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4-1 紅潮 / 蒼白

野営中。


私は鼓動がどくんどくん脈打つのを抑えながら、切り出した。


「あの...さ」


「何?」


「カイル、私、カイルのこと...スキダヨ」

最後、小声になった。


「何?なんて?」


「だから、その...カイルのこと...」


沈黙。


(言えない...勇気が出ない...)


「大丈夫か?」


「大丈夫、大丈夫だから!

大丈夫、大丈夫」


するとカイルは近づいてきて、おでこに手を置いた。

「っ!?」


「熱、ある?よくわかんないな...」


カイルは憂うような目で見てきた。


「いいから元の場所に戻りなって!」


カイルを追い返した。


「すー、はーー、すううう、はーー」

私は深呼吸を試みた。


「本当に大丈夫?」


(そうだ、何も別に、直接『好き』って言葉を使って告白しなくてもいいんだ)


「カイル、私...カイルとずっと一緒に...ご飯食べてたいな」


「...食いしん坊?」

カイルはふふっと笑って言った。


「そんなんじゃないから!

失礼だよ!?」


(もう...鈍感なんだから...やっぱり直接的に言わないとダメか...)


息を大きく吸って-


「私...!!カイルのこと...!!!」

大声で言った。


「うん?」


「カイルのこと...好き!!!です!!!」


ステラは黙って彼を見つめた。


すると彼は一瞬まばたきをした後、微かに笑いながら言った。


「何を改まって。

俺もステラのこと好きだよ」


「...?」

告白、成功した?


...


いや、これは...


「旅とかしてみたいな〜とかってさ、本当はみんな思ってると思うんだよ。

でもさ、ステラみたいに本当に旅しちゃおう!ってやっちゃえる人って、なかなかいなくって。


だから俺、ステラのこと、本当に尊敬してる」


「...」


私は目を瞑って、ふうーっと長い息を吐いた。


違う。

そうじゃない。

私が欲しいのは尊敬や、友情じゃない。

いや、友情は必要だ。彼の旅の仲間...相棒として通じ合っていることの幸福感。


それはもちろん必要だ。

だけど、それはもう手に入れている。気がつくと自然に感じ取っていたものだった。


今、特別欲しいものではない。


私が欲しいのは...


「私、カイルのこと好きだよ」


「...」


「私、カイルのこと...


ううん。ごめん。

思い出話っていうか、身の上話っていうか...していいかな?」


「何?」


「私、ウェステリア魔法女学院に入る前は孤児院にいたんだ。

孤児院では魔法のせいで怖がられてて...

魔法使いの適性があっても、本来ならキューブを持っていなきゃ魔法は使えたりしない。

だから魔法を使う子なんか当然いなかった。


故郷がどこかもわからない、両親の顔も思い出せない。

私は何者なんだろうって、不安だった。


でも楽しかった。魔法があったから。


その後魔法の才能を見込まれてベイカー家に引き取られた...と言っても、法律上戸籍と姓名をもらっただけ。

別に、家族に入れてもらったわけじゃない。

そりゃ当然、もう既にいる家族の中に私が割って入っていくだなんて、そんなのいやだから。

納得はしてるけどさ。


孤児が魔法の才能を見込まれてウェステリア魔法女学院に入学させてもらってって...

感謝してるし、それってすごく恵まれてると思うけど...


幸せじゃなかったんだ。わがままなことに。

びっくりでしょ?


そんな感じでも、なんだかんだ楽しくやってたつもりだった。

ウェステリア魔法女学院に入って、ルカ...それにみんなのおかげで実際楽しく過ごせてた。


卒業した後も、私はパローナツ中を旅するんだって目的があったから、楽しくはあったんだ。

幸せだったんだ。


でもね...実はさあ、ずっと気にしてたんだよね。


怯えてたんだ。また1人になるのかって。

かと言って、危険な旅は1人でする他ない。

それでも私にとっては誰かと仲良くどこかにいるより、1人きりでも旅をする方が一番だったんだ。


私が一番大好きなのは、私を一番幸せにしてくれるのは、この世の誰でもない。

まだ見たことのない土地を夢見ることだった。そう、旅をすることだった。


ワクワクして。楽しみで。それは今だってそう。

そのことは全く嘘じゃない。私の本音。


なのに、それなのに、寂しかったんだ。結局。


処刑されそうになった時、私には目的があるから、そのために生きていくんだって覚悟して、啖呵を切ったけど。

それでも結局は寂しかったんだ。


一番大好きなことをやっても、私の心は完全には幸せになれなかったんだ。

矛盾してるし、ぐちゃぐちゃだよね。


...なんてさ、言うのはちょっと早とちりなのかも知れない。

本当は、このパローナツの全てを見尽くしたら、その時私は寂しいなんて思わなくなって、幸せになれるのかもしれない。


もしかしたら、ね...。


でもね...それはいつの間にかなくなってたんだ。

寂しくなんてなくなってたんだ。


それはなんでだと思う?」


「...なんでなんだ?」


「私を寂しくなくしてくれたのはカイル...キミだよ。」


「...」


「気がついたんだ。

ベルのアイドル衣装の発注でキミがエルツの町へ行っていた時。

1ヶ月の間、私は久しぶりに寂しいって思ったんだ。


ずっと寂しいって思ってたはずだったのに、キミと出会ってからそれがなくなってたんだって、気づかされた。


カイル、私...カイルのことが好き。

もちろん人間として尊敬してる、仲間として大好きで、すごく信頼してる。

でもそれだけじゃなくて。


私、カイルを恋人にしたい...いや、恋人にする!!」


「...」


「カイルも、孤児...なんだよね」


「...ああ」


「私、パローナツを全部回ったら最後は、キミの故郷...リギモル村に行きたい。


そこで、私と...」


意を決して言った。


「私と、家族になってくれませんか」


...


ステラは内情を吐露し、愛を告白した。


...


しかし


...


カイル・リギモルにとってそれは、残酷な告白だった。


紅潮する星と蒼白になる兎。

2人の過去の体験。かつて過ごした環境。そして辿ってきた歴史。


2人は一見まるっきり違って見えるが、実は似ている


.........ように見えて、実はまるっきり違っていた。

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