転生ものの恋愛映画を若い頃観た
映画『ワン・モア・タイム』の内容に触れます。
短大時代によく映画館に行った。映画の始まる前の予告も楽しみの一つで、たまに映画本編よりも予告の方が面白い例もあった。で、面白そうだなあと思った予告編に『ワン・モア・タイム』があった。アメリカ映画だ。若い男性が恋人の家に遊びに行くと、何やら前世の記憶がよみがえり……、といったラブコメディらしい。映画館に見に行くことができなかったので、その後ビデオをレンタルして観た。
素敵なガーデンウェディングの光景から映画が始まる。新郎とその介添人、親友と思しき男性との会話が聞こえる。向こう側には新婦のコリンヌが微笑んで待っている。
「どうしても言っておきたいことがある」と、介添人のジャーナリスト。
「今なのか?」と、新郎の弁護士。
「コリンヌを愛している」
真剣そのもののジャーナリストに新郎は余裕で答えた。
「知ってたよ」
式は滞りなく行われ、新婚生活が始まる。
弁護士は、刑事事件の裁判である判事が、犯罪者側に甘い判決を出してばかりいる、何か犯罪組織と繋がりがあるんじゃないかと睨んで、親友のジャーナリストに何か情報を知らないか、と持ち掛け、ジャーナリストは判事がいついつどこそこに行くから、探ってみろと教える。弁護士が教えられた場所に潜んでいると判事と怪しげな人物が怪しげな物の遣り取りをしているのを目撃し、持参のミニカメラのシャッターを押す。
弁護士は自宅に一旦戻り、自宅のリビングのミニテーブルの引き出しに仕舞い込み、出掛ける。既に約束のレストランにはコリンヌが着いていて、窓際の席で手を振っている。弁護士は道路を横断しようとするが、そこに自動車が!
三十年前からこれはお馴染みの転生シーンなのかしら?
天国に昇った弁護士は天使から、生まれ変わるんだから記憶を消すんだとデッカイ注射器を示されるが、コリンヌを想って、注射を受けずに転生に突っ走っていった。
さて二十二、三年の歳月が経ち、と、ある大学の図書館で女子学生が司書と揉めていた。本の返却期限を過ぎたので多額の延滞金が発生している、払え、払えない、そんな会話に気付いた学生アルバイトの男性が、司書が席を外した隙にコンピューターを操作して延滞金をナシにした。
「有難う、わたしはミランダ」
「僕はアレックスだ」
とボーイ・ミーツ・ガールな雰囲気に。
大学の図書館での遣り取りで恋に落ちるのはもっと大昔の映画『ある愛の詩』でもあったよなあ……。
あれ? どっかで見たような顔がいたぞ? 新郎の親友のジャーナリスト役って『ある愛の詩』で主役のオリバーを演じていたライアン・オニールじゃないか! これは配役の妙なのかしら?
アレックスは就職活動の為にニューヨークに赴く。大手の新聞社か雑誌社に行って、「以前お会いした時、ウチに来てくれとお誘いを受けたから来ました」と言い、そこの編集長もアレックスを覚えていたようだが、「もっと経験を積んでコネを作ってから来い」と取り合わない。その場にライオン・オニール演じるジャーナリストが居合わせた。アレックスが気になり、「これ程図太い神経なら充分やっていけるんじゃないか」と進言するも、編集長は雇えないの一方。身一つで出てきたアレックスを連れて、ジャーナリストはコリンヌの家に連れていく。コリンヌは夫の忘れ形見の娘と暮らしており、コリンヌは亡き夫を愛し、ジャーナリストはコリンヌを愛しながら見守る暮らしが続いていた。
だいたい予想がつく通り、コリンヌの娘は大学の図書館で困っていたミランダだ。ミランダは父代わりのジャーナリストの気持ちはとっくにお見通しで、母に告白したっていいわよ、思い切って襲っちゃえばと言うくらい、父親代わりの存在を家族と信頼している。
ジャーナリストがアレックスをコリンヌたちに紹介し、ミランダはアレックスとの再会を喜ぶ。アレックスも嬉しいのだが、なんだかおかしい。初めてのお宅なのに懐かしい、どころではなく、カトラリーが何処にしまってあるかも知っているのだ。寝室で一人になって叫ぶ。
「コリンヌは僕の妻で、ミランダは娘だ!」
アレックスに恋心を抱くミランダが寝室に忍んで来て、「こんなことしちゃいけません!」とアレックスは追い返し、ミランダはジャーナリストに「かれったらまるで父親よ」と言い、ジャーナリストは「それだけ君を大切に思っているんだよ」と宥める。
アレックスは娘の恋心よりもコリンヌに自分が亡き夫の生まれ変わりであり、今でもコリンヌを愛し続けていると伝え、信じてもらおうと一生懸命になる。
コリンヌはからかわないでと憤るが、アレックスが夫の生まれ変わりとだんだんと確信していき、二人は在りし日を思い出し、デートする。仕合せ気分ながら、傍目に母親と息子にしか見えない取り合わせだとコリンヌは愕然とする。家に戻ってベッドインしようかの雰囲気で、ジャーナリストが乗り込んできて、大喧嘩、アレックスはジャーナリストを殴り倒してしまう。アレックスを責め、ジャーナリストを介抱するコリンヌの姿に、アレックスは自分が不在の期間に二人の間に築かれた強固な愛情を感じ取り、引き下がる。コリンヌとジャーナリストもまた、今まで死んだ弁護士の幻影に捕らわれていたのだと気付き、己の感情に正直になって結ばれる。
アレックスはこのまま去るのが一番と考える。そういえば、あの写真は、例の判事はと思い出す。悪徳判事はいまだ現役、アレックスは法廷に駆けつけ、判事に詰め寄ろうとする。裁判を邪魔するなと警備員に取り押さえられ、抵抗するアレックスは倒された。気絶したアレックスにやっと天使が忘却の薬を注射する。病院で目覚めるアレックスにコリンヌが「わたしが誰か判る?」と尋ねると、「ミランダのお母さんだ」と答える。
場面代わってコリンヌとジャーナリストの結婚式。式に参加しているジャーナリストの上司はアレックスが手に入れた汚職判事の写真を知って、採用を告げる。ジャーナリストの花婿介添人はアレックスで、アレックスは真剣な面持ちで話し掛ける。
「どうしても言っておきたいことがある」
「今なのか?」
「ミランダを愛している」
「知ってたよ」
夢一杯、誰もがハッピーな気分で終わる映画。