1-7 夕暮れの教室で思いだす
私たちは1年の教室にやってきていた。
時間は夕暮れ。オレンジ色の日の光が窓から入ってくる。
「懐かしい...。2年ぶり、でしょうか。」
「たまに用事で来たりしたかもしれないけど、ちゃんと見るのはそれくらいかも。」
空っぽの教室を見たことで、私はあることを思い出した。
「覚えてる?最初の頃、この教室で...」
「火を消しあったこと?」
「そうそう!」
「火を消し合う...?」
「私たち、最初仲悪かったんですよー。お互い負けず嫌いだったから-」
私が着火魔法で火をつけて、それをルカが氷泥魔法で消して、ルカの炎泥魔法を私が風魔法で吹き飛ばして...
そんなことをやっていた。
「ちょうどこんな夕暮れで、教室も私たち2人だけだったよね。」
「そうですねー。」
「それって...なんだかロマンチックですね!」
メルネが眼鏡越しの目を輝かせる。
「ロマンチック...?」
「私もそう思いますー。...メルネちゃん、わかってますね!」ルカがそう言う。
「そうかな...そうかも...?」
ふと後ろを見ると、ポルテナは一言も発さず、なんともいえない「無」という感じの表情をして、ソフトクリームを舐めていた。
これはルカが、後で食べるために隠し持っていたという予備のソフトクリームのうち一つを彼女に渡したのだった。
「あとはステラちゃんは居眠りばっかりしてて、よく私が起こしてたよねぇー」
「そうだったんですか!?」
「...そうだっけ?」
「そうですよー。」
「うーん...」
思い出してみる。
この教室で、最初の授業。
「...魔法は拡魔の箱を通して詠唱することで初めて使うことができます。
そして一人の人間が生涯扱うことのできるキューブは1種類だけ。
つまり、我々魔法使いは何年鍛錬を積み知識を蓄えようとも、使うことのできる魔法は1人1種類だけなのです。
ですから、これからあなた達は自身の持つ魔法を使いこなし、応用することが-
ステラさん、聞いていますか?」
水音が聞こえる。
真っ暗の中、冷たい床。
幼い私は歩いている。
焚き火の音。
焦げるような匂いがする。
そして、炎が見えた。
「シスター・ステラシュキ、何をしているのですか?」
「ああ、ステラ。お肉を焼いていたんですよ。」
「お肉...ですか?...でも、」
「内緒ですよ。たまにはこれくらいしたって、いいじゃないですか。
...ステラも食べますか?おいしいですよ?」
焚き火の周りには布切れが散らばっていた。
「...ん...テラ...ん!...ステラちゃん!!!」
「はっ!?」
「大丈夫!?」
ルカが私の肩を強く掴んで、こちらを鬼気迫るような眼差しで見ていた。
「ああ、うん...!大丈夫!」
「ステラ先輩、何回かボルカニア先輩が話しかけても上の空で...」
「いや、ちょっと思い出しすぎちゃっただけだから!大丈夫。」
後ろを見ると、今度は教室の床がソフトクリームを食べていた。
「あっ、そうだ!2人とも、何か欲しいものとかある?もう夕方だし、そんなに大きなものは用意できないかもしれないけど!...」
ちょっとその場が静かになる。
「なら...先輩のリボンが欲しいです」
「どうぞどうぞ、あげるあげる!」
私は髪を結んでいた赤いリボンを解いてメルネの髪を結ぶ。
「それじゃあポルテナは-」
「それと...」
「えっ...?」
メルネは窓際の机に近づき、ポンと手をおく。
「この席に、座ってください。」
「え...うん!」
私はその席に座る。
「ここ...私の席なんです。」
「そうなんだ...」
「メルネちゃん...来年はまた別の教室になると思うんですが、いいんですか?」
そうルカが言う。
「いいんです!私が座っていた椅子に、先輩が座ったという事実さえあれば...!」
「?」
「ポルテナちゃんは何か欲しいものとかありますか?」
「...ソフトクリーム」




