俳優さんの役柄の幅
五月の連休中に観た映画『最高の花婿 ファイナル』で、この女優さん、このシリーズ以外の映画でも見たことがある、なんだっけ? とプロフィールを見たら、フランス製の実写版『シティーハンター』で槙村香に相当する役をしていた人だった。
俳優が色んな役をしているを楽しむのもお芝居の醍醐味と申せましょう。
で、良人が録画していた映画を観ていた。家事をしたりなんだりしながら、わたしも脇でちょこちょこ目にしていた。平成ガメラ三部作の三作目。昔の映画なので、出演者を見て、若いだの、こんな役をしていたんだだの、ついつい二人で笑ってしまう。
そこへ長男がひょいと顔を出した。画面を見て、言った。
「これガメラの三作目? 中島なんとかって女優が怪獣の犠牲者になって、ミイラみたいになったんだって?」
「え? 出てた?」
「中島なんとかってミュージシャンの名前だよ。怪獣映画に出てたかなあ?」
「もしかして仲間由紀恵じゃない? この頃まだ新人なのかなあってわたし言ってたでしょ」
「ああ、そうだ仲間由紀恵だよ。『なか』しか合ってない」
疑問が解明されて、一同大笑い。
有名俳優の昔の映像を観るのもまた興がありますね。
三、四年ほど前、本屋の海外小説の棚に、フランスの小説家コレットの映画が公開されると小さなポスターが掲示されていた。主演はキーラ・ナイトレイ。
その時、わたしは、えっ! キーラ・ナイトレイがコレットの役をするの? と少なからず驚いた。わたしはコレットの若き日の写真を見たことがある。集英社新書の『万博とストリップ』(荒俣宏著)の中に、コレットはミュージックホールで踊っていたとある。その本に載せられているコレットの写真はステージのものではなくて、ハンモックに腰掛けている姿で、帽子にセーラータイプのワンピース、膝くらいまである三つ編みにふっくらと豊かな胸。本の中にはこうある。
「生の乳房を舞台であらわにした元祖は、すでに書いたように、のちの大作家のコレットだった。男優ジョルジュ・ウァグーと組んで『肉』というパントマイム・コントを演じた。彼女は当時フォリ・ベルジェールの中堅だったが、乳房が大きくて美しいことが自慢だった。」
キーラ・ナイトレイって女子サッカー選手の映画『ベッカムに恋して』で(遠目だけど)男の子に見間違われるくらいスレンダーな体型してたんじゃなかったっけ? 宣伝ポスターを見ても体型が大きく変わったようには見えないけど……。
写真などで容姿が伝わっている歴史上の人物を演じるのに顔がそっくりである必要がないのと同様、体型まで似ている必要はないのは同じなのだけど、いや、コレットって夫が原稿を取り上げて自分名義で出版するものだから、離婚後稼ぐために舞台に立ったとか聞いている。いーのだろーか、駆け出しだったモーリス・シュヴァリエが舞台でコレットの乳房を見て「地上でいちばん食べたくなるオッパイだ」と恋してしまったとかなんかスゴイ話が荒俣宏の本にもあるんだけど。
果たしてキーラ・ナイトレイ演じるガブリエル・コレットが舞台で肌も露わに踊るのか、わたしはいまだその映画を観ていない。そのうち、男性が「食べたくなる」と感じる胸なのか確かめる為、観るかも知れない。歌舞伎の女形が舞台に立てばオーラと芸の力でだんだん絶世の美女に見えてくるというように、きっと何か感じ取れるだろう。




