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失われた週末

 以前、富山県に旅行に行った際、『高志(こし)の国 文学館』に行った。越中守であった大伴家持から富山県ゆかりの漫画家、二人の藤子不二雄、宮本輝をはじめとした小説家の紹介・展示があった。芸術家のほかに富山出身やゆかりの著名人の紹介もあり、その中に安田善次郎があった。銀行や保険会社を建てた財閥の祖だ。叙爵こそならなかったものの、かなりの大物。そして小野洋子の曽祖父。この人も富山県の出身だったんだ、と思った。

 先日、良人が配信サービスで最近入った映画の一覧から『ジョン・レノン 失われた週末』があり、一緒に観た。ジョン・レノンが妻の小野洋子と一時期別居していた時があって、それを「ロスト・ウィークエンド」、失われた週末と呼ぶ。小野洋子を漢字で書くと誰を指しているか解りづらい気がするので、ここからオノ・ヨーコと書く。ジョンとヨーコの別居の詳しい経緯についてはドキュメンタリー映画の『ジョン・レノン、ニューヨーク』で観た。ヨーコはニューヨーク、ジョンはロサンゼルスと北米の東と西に分かれた。ジョンには夫婦のパーソナルアシスタントのメイ・パンが付き添った。うん、まあ、ジョン・レノンの生涯を知る人は知っている。メイ・パンはヨーコ公認のジョンの愛人、と。メイ・パンが作者の写真集だが手記の『ジョン・レノン ロスト・ウィークエンド』は前からあった。(わたしは未読)

『ジョン・レノン 失われた週末』はメイ・パンの証言によるドキュメンタリー映画で、一見すると「ヨーコ、おっかない」と感じてしまう。メイ・パンからすると十歳年上のジョンの面倒を四六時中見ているうちに男性として見てしまうというのはある。時代的なものもあるのだろうけど、ジョンもなんだかなあ、と感じてしまう。ジョンにメイをあてがったことに対するヨーコへの批判は当然あり、それについてのセルフインタビューでヨーコは誤魔化すような答え方をしている。なんだかんだ言ってジョンとヨーコはよりを戻し、メイはジョンと連絡を取り合うも進展せずに後退一方、やがてジョンの訃報を聞くことになる。映画ではショーンの誕生やジョンの専業主夫ぶりに関して言及がない。わたしとしてはその辺のジョンの変化をどう思ったか知りたかった。

 ジョンの長男ジュリアン・レノンも映画に出てきて証言する。当時子どもだったジュリアンにしたら、どうしてお父さんの再婚相手がメイじゃないんだろうと感じておかしくない。現在でもジュリアンとメイの交流は続いていると映画で描かれる。

 メイからしたらジョンとの仲を裂かれたのはヨーコの所為となるのだろう。でも男女の仲に関して赤の他人の観客がどうこう言えないし、ヨーコを魔女のように決めつけたらジョンが尻に敷かれっぱなしの小さい男になり下がってしまう。

 本当のところジョンは自分に関わった女性たちをどう思っていたのだろうかと知りたいが、当人はとっくに亡くなって確かめる(すべ)はない。ヨーコ自身だって若い女性にジョンが本気になったらどうしようかと少しも考えなかった訳がないだろうが、ご本人はプライドからそんなことは認めないだろうし、今は認知症で語れないだろう。

 だからわたしは勝手に想像する。ヨーコには東洋的な正妻とか正室とかが妾を選んで夫の性生活を管理するといった考えがあったのかしら? と。四大財閥の一つの安田家の血を引き、学習院でずっと学んできたヨーコは、同級生の中に父親が芸妓の後援をしているとか、妾を持っているとか話を聞いたことがあるのかも知れない。中国系のメイなら東洋的な妾とか第二夫人を理解できると考えたのだとしたらまったくもって失礼なのだが。

 メイ・パンの立場からしたらこうなるよなあとしか言えない映画だ。わたしはメイ・パンの心情よりジュリアンの気持ちにより感情移入してしまった。父と母が離婚して、父が別の女性と結婚し、別居したかと思えば違う若い女性が側にいて、再婚相手のヨーコよりずっと優しくしてくれたとなったら慕うようになるだろう。ジョンの最初の妻でジュリアンの実母のシンシア・パウエルとメイが仲が良かったというのもまた不思議で面白い話だ。

 ビートルズやジョン・レノンの音楽は聞くが、熱心ではない身にしてみれば、ジョン・レノンの人柄に関してとやかく言っても仕方がない。昔の旅行で立ち寄った(宿泊したのではなく、立ち寄った)軽井沢の万平ホテルでジョン・レノン直伝のロイヤルミルクティーは美味しかったなあ、と回想するのみ。

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