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231 初秋の朝

 ヤギやカヤネズミ、フクロウたちが仲間になってくれた次の日。


 俺はいつものようにヒッポリアスの家で目を覚ました。

 まだ夜明けからそれほど時間が経っていない。


「……少し寒いな」


 秋が近づいてきている。いや、近づいてきているのは冬だ。

 冬への準備を急いだ方が良いかもしれない。


「…………ぷしゅー」

 そして、俺のお腹の上にはロロが乗っていた。


「ロロだけなのか。珍しいな」


 ロロは昨日体調を崩した。

 もう治ったとはいえ、体調を崩したときは甘えたくなるものだ。


 そう考えて、俺は寝ているロロを撫でた。

 耳が動いて、尻尾が揺れる。

 ロロは狸寝入りをしているのかもしれない。


 俺はロロを撫でながら、部屋の中を見回した。

 いつもの場所にフィオ、シロ、クロ、ルル、イジェが固まるようにして眠っている。

 その中から、ロロだけ俺のお腹の上にやってきたらしい。


「……冬になったら、板の上で寝るのは寒いかな」


 寝ているフィオたちをみて、そう思う。

 ベッドを作ろうと思っていたが、後回しになっていた。

 冬が来る前には、ベッドを作らねばなるまい。


 ベッドを作ってその上に藁を敷けばいいだろう。

 藁は、昨日収穫した燕麦の茎を利用すればいい。


 旧大陸でもベッドの上に藁を敷いて、その上にシーツを敷いて眠っていた。

 貴族でもあるまいし、羽毛やら綿などを敷いたりしないものだ。


「……きゅぅおおお」


 俺の隣で眠っていた小さくなったヒッポリアスが寝言をいう。

 ヒッポリアスは、いつものように、仰向けになって、へそを天井に向けて眠っている。

 そのお腹の上に、ピイが乗っていた。


「ぴぃ」

 ピイは起きているようだ。

 きっと、ヒッポリアスのお腹が冷えないように、上に乗ってくれていたのだろう。


「ピイ、ありがとうな」

「ぴっ」


 ピイは気にするなと言いながら、プルプルした。


 俺はロロを撫でながら、二度寝をするために目をつむる。

 お腹の上のロロの体温が暖かかった。


 しばらく、うとうとしていると、温かさが増した。


 目を開けるとルルが胸の上に乗っていた。


「ルルも来たのか」

『きた』

「そうか、そして、クロは……」

『くろも!』


 クロは俺の顔の上に乗ろうとしている。


「顔の上に乗るのはやめなさい。息がしにくくなるからね」

『わかった!』


 俺はクロをロロとルルの間あたりのお腹に乗せた。

 クロもルルも満足したのか、大人しくなる。

 ロロは相変わらず眠ったままだ。


「みんないい子だね」


 俺は子魔狼たちを撫でた。

 子魔狼たちは暖かい。冬はみんなで固まって眠ればいいかもしれない。

 ピイも暖かいし、ヒッポリアスも暖かいのだ。


 そんなことを考えていると、

「きゅお」

 起きたらしいヒッポリアスが、俺の肩に顎を乗せる。

 それに合わせて、ピイも俺の胸の上に移動した。


「起きた?」

『おきた! なでて!』


 どうやら、ヒッポリアスは起きて子魔狼たちが撫でられているのを見て、撫でて欲しくなったらしい。

 俺は右手でヒッポリアス、左手で子魔狼たちとピイを撫でる。


 ヒッポリアスは毛がないが温かい。ぷにぷにしていて、さわり心地が良い。

 ピイはプルプルしていて温かい。不思議な感触だ。

 子魔狼たちは、もふもふで温かい。いつもブラッシングされているからふわふわだ。


 撫でていると、

『あそぼあそぼ』「わぅ」『だっこ』

 子魔狼たちは完全に起きたらしい。


 クロは俺の顔を舐めてくる。

 昨日体調を崩したロロは、俺の服の中に潜ろうと襟元と格闘していた。

 ルルは俺の手をペロペロ舐める。


 そんな子魔狼たちに触発されたのか、ヒッポリアスは俺のおでこに顎を乗せた。

「きゅお~」

「まあ、みんな、おちつけ」


 そういっても、子供たちは落ち着いたりはしない。 

 ロロとルルまで、クロとヒッポリアスの真似をして顔を攻め始めた。

 顔が弱点だとわかっているらしい。


 ベロベロなめて、顔をよだれでべちゃべちゃにしようとしてくる。

 そんな俺たちを、ピイは楽しそうにプルプルしながら黙ってみていた。


 そのとき、扉が開いて、ジゼラが入ってきた。

「あ、テオさん、いいなー」

「……いいだろう」


 ジゼラがうらやむのもわかる。

 大変だが、ヒッポリアスと子魔狼たちにじゃれつかれるのはとても良いものだ。


「ぼくもぼくも!」

 そういって、ジゼラは俺の近くに横になる。

「さあ!」

「きゅお~?」

「「「あう?」」」


 ジゼラの奇行に、ヒッポリアスと子魔狼たちは困惑して首をかしげた。


「ジゼラはみんなと遊びたいんだって」

『そっかー』

『あそぼあそぼ!』「ぁぅ」『だっこ』


 遊びたいと言われたら、ヒッポリアスも子魔狼たちも嫌ではない。

 俺の顔を集中攻撃していた子供たちの狙いが、ジゼラに移る。


「きゅおきゅおー!」


 ヒッポリアスはジゼラの胸の上に登って、顔を舐め始めた。


「きゅーんきゅーん」「ゎぅ」「わふ」

 子魔狼たちはもっと激しい。

 クロはジゼラの顔の上に乗っているし、ロロはジゼラのおでこの上に前足を乗せて鼻付近を舐めているし、ルルはジゼラの黒い髪を咥えている。


「それそれ~」

 ジゼラは楽しそうにヒッポリアスと子魔狼たちを手でひっくり返したりし始めた。


「さて、俺は顔でも洗うか」

「ぴい」


 そして俺はピイと一緒に顔を洗うことにしたのだった。

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