考えなくていい
六月に『関心領域』を観に行って、精神的にどんよりとしてしまったことは先に書いた。小説にしろ映画にしろ、主題についてあれこれと思いを馳せる内容もあれば、ああ面白かったと素直に喜ぶ内容もある。
良人が配信チャンネルで何か観ようかと誘ってくれた時、わたしは『SISU/シス 不死身の男』があったからそれを観たいと言った。どんな映画? と訊かれた。年配の男性が斧だかツルハシだか一本でナチスの軍隊をボコボコにする映画とは耳にしていたが、ひとまず「おバカアクション」と答えた。映画が始まってやっとこれはフィンランドが舞台と知った。暴力や残酷な場面がお嫌いな方にはお勧めしないが、男性主人公が無双する話と表現して間違いはない。第二次大戦中のフィンランドで、翻訳不可能なフィンランド語で「SISU」を体現する男性アアタミが逃走中のナチスの軍隊と遭遇し、掘り当てた金塊を奪われそうになって死闘が始まる。ナイフでグサリの瞬殺や鉄板を使って銃弾を弾くのはまだ序の口で、地雷原での対決では地雷を手榴弾のようにぶん投げるは、川では水に潜って追って飛び込んできたナチス兵から空気を得るは、そこまで徹底して敵を倒し、生き延びる強い意志で動いている。ロープを首に回され吊られても死なないし……。極めつけはツルハシを飛行機にぶっ刺して、手掛かりにして(飛行中の機内に)乗り込んでいく。おじいちゃん強いし、よく死ななかったね、と感嘆してしまう。ナチス兵たちに捕まえられていた女性たちもおじいちゃんことアアタミに協力して、逞しい。
憎々しいナチス兵たちが次から次へと倒されていけば、観ている方はざまあみろ的な気分になる。外国語が解らなくても伝わってくる。(日本語吹き替えで観たけれど、台詞は極端に少ない映画だった)他所の国の映画で日本兵がボコボコにされる作品もあるんだろうな、と頭の片隅に浮かんだが、おおむね細かいことを気にせず楽しめた。『関心領域』を観たなら配信チャンネルで『ヒトラーのための虐殺会議』も観るべきだとネットで見掛けたが、二連発は流石にキツイ。ひとまず『SISU』の鑑賞に留めた。




