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リミッターの外れちゃった人たち

『春画先生』を夫婦で観に行った。春画を無修正で映すくらいしか前知識はなく、江戸文化を春画を通して語る内容なのかな? なんて程度の気持ちだった。

 まあ、観て驚いた。

 こっちは年齢が年齢だから無修正で画面に出ようが、そうそう動揺もないし、安心してください。大画面に静止画で、穴が開くほど見詰めるくらいの長時間映ってるわけないですから!

 自分の人生面白いことなんて起こるはずないと思い込んでいた春野弓子は喫茶店の店員だ。突然警報音が鳴り響き、店が揺れ始める。トレイを持って店内に立つ弓子はそのまま踏ん張って直立し続ける。目に入ったのがテーブルに広げられた春画。そのテーブルに座る男性は「春画は劣情を煽る為だけのものだと思っていませんか?」などと言いつつ、部分部分を隠したり出したりしつつ、春画について知りたければいらっしゃいと名刺を弓子に渡す。

 翌日、弓子は名刺にある住所に辿り着く。芳賀一郎という春画を研究する学者の家は大層立派で古色蒼然とした日本家屋。和装のお手伝いさんまで年季が入っている。弓子が来訪を告げると、芳賀は待ち兼ねたと言わんばかりに部屋に上げて、早速絵を取り出して解説を始める。

 結合部分に目が行きがちだが、それ以外の場所も見てごらん。描かれる二人の関係性、背景、また絵の技術、見る点は多々ある、などなど。

 もう無言のうちに弓子は芳賀の春画の弟子に決定されている。弓子は喫茶店の店員と芳賀家のお手伝いをしながら、芳賀に教えを乞う生活を過すことになる。

「春画とワインの夕べ」なんて催しに、弓子は芳賀の亡き妻のドレスを着て出席なんてするのだ。出席者から芳賀への不躾な質問に弓子が代わりに憤りもする。

 ある日、芳賀宅に一人の若い男がやって来て、弓子と二人で芳賀の代理でどっかの大学に赴くのを頼まれたから行こうと言う。その辻村という男は芳賀の担当編集者兼弟子、芳賀に『春画大全集』の執筆をさせる為に協力を惜しまぬ様子。辻村は妙に馴れ馴れしい。芳賀の若い頃や亡き妻とのことを話してくれるうち、弓子は釣り込まれ、はっと目覚めた朝、裸で辻村の部屋のベッドに寝ていた。

「先生の希望でもあるんだよ」

 こともなげに辻村は言う。

「先生はね、君の声を聞きたいって」

「……」

 妻を亡くしてから七年間女を()って、弓子と出会ったものの、自ら男女の仲にはならずに、なんでか辻村に手を出させて、その実況をスマートフォンで聞いたのだ。

「先生といるとリミッターが外れちゃうんだ」

 弓子はショックを受けて、芳賀宅に行かなくなるも、芳賀は弓子の勤める喫茶店に来て、

「君がいないと生きていけない」

 と憔悴しきった姿で告げる。

 弓子は再び、芳賀家のお手伝いさんで弟子の立場に戻る。

 芳賀と弓子、辻村で資料集めの旅に出たり、催しに出たり。

 ホームパーティ用の回転寿司のレーンみたいなのに、葛飾北斎の有名な海女と蛸の春画を乗っけてぐるぐる回るのを皆で鑑賞する催しがあり、そこに芳賀の亡き妻そっくりの女性が現れる。そっくりなのも当然で、亡き妻の双子の姉の一葉(いちは)と名乗る。弓子は不安に駆られはじめる。

 はっはっはっは。R15になるのもごもっともな内容で、登場人物の皆さん、見事にリミッターが外れていらっしゃる。知的な探求心と痴的な好奇心が暴走したようだ。弓子自身もスマートフォンを通話状態にして痴態を芳賀に聞かせるようになっちゃうし、辻村は辻村で弓子に手を出しながら、ホテルのフロントマン(男ですよ)も口説くし、大学の学生(男)にも粉掛けようとしているしで、性愛に関して性別にこだわっていなさそう。

 芳賀は芳賀で、学者たるものなんでも実践と思っているのかどうか、インテリに有りがちな妄想から高じて加虐被虐の趣味にまで達しちゃったんか? 春画の鑑賞者のような立ち位置が好きなのか?

 とにかく面白い映画だった。男性に教えられ、従わされているように見えて、実は鼻面引っ掴んで引きずり回すのは女側。どっちが主導権を握っているのか判りゃしない。

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