騎士団にいれば出世できたはずなのに...!
今からでも遅くない、俺が一緒に謝ってやる、だから戻ってこい!」
より一層騎士の体重はかかる。
だが—
「...確かに、戻ってみても面白いかもしれない。
でも、それよりももっと良い道を、俺は知っている...。
今まで歩いてきて、苦しいことも、楽しいこともあった。
だがそれは、出会った人たちに助けられながら、自分もその人たちを助け、そして、
自分自身で道を切り開き歩んできたからだ」
カイルは騎士ゴーシュの剣を押し返しつつあった。
これから俺が歩むのは、そこにいる冒険家ステラが進む道を、これからの冒険を、
最後まで見届けるという道だ!」
そう言った時、彼は完全にゴーシュの剣を押し返していた。
カイルはそのまま剣に対しもう一撃入れる。
騎士はたまらず手を離す。
騎士はそれが地面に落ちる前にまた拾おうとする。
でも、カイルはさらに一撃を鎧に向かって入れる。
するとカイルの武器は、鎧にぶつかった途端に砕け散った。
カイルは一歩距離をとり、鎧に向かってもう一方の手に持っていた武器を投げる。
しかしまたそれは、鎧にぶつかり砕け散った。




