侍タイムスリッパー、面白かった。
映画紹介のYouTubeで紹介された『侍タイムスリッパー』、面白そうだけど、あんまり上映館がないとも言っていた、宮城県ではどうなのかなあ、と検索してみたら、その時点では東京と神奈川と京都だけの上映で、こりゃ観られそうもないなあと諦めていた。九月の連休、どこに遊びに行くかで良人と調べていたら、映画館の上映予定の作品に『侍タイムスリッパー』があった。
「これ観たいです。観たいです!」
と良人に言って、連休時からズレてしまったが、無事に鑑賞できた。
幕末の京都で、会津若松藩の侍が長州藩の侍を討とうとしたところ、突然雨が降り、落雷が! 気が付くと夜が明けており、どうも様子がおかしい。若い娘に絡む侍がいるので止めに入ろうとすると、別の侍が止めに入る。ああ、良かったと思っていると、また同じく繰り返しで絡むので、「助太刀いたす」と割り込んでいくと、「カット! カット!」と見慣れぬ服装の男性が怒る。「こんな台詞の変更あった?」、「ありません」、「ほかの撮影が向こうに来ているから間違えたんじゃないですか?」
現代人の目からすると時代劇の撮影のリハーサルと本番だろうと解るけど、タイムスリップしてきたお侍さんには解らない。
向こうと言われても勝手が解らず歩いていると、時代劇のオープンセットと隣り合わせの現代の建物、大道具の模造の石の置物をひょいと持ち上げる女性スタッフに驚き、待機中の怪談のゾンビメイクの俳優に仰天してセットの足場に頭をぶつけてしまう。気絶したお侍さん、高坂新左衛門は病院に担ぎ込まれるものの、目を覚まして抜け出す。京都の街をさまよい、「徳川幕府が終わって140年」なんてイベントのポスターを見付けて、更にショックを受ける。長州藩の侍を討とうとした場所らしい所にたどり着き、雨が降り出し、雷が鳴るのを聞いて刀を抜き、「帰せ、戻せ」と叫ぶものの、何も変わらない。
木の根方にうずくまるように眠っているのをそこのお寺の住職さんに発見されて、高坂新左衛門は保護される。迷子になった時代劇のエキストラと勘違いされて(状況的にそうよね)、よく撮影に協力しているからと知り合いの時代劇助監督の優子を呼び出す。
ここまでの流れが丁寧に描かれ、タイムスリップものあるあるなギャグを出しながら、全く知らない世界に一人投げ出された人間の苦しさが表される。記憶がない、身元が解らない人間として、高坂新左衛門は現代日本で生きていく。時代劇の斬られ役になって。
保護してくれたお寺で住職夫妻の世話になり、寺男をこなしながら、これしか取り柄がないとチャンバラの斬られ役に志願して、殺陣師の関本さんに弟子入りし、活躍していく。
映画には時代劇、チャンバラものへの愛が溢れる。
監督・脚本の安田淳一、初めて知ったが、エンドロールで、そのほか、撮影、編集、音声、現代衣装など、いろんな所に名前が入っていた。おまけに劇中の助監督でヒロインの優子も実際に映画の助監督だとか。(自主制作映画だそうで、その所為かエンドロールが短い)
ただいま公開中、地方によってはこれから上映の場所も。タイムスリップ、異世界転移には飽きた方々もおいでだろうが、入場チケット代以上の価値はあると思う。




