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3-48 後夜祭③

ちょっと長め(他のお話の2話分)です。

「...それに答えたらどうなるの?」

警戒する私。


ケンタウロス・ノーザレアス・バンブーは語り出した。

「...金髪の人間は今世界中探しても、ごくわずかしかいない。


個人で差異はあるが、大きく分けるとほとんどの人間が茶色系統の髪色をしてるだろう。


次に多いのが白系統黒系統。

完全な純白や漆黒はおらず、灰色...銀髪や、わずかに色味がかった髪色。

一見真っ白に見えたとしても、近くで見れば極限まで薄まった薄橙色だとわかる。

ここまでは多い方だ。


そして、少数の貴族や代々騎士の家系、武家なんかにだけ見られる真紅の髪。

これも少ないが、世界的に見て相対的に少ないだけだ。


だが金髪はその比じゃない。

星の加護を受けた"黄金の髪"の人間は片手の指で数えられるくらいしかいない。」


「...それで、何が言いたいの?」

緊張感に襲われながら、私は訊いた。


「黄金の髪とともに生まれた人間は皆、使命を背負っている。

昔から王都の中枢にいた人間にとっては常識だった。

だから本来ならこんなのどかな田舎町にはいちゃいけない存在なんだ。」


そう言って騎士団長はベルの方を向いた。

私は焦って言った。


「ベルはッ-」

「生まれつき金髪だと、既に本人に話は聞いた。」


その言葉を聞くと、私は勢い余って掴みかかって、殴りかかる寸前だった。

「だから私の代わりにS級指名手配犯として連行するって?

ちょうどよく金髪がいたからって?」


すると騎士は動じずに言った。


「...その使命が彼女にとっての使命は"アイドル"だった、そういうことだろう。

それがわかった。


だから連行しないことに決めた。


王国騎士団団長の権限をもってだ。」


騎士のその言葉に強い意思が宿っているのが感じられた。

私は掴みかかっていた手を離した。


「彼女...あのベルと同じように、ステラ・ベイカー、あんたにもあんた自身が果たすと決めた大事な使命が...いや、"夢"があるんだろう。それがわかった。」

そう言って、王国騎士団長は素早く去っていった。


ーーー


カイルにシチューを受け取ると、1人の王国騎士団員が言った。

「久しぶりだな」


「...ほい大盛り一丁!」

カイルはホワイトシチューをドバドバと器に盛っていく。


「マジなのかよ、ゴーシュ殺したって」


「実はよお...その質問今日で19回目」


「なあ、おいおまえ、マジなのかよ」


「おお、なあ、どう思う、おい、どう思う、おれがあいつを殺したように見えるか?」


「可能、ではあるだろうな。...だが、殺していない、それがわかった。」


そう言うと、少し間を置いて2人は笑った。


「ちょっとここ任せていいか?」

カイルは兵士におたまを渡して走って行った。


「えっ、ちょ、おい待てよ!」


...


カイルはまず衛生兵のところへ訪れた。


「カイル...!!

急に団やめていなくなって、私...みんな心配して...!」


「ああああああ、うん、リュートいる?リュート・カムラ」


「えっ、いないけど...」


「一度も来てない?」


「うん」


それを聞くとカイルは走り出した。

冷や汗を垂らした。


コチジーヴァルを倒してベルのライブが終わった時。

気絶したリュートを寝かしておいた場所へすぐに向かったが、そこにはもう彼はいなかった。

目覚めて自分で治療を受けに向かったものだと安心していたが、そうではなかったようだ。


森の中を走った。

誘拐された?殺された?魔物に食べられた?

周りの木々たちが視界を抜けていくとともに最悪の状況が頭の中を掠めていく。


「カイル」


既知の声がした。止まって振り返る。

視界がぼやけていてもわかる。リュートだった。


安心した。息切れしながら言った。

「よかった、衛生兵いるんだから治療行けよ...!」


「ああ、もう大丈夫だよ、これくらい」


「大丈夫じゃないだろ、ほら行くぞ」

そう言って肩を貸した。


そのまま衛生兵がいる場所まで歩いていく。


今も腹部は真っ赤ではあったが、布が赤黒く染まっているだけで、血が流れてはいない。

騎士団の制服を破って巻いて止血していたようだ。


「あと、怪物は倒したぞ、暴れてた魔物が自分で怪我してたりもしたけど、人間の怪我人はお前1人だけだ。」


少し、長い間。


「...それはすごいね」


そして賑わう後夜祭の会場を見てリュートは言った。


「本当に、運がいいよね。」


「突然現れたあんな化け物を行き当たりばったりの荒唐無稽な作戦で倒せて、しかもあんな状況で怪我人はゼロ。

魔物も傷つけずに無力化するなんて...まるで物語の主人公みたいだよね、カイルは。」


「なんでだ、それを言う相手は俺じゃないだろ。

言うならステ-」


そう言いかけて、やめた。


「ベルじゃないか。今日の主役は。」


「でも僕はそう思ったんだよ」


少し無言で歩く。

カイルが口を開いた。


「...運が良かったわけじゃない。」


「...」


「魔物を雨合羽で包むことにしステラ、勇気を持って歌い続けたベル。

そんなベルに最後まで協力することを決めた係員、観客たち。それに、騎士団のみんな...

みんなが最善を尽くしたからこうなった。


運が良かった?むしろ悪かっただろ。

急に魔物が暴走して、それを治した途端に、なんかでかい魔物ですらない化け物がきて...

どう考えたってそんなの運が悪いだろ。


でもみんながベルのライブを成功させたいって思ってて、そのために行動したからこうなった。

運よくたまたまうまくいったんじゃない、必然的にそうなった...そう()()んだよ。」


「...」


「...僕にはできないよ、そんなの。

それにそんなに調子良くうまくいかせられたら、いつか絶対痛い目見るに決まってる」


どこまでもネガティブなリュートの言葉を聞いて、カイルは妙な小芝居を始めた。

「...あ!王国騎士団がいて助かったなあー!

でも、あれえ?なんで王国騎士団があんなにいたんだっけぇー?


どこかの門の衛兵が、S級指名手配犯を目撃してチクったのかなあ???」


「...ごめん」


「違う違う違うって!助かったんだよ!!人員がたくさんいてさ!!!」


カイルは言った。


「それにさ、俺もごめん。


リュートお前さっき怪我人ゼロって言っただろ?

本当にそうだったら良かったんだけどな。」


「えっ?」


お前をこんな大怪我させちまった。だから、ごめん」


「.........」


沈黙のまま、歩いた。


しばらくして。


「もう大丈夫、ここからは自分でいけるよ」


「いや、1人で行かせたら絶対行かないだろ」


リュートは目線を逸らした。


「ほら、絶対行かないだろ!行くぞ!!!」


そして衛生兵のところへやってきた。

リュートはまるで今から処刑でもされるかのような青い顔をしていたが、除菌して包帯を幕だけで、無事に治療は終わった。


それから少し3人で思い出話をしていたが、シチュー番を任せきりだったことを思い出してすぐに向かった。

シチューの元へ戻ると、シチュー番は何故かアズカットが交代していた。

アズカットはとても素早く正確にシチューを注いでおり、凄まじい回転率だった。

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