1-9 処刑台に変わるベッド
「起きてくださーい!」
「ん...(集合時間まで)あと何分?」
異常に眠い。
「2時間ですね」
「じゃあまだ大丈夫...」
「...」
「あと1時間になったら起きるよ」
「じゃあ私ちょっと散歩してきますね...」
持っていくときにキューブが同士がぶつかったのかチャリンと音が鳴る。
扉が開く音がする。
「ステラちゃん起きてー!あと1時間!」
「...」
「ステラちゃん、手からこっちに風吹かせてみて」
柔らかい指が私の手を握る。
私は風を手から吹かせる。
魔法を発動させるためその一瞬だけ脳みそが目覚めたが、直後また強烈な眠気に襲われた。
「...ぐう」
「ステラちゃん...私...先に行くからね、絶対来てね。後1時間だからね。」
そういってまた扉が開く音がした。
それからまた扉が開く音がした。
親切にもまた起こしに来てくれたのか...
もう30分ぐらいかな、もう起きよう。
そう言って起き上がろうとした瞬間、ぐちゃっとした手が体全体に触れた。
そこで私の意識は途絶えた。
音が聞こえる。
たくさんの音が目まぐるしく聞こえる。
吸い込まれるように、連続して。
悦ぶような囁き声だった。
「私がたっぷり...愛してあげる」
小さな音になる。
「私がたああああああああああああっぷり...愛してあげる」
大きな音がする。
「ふふふふふふはははははは!」
土が踏みしめられたみたいにジャリって鳴く。
「うっ...なぜ...」
草が揺れる音がする。
鈍い音がする。
「ご苦労でした。これは...」
「...様!こんなところに...」
草が揺れる音がする
「お嬢さん、こんなところでどうしたんだい?大丈夫かい?」
金属がぶつかる音がする。
草が揺れる音がする。
「あたたかい...」
「わあっ...」
目の前が赤い。
目の前があたたかい。
「だめだ」
「でも」
「こわい...こわい...」
「くらい...」
「ここはどこ?」
「...はっ!?」
目が覚める。
その途端に、がやがやと大勢の人の声が聞こえてくる。
強烈な吐き気に襲われて、私は何かを吐き出した。
石の床の上で、赤黒くネチョネチョとしたそれが蠢いている。
「まずっ...ぺっ.......」
口の中の何かをできるだけ吐き出す。
落ち着いてもう一度目の前を見ると、私の両手には手錠がついていた。
起き上がろうとするとガシャンと音が鳴るだけで、体の動きは止まってしまう。
何故だか起き上がれない。
「どこだここ...」
それでも動きはする程のゆとりのある穴で助かった。首を回して自身の真上を見ると、大きな刃が吊り下げられていた。
そして、遠くにはたくさんの人が座る観客席のようなものが広がっている。
...私はここがどこか、分かった気がする。
数多のローネ小説で出てきて、何度も情景を想像した円形闘技場そっくりなこの場所。
私はその中央で、手錠をつけられ頭の動かない状態でいる。
その上には、大きな斜めの刃物。
私が今居るのは、処刑台だ。
...なんで私はこんなパジャマ姿で処刑台にかけられているんだろう。
今日は卒業式、学院に通う最後の日なのに、このままでは遅刻してしまう...!
^ivi^[ネコニス'sTips]
ローネ小説とは、パローナツにおける古今東西の伝承と、それを元にした童話や大衆小説を年代問わずまとめて指して呼ぶ言葉のようです!
また、荒唐無稽な話を揶揄したり、ありえないような出来事に遭遇して驚いた際に「ローネ小説を読まされた」という文言が慣用句的に使われることもあるようです!




