目覚めよ、声を上げよ、圧政打倒に拳を上げよ
映画『RRR』の題名は監督と主演の俳優二人の頭文字が全員”R”なので仮に付けられ、そのまま本タイトルとなり公開された。一応、インドで各地の言語や英語で”R”の付く単語で紹介しているとか。英語では”Rise”、”Roar”、”Revolt”での略となる。それぞれ「蜂起」、「咆哮」、「反乱」を意味する。
去年、『バーフバリ』のラージャマウリ監督がスケールの大きな映画を作っていると話を聞いて、日本で公開が始まったら映画館に行こうと決めていた。わたしに『バーフバリ』を教えてくれた長男にその話をして、長男も是非観たいと口にしていた。で、十一月にわたしと長男と興味が湧いた二男と三人で『RRR』を観に行った。
イギリスの植民地支配のインドで、森に暮らす部族の少女がイギリス人の総督府夫人から気に入られるとまるでおもちゃのように連れて行かれ、部族の若者ビームが少女を取り戻そうと森を出る。一方、イギリス人の監督下、警吏として働く男ラーマがいる。一見、関わり合いそうにない二人の男性だが、二人は運命的な出会いをする。
中華人民共和国を抜いて人口世界一となりつつあり、IT産業も興隆中のインド、群衆シーンもCGシーンも惜しみなく銀幕に映し出される。一人で群衆を制圧するラーマや森で狼や虎と戦うビームの姿など、有り得ない! と思いつつ手に汗握ってひたすら見守る。やがて橋に架かる線路で汽車の炎上があり、川の下に取り残された少年を助ける為、偶然居合わせたビームとラーマがアイコンタクトで通じ合い、アクロバティックな手法で少年を救出し、たたえあう。ビームとラーマに篤い友情が芽生える。しかし、二人とも他人には明かせぬ深い事情を抱えており、それは兄弟とも慕う相手にも話せない。
スコット総督夫妻の姪ジェニーと知り合い、ポーッとなるビーム。お互い言葉が通じないながらもなんとか意思の疎通を果たし、ラーマも応援する。ビームはのぼせながらも使命を忘れず、総督府の中を探り、マッリがいるのを突き止める。
ビームは捕獲した動物たちを総督府に放って混乱に乗じてマッリを奪い返そうとするが、ラーマは官憲であることを明かし、ビームに立ちはだかる。
あらすじを書いているだけでも大波乱の内容だし、銀幕に映し出される映像も一瞬たりとも気を抜けない。これでまだ第一部なのよ。
第二部になるとそれまで隠されていたラーマの過去が語られ、何故イギリス側の官憲として働いているか解ってくる。
映画のラストはこのままインドは独立を果たすんじゃないだろうかと思わせるほどの怒涛の勢い。イギリス人の総督夫妻は憎ったらしいし、それに連なるイギリス人たちも差別感情むきだしてインド人たちに対する。例外は姪っ子のジェニーで、現地の人や文化を理解しようとし、ビームに好意を示す。パーティに招待してくれたのも彼の女で、ナートゥダンスで盛り上がっちゃう。
『バーフバリ』でも英雄の登場で国が栄える「建国神話」みたいな映画だった。今回の『RRR』は独立を果たそうとイギリスに抵抗した人物たちをモデルとした架空の物語で、これもまた一種の「建国神話」を描こうとしている。過酷な歴史を経験すればするほど、乗り越えた記憶は伝説となり神話のように語り継がれる。座して幸運が巡ってくるのを待つのではなく、命を懸けて成果を握り取ろうと立ち向かったのだからそれを色褪せさせてはいけない。そう決意する後世の人間がいる。そんな映画なんだなあ。史実とは違うエンターテインメントだけど。
ジェニーに招待されたパーティでビームはイギリス人からダンスなんて踊れまいと意地悪をされる。ラーマはそこでナートゥを知っているかと切り返す。ビームとラーマは二人でナートゥを踊りはじめ、ジェニーやほかの女性たちもそれを見て真似をし始める。男性陣も負けじと加わり、ナートゥダンスの耐久レースのようになる。
五分くらいの場面だが、どれくらい時間を掛けて撮影したんだろう? と驚くくらいの素晴らしい、圧巻のシーン。YouTubeで何回か再生してみたが、わたしの頭では解らない。ただ影の長さや光線の加減から、時間が掛かっているのは解る。後から、長男からナートゥの場面はウクライナで撮影したんだって、と教えられた。




