1-24 転生先:ホラアナゴブリン・ゾンビ
久々の転生者の話です。
顔が冷たい。
ぽたぽたと水滴が滴る音がする。
水滴は俺の顔にもぽつ、ぽつと当たり続けていた。
気がついた俺はばっと起き上がる。
<警告:眼球が欠損しているため視界を表示できません>
「わあっ!」
表示に驚くと同時に、聞いたことのない声がした。
「だ、誰だ!?」
声は響く。しかし誰も返事をしない。気配もしない。
少しして、これは俺の声なんだと気がついた。
じゃあ俺は...
<あなたの種族は<ホラアナゴブリン・ゾンビ>です。>
メッセージが出た後、前回と同じく
死ぬまでの猶予を示す円環「LifeSpanサークル」が表示された。
「今回はゴブリンか...」
自身の姿はおろかこの場所がどこかも見えない。
<追加された機能が2件あります。ヘルプを表示しますか?>
表示してほしいと思うと
その途端、真っ暗な視界にウィンドウが増えた。
<NEW<精神直通会話>
種族や言語を無視しての対話が可能です。
テレパシーと言っても、普通に口を動かして喋れば相手に伝わるので大丈夫ですよ!
もちろん口を動かさなくてもいけます!脳内に直接語りかけましょう...ネコニスより>
<NEW<探知>
既に獲得したことのあるものを探知することができます!
伝言ですが、私の大切な物を怪人ウサギ男に奪われてしまいました。
それを探知を使って探してほしいです!ネコニスより>
ネコニス様の大切なものを...
怪人ウサギ男め、許せない!
きっと必ず見つけ出してやつと戦おう。
そして勝って、絶対に取り返そう。
怪人ウサギ男『ぐはーーー負けたーーーーーあなたの子分にさせてくださいーーーー』
俺『いいだろう、俺の顔に免じて、特別に許してやろう』
子分『ははーーーありがたき幸せーーーー足ペロペロ』
ネコニス様『素敵!俺くん結婚して!』
俺『はっはっはっはーーーー!』
「あ、あんた、こんなとこでなーにやってんだ!?」
「はっ!」
妄想にふけっていたら誰かに話しかけられてハッとした。
「だ、誰だ!?名前!名前を言いなさい!」
俺は慌てて、おかしな口調で言った。
「あ?おらの名前はクリインだが?」
「そ、それはどうも...」
視界は真っ暗だが、
左上に表示されたマップのようなウィンドウの中にゴブリンの顔のマークがあって、
それが彼なのだとわかる。
「おらは武闘大会で死んだやつらを外に放り投げる係なんだが、おっかなびっくりだあ。
まさかそんな目ぇも潰された姿で生きてるやづがいるなんて」
「ぶどうたいかい?」
「あ、あんた洞穴一武闘大会を知らんのか!?まさか、そのなりしてゴブリンじゃないんか!?
もしくは一度死にかけて記憶が消えちまったが!?」
「ああ...そ、そうそう、そんな感じ!」
その後俺は彼から『洞穴一武闘大会』なるものの詳細を聞いた。
その洞穴の中で最も強いゴブリンを決める大会で、その優勝者がその一年間の親分になるらしい。
俺はクリインに案内され、大会の会場に移動した。
「そういや、あんたの名前は?」
迷った俺は深く考えすぎるあまりおかしなことを言った。
「お、俺の名前は...ゴブリ!そう、ゴブリだ!」
「そが、でもゴブリンでゴブリなんておかしくないか?
そんなの人間をヒトちゃんとかゲンちゃんって呼ぶみたいで...いや、おかしくなかったがもな」
そして俺は武闘大会にエントリーした。
そんな目の無い体で!?とクリインには驚かれたが、なんとなく面白そうだし、参加することにした。




