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3-30 土色の伝言②

アズアズは手紙を声に出して読み始めた。

私も隣に来て、改めて手紙を見た。


「ええと...


『この手紙をお読みになっているあなたへ。

突然倒れてしまい、ご心配をおかけ致します。


事情と致しましては、メルネ様からご教授いただいた筋力修練...通称"筋とれ"にハマってしまい、休息しないと意味がないとメルネ様に教わっていたのにもかかわらず、連日夜更かしをして筋とれを続けてしまいました。


それにより疲労が蓄積してしまった為、ライブの準備が完璧になった段階を見計らって、倒れさせていただきました。」


「待って!」


「何?」


「カイルが、メルネに教わった筋力修練にハマって、夜通しし続けてたってこと...」


「そうみたいね。でも、メルネから休息しないと意味ないって言われてたみたいだし、メルネを責めるのは間違いよ」


「う...ん...メルネから教わった筋力修練を...カイルは...夜通しやめられなくて...はあ...!はあ...!」

私は締め付けられるような感覚の胸を抑え、息を絞り出した。


「な、何!?」


「苦しくて...きゅっとするんだよ、胸が...はあ...」


「なんで傷ついてるのよ!?というかさっき読んでたじゃない。」


「いや、あの時はそれどころじゃなかったから、大体の内容しか把握できなかったんだ。

この手紙を読んでからも、まだほんの少しだけ不安だった。カイルが死んじゃうんじゃないかって。


だけど、今度こそ不安じゃなくなった。アズアズが言ってくれたから。」


「えっ...?」


私は笑いかけた。

「覚えてない?言ってくれたじゃん。色々。」


「...?」

アズアズはわからない様子だった。


私は今にも笑い出してしまいそうだったので、目を瞑って、三歩歩いた。

「じゃあ、ええと...」


そして目を開けて、ぼそりと呟いた。

「...女神みたいな人って」


「.........えっ...あっ、それはっ!ち、違くて、言葉の綾で...!」


「そんなふうに思ってたんだ。私のこと」

私はにやついた。


赤くなってあたふたするアズカット・デレクタ。


「ありがとね。」

私は彼女を抱きしめた。


「そういう言葉っ面じゃなく、ちゃんと伝わったよ」


「手紙の続き読むから...!」

そう言って、アズアズは手で私を押し除けた。


「つ、続きは、え、ええと...ひ!

『昼の休憩時間までに、できるだけ仕事は終わらせていると思います。

その時ステラ様—」


「ステラ"様"、だって!!!」


私はつい、うきうきで言った。


「...」

アズカット・デレクタは冷たい顔をしたあと、無視して続けた。


「『ステラ様かベル様からライブの準備が全て完了している旨を聞けた段階で倒れ、昼食に呼びに来たグルーさんに運んでいただく予定です。グルーさんには事情を伝えて既にお願いしてあります。


最後に、私が寝ている近くにテレポートの手鏡を置いておいてください。

明日の昼前に目覚める予定なので、手鏡を通してライブはばっちり見させていただきます。

接続する手鏡を現地のいい感じの位置においておいてくれるととても嬉しいです。


リギモル』」


アズアズは手紙を読み終えた。


「...用意周到ね。引くくらい」


「...うん。これを見て安心したと言うか、なんかバカバカしくなったというか...。


「それに何なの、この言葉遣いは?

普段のカイルと違いすぎる。


気持ち悪い。

奇妙だわ、まるで別人が書いたみたい。

熱でもあるんじゃ...いや、なかったんだった。」


とりあえず、カイルが起きたらこの手紙声に出して読んでほしいな

「カイルに『ステラ様』って言ってほしい。」


「それいいわね。私も聴きたい。」


「ふ、二人とも、お昼ごはんですよ」


突如声がした。


声の方を向くと、ベルがいた。

既に牧場の服に着替えていて、吟遊詩人の服ではなかった。


「あれ、ベルいつ帰って...」


「それは...ええと」

ベルはやけにもじもじしていた。


「?」


「わ、私がちょうど帰ってきた時、お姉ちゃんとアズアズさんが抱き合ってて、それはいつものことだと思ったんですけど、

でもなんか様子がおかしくて...

その...アズアズさんの顔がすごく真っ赤だったから、なんかいけないところ見ちゃったなと思って...はあ...はあ...っ!

だからあ...気付かれないようにこっそり通り抜けたんで...す!」

ベルは興奮気味に、苦しそうに胸を押さえながら言った。


「お姉ちゃん、カイルさんが好きって言ってたのに!...不倫は、良くないです!」


「.........」


「.........ごはんが冷めちゃわないうちに行きましょう」

アズアズはさらりと言った。


「そうだね」

私もそう言って、駆け足気味に昼食へ向かった。


「えっ、ま、待って!」

準備メモ ライブ前日!!!!

進行度:100%/100%

会場→アズカットが土地の許可取得済、設営も完了 25%/25%

歌と演出決め→通し練習はばっちり!準備は万全! 25%/25%

衣装→完成!着た状態で歌も歌った! 25%/25%

告知→告知完了! 10%/15%

最終通し練習→10%/10%


筋力修練、歌唱修練、本番を想定した通し練習は定期的に継続して行う。

↑バッチリです!あとはたくさんご飯を食べて、森をお散歩して、ぐっすり眠って、健康に過ごすだけ!@-@


記入者:アズカット・デレクタ、ベル・ロスヒハト、ステラ・ベイカー、メルネ・フロウデン@-@

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