1-25 ゴブリンの武闘大会
大会はトーナメント戦。
参加するのは128匹のホラアナゴブリン。
AブロックとBブロックでそれぞれ64匹に分かれて戦い、
5回戦を勝ち抜いたブロックの優勝者同士が戦う。
そして勝った者がこの洞穴の、その年の王となるようだ。
俺はBブロックに開始直前でギリギリ参加することができたが、
既にAブロックの戦いは始まっていて、たくさんの死者を出していた。
棍棒をとり、岩のフィールドに上がる。
1回戦。
「そんな目で戦うなんてお前ばかだな!」
どんな醜悪な目をしているのか、水面をみて確認したい。
でもできない。
「これでもくらええええええ!!!!!!」
俺はそれを躱し、棍棒を使って相手の背中を突いた。
「ぐわあああああぁ...!!!!!!」
勢い余った相手のゴブリンがフィールドから落ちて、水音が鳴る。
「...1回戦の勝者はゴブリ!」
「うおおおおおおお!!!!!!!」
他の試合を観戦していても思ったが、みているゴブリン達は毎回やたら歓声を上げる。
その元気が大変心地いい。
すると倒した相手のゴブリンが水から上がってきた。
「お前つよいな...さっきは馬鹿にしてごめんな」
そう言って彼は去っていった。
本当にこの大会で死者が出るのか?
フィールドから相手を落とせば勝ちなんだから。
でもまあ、武器として棍棒を使っているので、あたりどころが悪ければそう言うこともあるか。
「ゴブリ、まずは1回戦おめでとう!お前ながながやるんだな」
クリインが言う。
「ありがとう」
何より幸運だったのは今のこの体が丈夫だったこと。
他のゴブリンの反応を見るに、目以外に大きな損傷はなさそうな感じだった。
前回は肉も骨もドロドロで、走るだけでも崩れ落ちてたし。
その後俺は3回戦、4回戦と順調に勝ち抜いていき、次の5回戦を勝てば決勝だった。
俺とクリインはBブロックの会場を見に行った。
「フン!フン!」
巨体のゴブリンがフィールドを棍棒で叩きつけていて、その辺りは真っ赤に染まっている。
「3回戦の勝者はインパクト!」
小さな拍手。
会場は「またか...と言う感じで」そこまで熱狂していなかった。
「あれが最有力優勝候補の"インパクト"か...」
俺が聞くとクリインは答えた。
「そうだ。それで大会の死者のほとんどはあいつから出てる。
毎年ああ言うでかいやつは一つの洞穴から1匹は産まれるもんだってされてる。
つってもその中でもあいつは桁違いの大きさだがな。」
「去年の優勝者は?」
「去年もインパクトが優勝した。あいつはああ見えて統率力がある。
その間は恐ろしいほど穏やかなんだが、この時期になると豹変する。
戦いが好きすぎてな」
「もっと強いヤツはいないのかぁー!!!!!」
巨体のゴブリンは赤黒い血の滴る棍棒を掲げた。
「あいつと戦うのはやめといたほうがいい。
あんたがもしかしたら優勝するんじゃねえかって思ってたけど、
あれと戦ってあんたが死ぬんなら気分が悪い」
「...俺は勝つよ。絶対に勝ちたいから、勝つ方法を考えて、それをやるだけだ。」
「...そうか」
そんなことを話していたらインパクトは降りてきて、こちらを向いた。
「お前が優勝候補のゴブリか。楽しみだ」
そう言ってインパクトは、血のついたままの棍棒を持って、ノシノシと去っていった。




