1-30 ゴブリンが魔王だなんてイキるから
ここは山中の崖。
向こう岸の岩肌が見え、その様子はなかなかに絶景だ。
崖の下をみると、川が流れている。
向こう岸へ行くには、少し迂回したところにある橋を渡らねばならない。
そこで休憩する私たちは、またあの肉の干物を食べていた。
「司教もこんな感じでご飯食べながら話したりするのかな...」
「どうなんだろうな...北の司教はそういうの好きそうだった」
「知り合いなの?」
「ああ。北の司教と東の司教には、どちらにも本当にお世話になった。
でも北の司教はご高齢で、去年亡くなってしまった。」
「そうなんだ...
今更なんだけどその武器って何なの?」
「ああ、ブ...何だっけ。忘れちゃった。
ブから始まる名前で...ブ...うーん...?
これを俺が最初に見たのは5歳くらいのときだった—」
また怪人ウサギ男が語り始めるな—
そう思った時、後ろからガサガサと音が聞こえてきた。
そちらを向くと、なんとゴブリンがいた。
「俺は魔王、ゴブリ・インパクト!怪人ウサギ男!お前を倒す!」
「すごい、ゴブリンが喋ってる!」
私は驚き、興味深く思った。しかし—
「そこのゴブリン!そこから離れろ!」
カイルは焦ったように言い、武器を投げる。
「えっ?」
私は驚いて声を出す。
するとゴブリンはそれをを避けた。
なのに、カンっと金属音がなって、血が飛んだ。
「もう遅い」
聞いたことのない声。
「ごはっ!!」
ゴブリンの胸から剣の先が現れる。
口と胸から、血がボトボトと垂れる。
「ゴブリンが魔王だなんてイキるから」
鎧の騎士はそう言うと、ゴブリンの体から剣を抜いた。
ゴブリンはどさりと倒れる。
鎧の騎士は剣についた血を拭きながら、こちらにやってくる。
「プリミティシア騎士団所属ゴーシュ・イスクだ。
Sランク指名手配犯ステラ・ベイカー、お前を西司教殺害の罪で連行する。」
騎士はそう言うと、怪人ウサギ男の方を見た。
「カイル・リギモル、お前にも来てもらう」




