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十話目

「おにぃ! 待っててくれたの?」


 俺が待っていると、スノウの明るい声が教室に響き渡った。


「ああ、スノウか。授業は終わったのかい? しかし、待っててくれたのって、あれだけ一緒に帰ろうとねだられちゃ先に帰る訳にはいかないだろう?」


「うふふ。それもそうですね。それでも嬉しいことに変わりはないですわ」


「ところでこちらは……?」


 スノウは俺の向かいに座る人物に気付き、そう尋ねた。まぁ気づかないはずは無い。相手はツフなのだから。座った状態で立っているスノウよりもでかい。


「ああ。同じE組のツフだよ。ツフ、俺の妹のスノウだ」


 と、お互いを紹介すると、ツフは立ち上がり右手を伸ばす。


「ツフ・バルバルーだよ! ツフでいいよ! 宜しくな!」


「え、えっと……初めまして……スノウ・ベルウノです……スノウでいいです」


「あはは! 大丈夫! ベルウノ家の天才美少女のことは皆知ってるよ!」


 ツフと対象的に、スノウは縮こまっているような感じだった。


「ツフの大きさに面食らっちまったか? まあ仕方ない。俺だって最初はビビったしな」


「え、ええ……ごめんなさい」


 俺の言葉にスノウは頷きながらツフに謝った。


「謝らなくていいよ! ビックリしない奴なんて見たことないから!」


「でもな、俺がスノウを待ってる間、暇つぶしに付き合ってくれたんだ。身体は大きいがとても細かいところまで気が利く良い奴だ」


 そう、ツフは帰ると言いながらも、俺がスノウを待ってる間、ずっと話に付き合ってくれた。今日初めて知り合っただけなのにとても良い奴だ。


「まぁ……それはありがとうございます。兄がお世話になって」


 スノウが慌ててお辞儀をすると、ツフも頭をかいた。少し照れたみたいだ。


「あはは! 気にしないで! 帰っても手伝いさせられるだけだし、おいらにとっても暇つぶしになるんだから!」


「それに俺のことを庇ってくれたしな」


 しまった! と思った時はもう遅い。一瞬で教室の温度が下がっていくのがわかる。スノウの逆鱗に触れてしまった……


「庇った? E組の生徒から何かされたのですか? まさかベルウノ家だから……ごめんなさい、おにぃ……私がいながら……でも、安心してください……二度とそんなこと起きないように、皆を洗脳して差し上げます……」


「ちょちょちょっと! ちょっと待ってくださいスノウさん? 悪いのは俺! 俺なんだから!」


 俺が焦ってそう言うと、教室の温度は段々と元に戻っていく。


「え、そうなのです?」


「いや! サスは悪くないよ!」


「ほら、やっぱり……」


 ツフの言葉にまたも肌寒くなっていく……

 俺はツフを制し、スノウの肩をガシッと掴んでこう語った。


「ツフも話をややこしくしないで! 俺が悪いの! 俺が学園長を保健室送りにしちゃったんだから!」


「おにぃが学園長を保健室送りに? なるほど……学園長が悪いのですね……」


「だから違うんだって! 俺が学園長の結界を破っちゃったから、その反動で学園長が倒れちゃったんだよ」


「どういうことです?」


 怪訝そうな表情になったスノウに、俺はそのまま続けて話をする。


「学園長の魔法は知ってるだろ! 迷宮を作り出す魔法! 螺美輪好だよ! あれを破っちまったのさ!」


「あれを……破った……ですって?」


 そこへ唯一目撃したツフが話を加えてくれる。


「出てきたゴブリンの群れにこーんなでっかい大岩をヒョイって投げてな! で、重力を制御する魔法だっけ? あれをかけたら、ぽっかりと地面に大穴が! 底が見えないくらいまででっかーいのが開いてな! で、ハゲが倒れたって訳だ! 見てたのはあたいだけだったが、スノウにも見せたかったよ!」


 スノウは俺とツフの二人の顔を交互に見ながら、納得したように何度もゆっくりと頷き出した。


「なるほど……学園長は、御自身の作り出した結界に与えられたダメージに耐えられなかったのですね……」


 そして顔を上げて、俺にビシッと指をさして勢いよく喋り出す。


「それにしてもおにぃ……なんでまた手加減出来ないんですか! さっきの戦いもそうでしたし! 」


「手加減出来ない?」


 ツフが疑問を口にする。するとスノウがそれに答えてあげた。


「ええ、兄はとある理由で他人に魔法をかけられなかったんです。でも、それがかけられるようになって……」


 とある理由ってスノウ本人に、誓約をかけてもらっていただけなのだが……


「だから恐らく加減ができなくて、全力でかけてしまうんです」


「なるほど! だからあたいもあれだけキツかったのか! どっちにしろ、あたいが筋力強化の魔法を使わないと耐えられないなんてすごい魔法だよ!」


 二人で盛り上がってしまっている。だが、俺にも言いたいことはある。全力でなんかかけてない。俺なりに手加減はしているつもりだ。


「いや……手加減はしてるのだが……」


「おにぃ? 言い訳はもう良いですよ? 二度もしてしまったのです。段々と出来るようにしていきましょう」


「そうだぞ! サス! あたいが実験台になってやる! 手加減出来るまで付き合うぞ! それにあたいにとっても良い鍛錬になるからな!」


「あ、ああ……宜しく頼む……?」


 俺は釈然としない思いを抱えながらも、そう言葉を返したのだった。

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