【短編】コミュ症最強魔道士が通りますよ
お試しです。宜しければ、閲覧、評価の方をして頂けると嬉しいです。
尻切れになってるみたいですが・・・形式的にはこんな感じの短編を毎回やっていく感じです。
「じゃあな。後は好きに生きろ」
そう言って師匠は死んだ
いつのまにか捨てられた自分を拾ってくれたのはこの人里離れた山の上に立つ家に住んでいた偏屈な爺さんである師匠だった
物心ついた辺りでその話を聞いて師匠が肉親ではない事を聞いたけれど、正直ふーん。って程度だった
大体それでお互いの態度が変わることもなかったし、師匠は厳しくもなんだかんだ自分の面倒を見てくれていたと思う
師匠からは色々教わった
薬の作り方、サバイバル、狩りの仕方、解体の仕方などなど、生活に必要な事はほぼほぼ教えてもらえたと思う
この世の中には魔物、と言われる生物がいる
瘴気、と呼ばれる物に長期で当てられているといつのまにか変異してしまうものだ
本質は残忍凶暴凶悪。食に貪欲になりなんでも食べる悪食となる
ど定番の緑肌の小さな小鬼、ゴブリンや豚面のオークなどもいるにはいるが、それらは亜人種、といわれる歴とした種族であり、知性も少なからずあるらしい
まぁ、話はずれてしまったけれど、魔物は基本的に珍しい物、という扱いではあるが、もし現れた時は周囲では甚大な被害を被る
それこそ、国軍が出て来なければならない程度にはヤバイらしい
そんな世界で生き抜く為に、という事で師匠からはその為の技術、ではないけれど、近接での戦闘術と魔法を学んだ
師匠はまぁまぁ凄い人だったみたいで魔法を一つ教えて出来たらその上の魔法、更に上の魔法、といった形で教えてもらった
魔法とは、この世界の人ならば大小はあるけれど、使用することができるものだ
属性として無火水雷風土の6種類を基本属性として、光と闇の希少属性がある
位が
最下位魔法
下位魔法
中位魔法
上位魔法
最上位魔法
古代魔法
と下になるに連れて難しくなっていく
人には其々得意な属性があり、適正によって使える魔法が変わってくる。人によって使える属性が違う、という事だ
魔法には魔力を使用する
体内に保有する魔力の量によって更に使える魔法が減る。
最下位魔法は初等部低学年位であれば誰でも使える
下位は中等部~といった感じ
中位になれば高等部後半?
上位からはもう才能らしく使えれば重宝されて大体が宮廷魔導師、または何処かの有名貴族の専属魔導師になれるらしい
まぁ魔法がどれだけ難しく、それが如何に生きる上で必要なのか、使える、と言うだけでかなりのアドバンテージを手にする、らしい
逆に全員が魔法適正があるのか、と言われれば一概にそうとは言えない
生まれつき魔力が少ない人なんかも当然いる。というかそっちの方が多い
では魔力が少ない人はこの世界で生き辛いのか、と言われればそうではない
昔、かなり有名な魔導師がいた
彼は『賢者』と呼ばれ、数多の魔法を自在に操りその手によっていくつもの伝説を作った
その隣には1人の剣士がいた
彼は唯一その賢者と肩を並べて戦い、そして唯一賢者と対等に戦えた
彼は『剣聖』と呼ばれ、褒め称えられた
まぁそんな訳で『賢者』と『剣聖』
この2人に憧れて剣の道、魔法の道を歩むのは半々らしい
まぁそんなわけで、これはできた方がいいってものは大体師匠に教えて貰えた
さて、ここで問題が一つ
師匠が死んで誰もいなくなったこの家のリビングにあるソファに座って一息つく
「何しようか…」
好きに生きろ、と言われたが、残念ながらやりたい事が見当たらない
師匠に言われた剣と魔法の基礎は毎日の日課にはなっているが、それはやりたい事、というわけではない
「むむむむむ」
薬作り?いや、そこまで好きじゃないし
魔道具作り?まぁ便利なの作るのは好きだけど、あくまで趣味範囲だし
狩り?それも生きる為の手段であるでしかない
家具作り?違う…
むー
困ったな…
と考えているとお腹が空いてきた為、適当にご飯を作ってその日は寝た
…明日になったら考えよう…
そんな日がそれから2週間続きました
むう…
木を削って作った簡易な竿から糸を垂らして考える
傍に置いてあるバケツには既に数匹の魚が入っていた
…結局はしたい事が見つからなかった
だからと言って何もしなくていいわけではない
何より物を食べ、生活をしなければならない
師匠がいた時も訓練以外は狩を行なったり、こうして魚を釣ったり、薬作成用の素材を集めたり、裁縫を行なったり…
あぁ、うん。満足ではないけれど、きちんと充足された日々だね
こうしてのんびりと糸を垂らしてほのぼのとしているのもありかもしれない
暫くそうしていると周囲が少し騒がしい事に気が付いた
これは…誰かいるね
喧騒の中には悲鳴や怒号が混じり、何かをぶつけ合う音が聞こえてきた
音の方を眺めながらなお魚釣りを続けていたが、そちら方面の草叢がガサガサと音を立てて次にそこから誰かが飛び出してきた
その人は此方を見るとギョッとした顔をして此方に対して悲鳴が混じったような叫び声をあげながら近づいて来た
「な、何故こんなところに人が…っ!!き、君!早く逃げて!!」
見た目は何処かの王子様の様な姿
高価そうな黒地で金色で縁取られた軍服の様なものを着込んだ金髪の少年と青年の間くらいの年齢
すらっとした身長と体型で手に握るスティレットの様な短剣を握っていた
直後その後を追って来た様に草叢から飛び出して来た四足歩行の生物
ライオンの顔に虎の様な模様の胴体、背中からは蝙蝠の様な翼が生え、尻尾は蛇
えーと…確かキマイラかな?
「くっ!やはり此方に来たか!!君!!ボサッとしてないで早く逃げて!!」
王子様(仮)は此方に背を向け叫びながらキマイラ(多分)と相対する
なんでこの人はこんなに焦っているのだろうか?
竿を引き上げ、バケツの横に置いて立ち上がり、手を伸ばしてイメージ
自分の周りに無数の2種類の槍が現れる
「おい!何をして…!?」
そして何かを叫びながら此方を見て唖然とした顔をしている王子様を避ける様にキマイラに当たる様イメージしながら手を振る
槍達はそのイメージ通りに飛び、キマイラに突き刺さっていく
一つの赤色の槍は突き刺さる度に燃え上がりその箇所を焼き付けながら
もう一つの水色の槍は突き刺さった箇所を凍らせながら
醜い悲鳴を上げながらその巨体を震わせながらもその傷跡は増えていった
数秒後そこにはグズグズに焼け焦げ、全身が凍り付いた化け物の氷像が出来上がっていた
「き、君は、一体?」
暫く動かなかった王子様?が氷像とこちらを繰り返し見た後、ハッとした表情に変わり此方に駆け寄って来た
「…」
「い、いや、とにかく助かった。実は道中にあれに襲われてな。まさかあんなのに襲われるとは思いもしなかったし、更にはあっさりとあれを倒す君にも驚いた!はっ!そう言えばあいつらは…!君!お礼がしたいから是非少しここで待っていてほしい!」
わーっとまくし立てた王子様は身を翻し、現れた草叢へと入っていった
「…」
チラッと川を眺めるとそこにいた魚は驚いてその姿を眩ました様だ
まぁあれだけ騒がしくしたら当然だよねー
がっくりと項垂れてバケツを手に反対の手に竿を持った
最後にチラッと氷像を見ると悲壮感漂った目と目があった
ブォンと竿を振ると初めから待機させていた特大の真っ黒な槍が氷像に突き刺さりその氷像はバラバラに崩れていた
それを確認した後、魚を干物にする為、帰路に着いた
☆★☆
「こっちだ!」
俺は生き残った騎士を連れて森の中を疾走する
「それにしても、あのキマイラを本当に退治したのですか!?しかもたった1人の魔法使いが?」
「あぁ。私が目の前で見た事だ!」
本来あのような化け物が出てきた場合一個小隊で準備万端の状態でなんとか討伐する様なレベルだ
それなのにあの者は一人であのような高度な技術を行使して討伐して見せた!
素晴らしい!正に『賢者』の再来だ!
俺はあの者を迎え入れる手段を脳内で考えながらあの場所へ辿り着いた。だが…
「…いない?」
奴がいた場所には誰もいなくなっていた
キマイラが凍っていた場所には地面が抉れその付近にぐちゃぐちゃになった肉片が転がっていた
「うえ…」
「…キマイラ…」
凄惨な現場を見た騎士が唸っている事にも気にせず俺はキョロキョロと辺りを見回したが、そこに俺達以外の気配も感じる事が出来なかった
なんという事だ…
残念に思いながらもこれ以上この近辺を探索して凶悪な生物に出会っては目も当てられない
俺達は来た道を引き返し、目的の場所、王都へと向かっていった
俺の中ではあの時の一瞬であれ程強力な魔術を行使した光景が何度も繰り返されていた
☆★☆
はてさて
本日は裏手にある畑で美味しそうに実っていた野菜を収穫した後、薬の材料となる薬草、毒草類の採取にきた
おっオイシ草発見!これ美味しいんだよねーラッキー
こっちにはクビッタケー。色がアレだけどこれも美味いんだよねー
稀にしか手に入らない草や真っピンクのキノコを取りながらどんどんとカゴに放り込んでいく
ふふふーん♪
今日の献立を想像して鼻歌交じりに森を彷徨っていると…
「うっ…」
明らかに致死量の血を流して倒れている透き通る様な青い髪をした人を発見した
その人は革の鎧を着込んでいて近くには半ばで折れている槍が転がっていた
ゆっくりと近付いて近くにあった木の枝でつついて見る
「うぅ…」
…どうやらまだ息はある様だ
男をひっくり返して傷の具合を確認するとどうやら巨大な生物の爪にでもやられたのだろう。3本の斬撃の様な爪痕が肩口から脇腹にかけて入っていた
顔は真っ青を通り過ぎて白くなっていた
手元には多種多様な薬草や毒草やキノコ
暫しの熟考後、背負ったカゴを下ろしてそこからいくつかの物を取り出していく
それらを腰に刺したナイフや時に素手で切り刻み握り潰していく
水を入れた容器を最下位の火の魔術で熱し、それに次々と放り込んでいく
「…」
泣く泣く好物の一つである真っピンクのキノコを砕いてそこに投入してかき混ぜていく
軽く冷ましたそのドロドロの液体をパックリ切り裂かれた箇所に塗りたくり、包帯を巻く
残った分は少し考えたが、その男性を大木に寄りかからせた後、口元に持っていき全て飲ませた
呼吸が安定した事を確認した後、その男を中心とした箇所に簡易の魔物や猛獣避けの魔法陣を施した
武器がないと帰るのは厳しい可能性があると感じ、結構な物を入れる事ができる空間収納の魔術を施しているポーチ(ほぼいっぱいいっぱい物が詰まっている)から無造作に突っ込んでいた以前師匠と一緒に行った地下神殿で見つけた槍を取り出して男の近くの地面に突き刺しておいた
槍、というよりも槍斧の様な造形であり、刃の部分には古代文字が彫られ、振るうと風の力を使用できるという中途半端な使い勝手のマジックアイテムである
師匠は特に要らないとは言っていたけれどあるものは拾わなければ、という貧乏性が発揮したのはいいものの、そもそも槍は好んで使わない事もあり、このポーチの肥やしになっていたものだ
それならば使われた方がこの槍にとっても本望というやつだろう。…それほど思い入れもないし…
その後、帰路に着きながら必死にピンク色を探したが見つからず肩を落としながら夕食を食べ、ふて寝した
☆★☆
…
「はっ!?」
お、おれは…
「い、いきてる!!」
俺は確か…冒険者ギルドの依頼で珍しい薬草を探すために森に入ったが、運悪く巨大な銀毛の狼に襲われ、命からがら逃げたが、受けた傷で意識を失った
ペタペタと体を触ると傷を受けた箇所には包帯が巻かれており、その傷自体もほぼ完治していた
「これは、一体??」
更に周りを見ると仄かにだが、魔法陣が輝いている事にも気が付いた
それは現在ではほぼ失われ、滅多にお目にかかれない魔法陣
魔法陣自体は今の世間でも存在する。俺の持つアンクレットにも魔除けの魔法陣が付与されている
しかし、この森では殆ど効果がない
この森で通用する魔除けなぞ、現在もし存在するのであれば、国の一つ二つが手に入るほどの高価な、いや、そんなチープな言葉では足りない様な伝説のアイテムだ
それに加え、瀕死の状態から完治する様な薬…
「まさに神様か精霊様の所業だな…」
まさか俺みたいな落ちこぼれの冒険者を助けてもらえるなんてな…
「生きろってことか…」
俺は目の前に突き刺さっていた見惚れる様な造形のハルバードを手に取った
羽根のように軽く刃の部分は薄い緑色で何やら幾何学な文字と文様が刻まれていた
マジックアイテムであることを察した俺は試しに少ない魔力を流してみる
まぁこの程度で効果はないだろうが、と思っていたが、その思惑とは裏腹に風が刃に纏わり付き、ハルバードを振るうとそれに併せて風の刃が振るった先にある木々をなぎ倒した
「…」
ありがたい…と呟いて俺は目的の薬草を見つけた後、街へと戻っていった
クエストを達成し、それに追加で希少な素材を持ち帰った彼には金貨数百枚という大金が転がり込んだが、その半分を精霊を崇める精霊協会に寄付した
お読み頂けて感謝です!!
宜しければ評価、または感想、指摘等御座いましたら、気軽にお願いします!
よりよくしたい。あと、今流行りのざまぁもう遅い系より面白くしたい。
お願いします。