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09 拠点づくり 住居の建築

本作の長さの単位メトルは、ほぼメートルと同じ長さです。

 俺は建築に入る前に、ヒッポリアスのことを撫でる。


「ヒッポリアス、製作スキル使うから、しばらく木を倒すとこ見てあげられないんだ」

『……わかった。きゅう』


 お願いしたら見ていなくても作業してくれるようだ。


 俺は安心して建築の準備に入る。

 建てるのは四人が居住可能な小屋だ。四部屋と共用部があればいいだろう。


 建築の前にまずは鑑定スキルで地盤を調べることから始める。

 立派な建物を作っても、地盤がゆるゆるでは意味がないのだ。


 俺は魔力を両手に集めると、地面に触れる。

 そして鑑定スキルを発動させた。

 広さ半径二百メトル、深さ二十メトルの範囲を一気に調べることに成功した。

 鑑定スキルの範囲はスキルの熟練度に依存する。

 この範囲は我ながら鑑定スキル持ちの中でも相当に広いと言えるだろう。


「くぅ」


 一気に言語化されていない状況が脳内に流れ込んでくる。

 この情報処理は相当に難しい。

 鑑定スキル持ちでも、手に入れた情報の大半を理解できないものが多いのだ。

 俺も何とか処理しきる。


「ふう。結構いい地盤だな。そのまま杭を打ち込めばしっかりと固定できる」


 次はヒッポリアスと冒険者たちが採集してくれた木を並べる。

 他の材料、蝶番などに使う金属類も一緒に並べていく。

 石や砂も必要だ。一緒に並べる。


 材料を並べ終わると、ヴィクトルが尋ねてきた。


「その木は新種ですか? 建材に適した木でしょうか?」

「木自体は既知のものだな。建材にも適している種類だ。いい木だ」

「それは良かったです」


 俺は並べた原木や金属などの材料を丹念に調べる。

 原木の種類は鑑定スキルを使うまでもなくわかっている。

 それでも鑑定スキルを使うのは、風よけを作ったときと同様に固有特性を調べるためだ。


 風よけを作ったときよりも、使用する木の量がずっと多い。

 だから鑑定スキルを使ったことによる手に入る情報量も膨大だ。


 情報量が多いのはいいことだと思いがちだが、実はそうでもない。

 その膨大な量の情報を処理をするのは俺の脳内なのだ。


 一般的な鑑定スキル持ちはごく少量ずつ鑑定をかけることで何とか処理する。

 名前と漠然とした品質程度の情報に絞り込むことで対処している者がほとんどだ。


 情報処理能力と膨大な魔力量に支えられた、膨大な鑑定範囲と鑑定処理量。

 それこそが、俺の鑑定スキルの強み。チートとすら言われる能力である。


「一軒分の材料鑑定終わり。次は製作スキルの建築だ」


 俺の製作スキルをチートと呼ばれる域に押し上げているのも、情報処理能力である。

 精確かつ鮮明に、製作物を思い浮かべる。

 それに鑑定スキルで得た材料の特性を当てはめて、脳内で組み立てるのだ。


 どれだけ鮮明に思い浮かべることができるか。

 それには大きな個人差がある。


 製作スキル持ちは珍しくない。

 だが、俺ほど精確鮮明に思い浮かべることができるものは他にほとんどいない。

 そこに鑑定スキルで把握した材料特性を組み合わせて最適に製作できるものはまずいない。


 加えて俺には膨大な魔力がある。

 大量の情報量と、鮮明なイメージを生かすためには膨大な魔力が必要なのだ。


 いくら鮮明なイメージでも、時間とともに劣化するのは免れない。

 時間経過によるイメージの劣化を防ぐために必要なのが、膨大な魔力による高速製作である。


 普通、一軒の家を建てるならば、休み休みしながら数日かける。

 その場合は、その都度イメージを再び脳内で組み立てなければならない。


 すると、休むたびに前回のイメージとの齟齬が生まれる。

 その齟齬は、製作物の出来に大きな影響を及ぼしてしまうのだ。


「さて……」


 俺はイメージを固めたので、建築に入る。

 一気に完成までもっていくのが良い製作物を作るコツである。


 冒険者たちとヒッポリアスが集めてくれた原木を、製作スキルで一気に木材へと加工する。

 生木は建材には適さない。だから、スキルを使って一度木材へと加工するのだ。

 

 木材が揃えば次は建築だ。一気にくみ上げていく。

 非常に集中力を要する作業である。魔力も使う。


 土台から床、そして天井、屋根に向けて積み上げるようにして建築する。

 集中力を切らさぬよう全力を尽くさねばならない。


 十五分後、一軒の家が完成した。我ながらなかなかの出来だ。


 ヴィクトルと休憩中の数人の冒険者と一緒に中へ入って確認する。


 家の玄関から入ると、共有スペースがある。

 その共有スペースから四つの個室がつながっているという構造だ。

 床は全て板張りである。


 個室にはそれぞれ開閉できる窓がある。

 砂を材料として、板ガラスを作りはめ込んである。


「窓まで……凄いですね」


 ヴィクトルが感心してくれた。

 極めればいろんなことができる製作スキルとはいえ、板ガラスを作れるものはそういない。

 ガラスの構造を把握しなければならない上にガラスは繊細だ。

 力加減を間違えれば簡単に割れてしまう。


「板ガラスすげー」

「貴族のお屋敷みたい」


 冒険者たちにも好評なようで良かった。


 まだ、宿舎の中に家具は一つもない。

 台所やトイレの機能は、井戸と下水を整備してから考える予定だ。

 だから完成とは言えないが、ひとまず雨風を凌いで眠ることは出来る。


「ふう、まずまずだな」

「見事です」

「ありがとう。木はまだあるよな?」

「はい。ヒッポリアスの活躍が凄いです。作業予定を五倍ぐらいの早さで消化していますよ」

「そうなのか」


 俺は家を出て、ヒッポリアスと冒険者たちが集めてくれた木の集積場を確認する。

 家を建てるのに、充分な量が溜まっていた。

 冒険者たちの数人は大きめの石や砂などを集めてくれている。それも凄く助かる。


「では。二軒目にいきますか」


 少し休憩して、同様のことをして、もう一軒家を建てた。


 休憩をはさみながら、木が溜まるたびに家を建てていく。

 ヒッポリアスがどんどん運んでくれるので、休憩時間は短くて済む。


 五軒の家の構造は全部同じだ。

 建てる場所と、材料にする木の特性が違うので調整は必要である。

 とはいえ、やることはほとんど同じだ。


 建てるたびに慣れていき、徐々に効率よく建築することができた。


 冒険者たちの宿舎、五軒を建て終えたら、次はヒッポリアスの家である。

 ヒッポリアスは大きいので、宿舎よりも大きくなる。

 当然、必要な材料も多い。


「きゅっきゅ」


 木を咥えたヒッポリアスが期待のこもった目でこちらを見てくる。

 尻尾をぶんぶんと振っている。

 ヒッポリアスは俺が見ていないあいだも、一生懸命木を集めて来てくれていた。

 最大の功労者と言ってもいい。功労者には報いなければなるまい。


「ヒッポリアス、任せろ」

「きゅう」

 ヒッポリアスの期待に応えるためにも立派な家を建てることにした。

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― 新着の感想 ―
[一言] 生木は建築には適しません。製材の前に乾燥する必要があります。
[一言] 杭を打つのは悪い地盤のときです。地盤が確りしているなら、石を引くか地固めした箇所に礎石を設置し、根太(ねだ・床したの梁のようなもの)を組みます。 地盤が固かったらそもそも杭は入っていきませ…
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