1-28 玉座からの逃亡(前向き)
「というわけで、王になったわけだが、感想は何かあるが?」
クリインから聞かれる。
「ああ...」
玉座に座った俺は、横にメスのゴブリンを侍らせていた。
「うふーん」
「あはーん」
メスのゴブリンなんているんだ...と思った。
「私と夜のぶ・と・う・た・い・か・い、しましょ?」
「やーん、私としましょお?」
「もてもてじゃねえが、王は羨ましいなあ。
インパクトもいないし、来年はおでも参加しようがなあ」
「俺は...こんなの望んでないいいい!!!!!!」
俺は玉座から離れる。
すると家臣のような老ゴブリンがやってきた。
「こ、困りますじゃ!ゴブリ殿は前年の賢王インパクト様の名を継いでおられるお方。
この洞穴に住む民が豊かに暮らすため、うんぬんかんぬん!昨年インパクト様は—」
そう言って、インパクトがどんな政治をしていたのかを語り出した。
クリインや女ゴブリンたちも、そうだそうだと次々と彼の凄さを話していった。
「そんなに詳しいんなら自分たちでやればいいんじゃない!?」
「...た、確かに」
俺は棍棒を持って逃げ出した。
洞穴を出ると、前に聞いたことのある音がした。
葉の揺れる音、鳥のさえずり。
森だった。
マップをみるとゴブリンたちのアイコンがたくさんあったが、喋らず、触れると冷たかった。
武闘大会で死んでしまったゴブリンたちの死体だった。
マップのウィンドウをタップすると、見れる場所の範囲が拡大される。
少し離れた場所で、猫のようなマークは東に向かって動いていた。
これがネコニス様の大切なものの場所。
そして、怪人ウサギ男がいる場所。
「待ってろよ怪人ウサギ男!絶対にお前を、倒す!
このゴブリ・インパクトの名にかけて!」




