流行りものの温度差、個人差
わたしは昭和生まれで成長期もほぼ昭和で過して、昔はこうだったとかなんだとか思い返すことがあります。それだけ年取ったんだってものなんですけど、いやあそれは都会だけじゃないとか、地域によって個人によって違うわよとちと物言いたくなることもあります。十代後半の頃は所謂バブル景気時代でしたが、自分の居住地ではそんなに景気良くなかったよなあと感じていました。地価の高騰で地上げ屋が横行したとか、ボーナスの平均額幾らとか、別世界のニュースを聞いているようでした。バブル時期の就職活動も現在とはまるで違う話がたまにバラエティ番組で流されますけど、地方の女子短大生はそんなに楽々と内定をもらわなかったわよと溜息が出ます。
昔のラジオドラマの『君の名は』では放送時に(リスナーに女性が多かった為に)女湯が空になった伝説がありますが、それホントなの? と亡き祖母に尋ねたら、「(その時間帯は)空いているから風呂屋に行った」と答えました。祖母は『君の名は』にあんまり興味がなかったようです。小学校の宿題で戦時中の生活についておじいちゃんおばあちゃんに訊くという宿題で、祖母はなかなかユニークな話をしてくれて、ドラマとかドキュメンタリーで出てくるばかりが全てではないのだと知りました。
ま、実の祖父母との会話と言っても、思い出したくない、話したくないこともあるでしょうし、後々思い返すと盛ってたんじゃないかと思う内容もあります。おじいちゃんはなんでも真に受ける孫娘の反応を面白がってたんじゃないかなあと思う事柄もあるんですが、今となっては確認の仕様はありません。
亡き祖父は明治四十五年の生まれで、祖父には姉がいました。その姉、わたしにとって大伯母が女学生の時、と教えてくれたことがあります。大伯母が女学生の時となれば大正時代か昭和初期か。大伯母とそのお友だちが二人で長い髪を切って短髪にしたそうです。時代的にお洒落なモガね、と呼ぶべきなのでしょうが、祖父は自分の同級生たちから言われたそうです。
「おまえの姉ちゃん、頭に虱がたかったから髪を切ったのか?」
単なる悪ガキの言い合いなのか(年齢的にそうかも知れない)、祖父の与太なのか、それとも地方は都会とファッションの感覚が遅れていた証拠なのか、わたしには判断が付きません。
何事も画一的じゃないんでしょう。




