75 食堂を作ろう
1巻が1/14発売です。
「ここは俺に任せて先に行けと言ってから10年がたったら伝説になっていた。」6巻も同日発売です。
フィオは山菜料理を見ながら、尻尾を振っている。
「どうした? フィオも食べたいのか?」
「たべる!」
「聞いていたと思うが、おいしくはないぞ?」
「たべる!」
「そうか。食べたいなら止めはしないが、最初は少しだけにしなさい」
「わかた!」
そういって、フィオは山菜をむしゃむしゃと食べ始めた。
「おい、だいじょうぶか?」
「わむわむわむ」
結構な量の山菜を次から次へと食べていく。
「お、おい! だいじょぶか?」
冒険者たちも心配そうに声を上げる。
もしかしたら、フィオは食事の好みが俺たちとは違うのだろうか。
いや、そもそも味覚自体が違う可能性もある。
「フィオ。もしかして、おいしいのか?」
「まずい!」
「……そうか。そうだよな」
「わむわむ」
「無理して食べなくていいんだよ?」
「わふ?」
フィオは右手に肉、左手に山菜を持って交互に食べている。
「そうか。フィオはシロと一緒に食事に困る日々を送っていたから……」
フィオとシロが拠点の残飯漁りに来たことで、俺たちは出会ったのだ。
群れが魔熊モドキにやられてからは常に飢えていたのだろう。
だから、好き嫌いとかがないのかもしれない。
フィオは全種類の山菜料理を少しずつぱくぱくと食べると、水をごくごく飲んだ。
「まずい!」
「そうだな、だが、食べるものが無かったらこれを食べるしかない」
「わふぅ~。しろ、わふ」
「わう」
なにやらフィオはシロと会話する。
そして、話がまとまったのか、こちらを見て言う。
「うまい、くさ。ある!」
「本当か?」
「ほんと!」「わふ!」
人間であるフィオだけでなく、魔狼であるシロまでうまいと鳴いている。
これは期待できる。
「どのあたりに生えているんだ?」
「わふぅ~。おふろ、ちかく!」
「あの天然温泉近くか」
「そ!」
天然温泉は魔熊モドキを倒し、クロたちを保護した場所だ。
つまり魔熊モドキの縄張りだったところである。
フィオとシロは、当然入れなかったのだ。
「なるほど。午後は食堂を整備したあと、それを採りに行こうか」
「いく!」
おいしい食材は皆欲しているのだ。
俺もおいしい山菜を久しぶりに食べたい気分だ。
「ヒッポリアス。午後は大きくなってついてきてもらえるかな?」
『きゅお、わかった!』
その後、残ったまずい山菜料理は全部ヒッポリアスが食べてくれた。
『うまい』
「……そうか。いっぱい食べていいよ」
「きゅる~」
ヒッポリアスは雑草もおいしく食べられるぐらいだ。
まずい山菜だって、おいしく食べられても何の不思議もない。
昼ご飯を食べて、後片付けを終えたあと、俺は食堂の建設作業に入る。
冒険者たちには、食堂から離れてもらった。
「さて、食堂とはいえ、炊事場でもあるからな……」
かまどだけでなく、まな板や鍋といった調理器具も用意しておこう。
食堂にはテーブルと椅子も必要だ。
「材料はほとんど木材だな。あとは金属」
『ておどーる。きをあつめてくる?』
ヒッポリアスが作業を申し出てくれた。
木材にはまだ余裕がある。とはいえ、潤沢と言うほどではない。
それに木材はいろんな用途に使うのだ。燃料としても必要だ。
「そうだな。ヒッポリアス、頼めるか? 今日の分はあるが……燃料にも使うからな」
『わかった! きゅる~』
すぐにヒッポリアスは元の大きさに戻る。
そして、拠点の外に向かって走っていった。
そして俺は作業を再開する。
食堂も炊事場を含めた建物を建築してから、家具と調理器具を作ればいいだろう。
建物自体は宿舎などと大差ない。材料を並べて製作スキルで一気に建築していく。
「建築が終われば次は家具と調理器具だな」
テーブルも椅子も鍋もまな板も構造は単純だ。
製作スキルがあれば、作ることは難しくない。
「……ついでに燻製器も作っておくか」
魔法の鞄があるので、生肉の保存は比較的しやすい状況だ。
だから、保存食としての肉の燻製づくりは必須ではない。
とはいえ、燻製はうまいので、それなりに大きな燻製器を作っておく。
すべての作業は三十分ほどで完了した。
「おお、相変わらずテオさんはすげーな!」
「これで雨の日も快適にご飯を食べることができるよ!」
「調理も楽になるな! 燻製も作ってみたいもんだ!」
「テーブルと椅子もいいな。酒盛りがしやすくなるぜ」
冒険者たちも喜んでくれた。
椅子に座ってみたりして、感触を確かめている。
「喜んでもらえてよかったよ」
そして俺は完成した食堂から外に出る。
そのころにはヒッポリアスが戻ってきていた。
『ておどろーる、き、あつめた!』
「ありがとう。ヒッポリアス。助かるよ」
そして俺はヒッポリアスと一緒に資材置き場に向かう。
ヒッポリアスは十本の大きな木を資材置き場に並べてくれていた。
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