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270 子ヤギのミミ

 出てきたヤギたちとカヤネズミたちとフクロウたちは、

「めええ~」「ほっほう!」「ちゅちゅ」

 一目散にイジェのところに駆けつける。


「ミンナ、ゲンキ?」

「めえ~」「ほっほほう」「ちゅっちゅちゅ」


 イジェは本当に大人気だ。

 フクロウたちが撫でてくれとイジェに体を押しつける。

 ヤギたちはイジェを取り囲んで、鼻を押しつけて匂いを嗅いでいる。

 ヤギたちは馬より大きいので、完全にイジェを見下ろす形になっていた。

 カヤネズミたちはそんなヤギの背中から、首の方に移動して、イジェにアピールしている。


 下はフクロウ、上はヤギという二重包囲をうけて、

「ミンナ、オチツイテ」

 イジェは少し慌てていた。


「まあ、まてまて」

 ジゼラがイジェの隣に立って、ヤギたちをなで回す。

 そして素早くイジェが抱っこしていたロロを抱き上げる。


「みんな、いじぇがこまてるよ! ふくろうたちじゅんばん!」

「……ほほぅ」


 フィオに叱られて、フクロウは大人しく並び直す。


「やぎも! じゅんばん! そこ! ずつきしようとしない!」

「めぇ……」


 どさくさに紛れてイジェに頭突きしようとしたヤギがフィオに叱られる。

 ヤギは親愛の情を示すために頭突きしたりするのだ。


 順番に並んだ、ヤギたちとフクロウたち、そしてヤギに乗るカヤネズミをイジェは順番に優しく撫でた。


「めえ~」


 ヤギの中で最初にイジェに撫でられる栄誉をえたメエメエが、こちらにやってくる。


「子ヤギはどこにいる?」

「めえ~」


 メエメエはヤギの家の方を目で示す。


「…………」

 ヤギの家の入り口から顔を半分だけだして小さな子ヤギがこちらを見ていた。

 本当に小さな子ヤギだ。

 大人のヤギは馬のように大きいのだが、子ヤギは旧大陸の普通の子ヤギぐらいと変わりない大きさだ。


「シロ、少し離れていてくれ」

「…………」


 念のために体が比較的大きい魔狼のシロには下がってもらう。

 ヤギにとって、狼は天敵なのだ。赤ちゃんヤギにとっては怖いだろう。


 シロは俺が離れろと言った理由を理解して、吠えたりせずにイジェの近くに移動した。

 子魔狼たちをどうするか迷ったが子ヤギより小さいぐらいだから大丈夫だろう。


「ミミだね。こっちにおいで」

「……」

「大丈夫、怖くないよ」


 敢えてテイムスキルの強制力は使わずに呼びかける。

 テイムスキルは意思の疎通だけに集中させた。

 俺の言っている内容は、ミミに正確に伝わっているはずだ。


 だが、ミミはこちらにやってこない。じっと俺たちを観察するように見ている。


「めえ~~」


 ミミの母ヤギがこちらにおいでと呼びかけるも、ミミは動かない。


「ミミ、おいでー」

 イジェのフォローをしていたジゼラがロロを抱っこしたままやってきて呼びかけた。


「めえ~~」

 するとミミは駆け出してくる。


「めえ~めえ!」

 楽しそうにジゼラに頭突きし始めた。


「ずいぶんと懐いているんだな」

 俺がそういうと、ジゼラは自慢げにふふんと笑った。


「そりゃ、一緒に遊んだからね、ねー?」

「めえ~」

「人見知りするヤギなのか?」

「まあ、赤ちゃんだからね。紹介するね。この人がテオドール」

「……めぇ」


 ミミはジゼラの足の後ろに隠れて、窺うように俺を見る。


「ミミ、よろしくな。仲良くして欲しい。この子はヒッポリアスで、こっちがピイ」

「きゅお~」

「ぴい」

 俺は抱っこしたヒッポリアスと肩に乗ったピイを紹介する。


「めえ」


 メエメエが怖くないから安心しなさいと言ってくれる。


「おいでー。怖くないよ。ヒッポリアスも怖くないよ」

「…………め」


 ミミはゆっくりと近づいてくると、俺の足の匂いを嗅ぐ。

 俺は地面にヒッポリアスを降ろした。


「きゅおー」

「めえ~」

 ヒッポリアスとミミは互いに匂いを嗅ぎあった。


「ミミ、こっちがフィオで、こっちがケリー」

 続いてジゼラがフィオとケリーを紹介する。


「よろしく! みみ!」

「……め」

「ケリーだ。魔獣学者をしている。触れてもいいか?」

「めぇ!」

「さわていいて!」


 ミミはもう触ってもいいと言って、堂々としている。

 さっきまで警戒してたのに、もう慣れたらしい。


「ありがとう。ふむふむ。……病気の兆候もなさそうだし、怪我もしてないな。痩せてもいないし、健康状態は良さそうだ」

「めえぇぇ」

 ケリーに触診されて、ミミは気持ちよさそうに鳴いている。

 相変わらずケリーは動物を触るのがうまいようだ。


 その様子を、メエメエが優しい目をして見つめている。

「メエメエ、ボアボアたちには紹介したのか?」

「めえ~」

「もう紹介済みか。飛竜のこと怖がらなかったか?」

「めめ~」

「すぐ慣れたか」


 警戒するのは最初だけらしい。


「ミミ、ダニのチェックをしよう」

「めえ?」

「怖くないから安心してね、ピイ、お願い」

「ぴっぴい」


 ピイがぴょんとミミの上に飛ぶ。


「めえ~」

 ミミは少しびっくりした様子だが、すぐに落ち着いてピイにされるがままになった。

 ピイはミミの全身を舐めるように移動する。

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