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すこしふしぎ、かなりふしぎ

 少し前、NHKで藤子・F・不二雄のSF短篇のドラマを放送していた。二男が興味を抱いたようだが、ドラマそのものはまだ観ていないらしい。連休時の山形の実家に行った際に父にその話をしたら、蔵書から藤子・F・不二雄のSF短編集を出してきて、二男に半ば強引に貸してよこした。二男が読んだのかどうか知らないが、まだ借りたまま我が家にあるので、わたしも拝借して読んだ。子どもの頃に読んだと懐かしい作品もあれば、初読かな? と感じる作品もありで、面白かった。

 先日、図書館で韓国の小説を借りて、ページを繰って目次で、ありゃ、この本SFだったか! と驚いた。青地の表紙に二つに割れた球体、その二つの中からそれぞれ女性らしい横向きの顔が描かれ口付けを交わしている。その下には後ろ姿で歩む二人の女性。てっきり『82年生まれ、キム・ジヨン』(チョ・ナムジュ 筑摩書房)や『ミカンの味』(チョ・ナムジュ 朝日新聞出版)のような現代小説だと思って『どれほど似ているか』(キム・ボヨン著 斎藤真理子訳 河出書房新社刊)借りたのだが、ありゃりゃのりゃ。

 読んでみるとなかなか不思議な味わいで面白かった。やはり先程挙げた『キム・ジヨン』や『ミカンの味』のようにフェミニズム、日本よりも苛酷な韓国の受験戦争が描かれている。人名や地名になじみがなくて一部解りにくいが、オチはそうなるのかと、膝を打ちたくなる。超能力者や宇宙航行、タイムトラベル、もしくは異世界といったテーマの作品があって、それぞれの味付けにしんみりしたり、皮肉を感じたりだ。

 キム・ボヨンの作品世界に「義体」、もしくは「合成身体」が出てくる。個人の人格データを人工の体に移せる技術が存在しているのだ。「赤ずきんのお嬢さん」ではその技術の所為で進学やら就職やら、そのほかでもより有利な条件を得ようと女性は女性の身体を捨て、世の中男性ばかりになった。そこへ独り歩きの女性がふらりとスーパーに現れて、男性たちの反応や如何に?

「どれほど似ているか」では宇宙船に搭載されているAIが義体に転送されるのだが、どうも乗組員の反応が攻撃的な者たちと理性的な者たちとに分かれる。AIには元々入力されていない要素、分析できない諸々の本能的なものがかれらの言動につながっているらしい。宇宙船の乗組員たちは土星の衛星に援助物資を届けなければならないのに、それが進められないでいる。義体を使うAIは見た目人間でもやっぱり機械。それなのに対する乗組員たちが人間扱いしたり、やっぱり機械じゃないかと言い捨てたり。読み終わって、藤子・F・不二雄の「イヤなイヤなイヤな奴」を連想した。展開も結末も違うけど。閉ざされた宇宙船での長期の航行は人間にとって不自然極まりない環境なのだろう。無重力空間って何をするにも大変そうだし。そして何より、コンピューターに人間の欲とか無意識のバイアスとか入力しないから(できないだろう)。

 科学的な不思議がたっぷりと詰まった冊一冊。

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