1-21 フォレストオオカミのスープ
私は森の中を歩いていた。
最初の予定では、ここ西部を出た後、
普通に街道を通って東部にたどり着くつもりだった。
そうすればこのパローナツの中心と呼ばれる場所にある王都プリミティシアにも立ち寄ることができる。
しかし...
「お前、Sランク指名手配者の...星眼の魔女ステラ、だな!?」
西部から王都に入る門にて、門番にそう言われた。
掴みかかられたので、つい逃げてしまった。
「Sランク指名手配...?」
門番に止められること自体は予想通りだった。
大人しく事情聴取を受けるつもりだった。
だけど、Sランク指名手配なんて...おかしな話だ。
でも、今更何を言ってももう遅い。
Sランク指名手配をされたら最後、私がどんな弁解をしようと、今度こそ問答無用で罪人として処刑されてしまう。
そのことは一般常識で、知っていた。
「はあ...」
お腹空いた。
森の中の動物を殺して食べるという考えは、思いつきはしたが、実践する気にはなれなかった。
そのままとぼとぼ歩いていると、何やら良い匂いがしてきた。
「すん...」
ご飯...
その方向へ向かうと、煙と灯りが見えてくる。
見ると、そこには怪人ウサギ男がいた。
何やら鼻歌を歌っている。
私は木の影からそちらを見る。
なんと彼は大きな鍋の中をかき混ぜていた。
それを見ていたが、しばらくすると
木のおたまで鍋の中から粘り気のある液体が器に移される。
いっそういい匂いが漂う。
彼はそれを口に運び、ごくりと飲む。
「ごくり...」
私は思わず唾を飲む。
それから少し沈黙が流れる。
そして言った。
「やっぱりー!オオカミはー!鍋がー!最高ー!だなー!」
そして彼は、なぜかもう一つ器を取り出し、それに鍋の中の食べ物を移した。
そして食べていた方の器を持って、私のいる方とは別の方へ去っていった。
私は我慢しきれず、その器のところまで来て、手でもち、飲んだ。
熱い。でも美味しい。
食べているうちに空腹で少しぼんやりとしていた意識が目覚め始めた。
ふと周りを見ると、木に括り付けられた紐に、たくさんの肉が干されていた。
すると彼が来た。
「ごほっごほっ」
私はむせる。
「なんでこんな森の中を」
そう言って彼は小麦色のソースがかかった山菜のサラダを私に渡してきた。
「それは...ムシャムシャ...あなたこそ...ムシャムシャ」
ソースの食感は粒粒していた。
「この通り、食べ物を。」
「私は...」
スープを飲み干した。
「Sランク指名手配、されてたな」
「そう。門は通れなかった」
「でも門までは何の問題もなく来れた」
怪人ウサギ男はそう聞く。
「うん。」
「確証が持てないからな。」
そう言って彼はスープを食べる。
「フォレストオオカミって本当にうまいな。
味がスープにも滲み出てる。」
「フォレストオオカミって、
世界中の至る所を放浪してるから決まった生息地がないって聞いたことがあるんだけど...
実はどこに出るとかって決まってたりするの?」
「いや、知らない。
灰色の四足歩行の魔物の群れに襲われたって人がいて。
それで見つけた。」
「そうなんだ。...おかわりもらっていいかな。」
そう言って私が器を渡すと、彼はそれを受け取ってスープを注いだ。
食べる。美味しい。
そうしていると、ふと背後に気配を感じた。
私が後ろを見ると、そこには大きなクマがいた。
クマは両腕を少し上に上げて、ギャアというような声を出す。
私は目を見開いて、炎の球を左手の平に出す。
「待て!」
その瞬間、怪人ウサギ男は強い声色で言った。
^ivi^[ネコニス'sTips]
この小麦色でつぶつぶのソース、クルミソースですね!
粉々に砕いたクルミと油を混ぜて作るやつ!あれ私大好きです。もう一度食べたいな...




