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222 鳥害の謎

 食事を終えたヴィクトルが、歩いてこちらに来る。


「ケリーさん、つまり、どういうことでしょう?」

「ケリー、ゴハンをサキにタベよ?」

「ああ、そうだな。すまない。すぐ食べ終わる。待っていてくれ」


 ケリーはバクバクとご飯を食べる。

 なかなかの速さだった。


「美味しかったよ」

「アリガトウ。ツクッタのは、ケリーもフクメタミンナダケド」

「いや、最後の味付けはイジェがやってくれた。あれのおかげで相当旨くなったよ」

「ああ、その通りだ」「二段階ぐらい旨くなったからな」

 冒険者たちもイジェにお礼を言っていた。


 食事が終われば後片付けだ。

 手伝おうと思ったのだが、拠点に残った組の者たちが任せろというのでお任せした。

 どうやら、拠点に残ったものたちは、ゆっくりできたらしかった。


「さて、鳥害の話だ。なぜ、燕麦は鳥害に遭わずにすくすく育ったんだ?」

「ヤギが防いでくれていたのではありませんか?」

 ヴィクトルの言葉に、ケリーは首を振る。


「ヤギがやってくれたのは、雑草駆除だろう? それに鳥は草食動物のヤギを恐れないぞ?」

「それはたしかにそうですね」

「テオさん、ミミズを見たと聞いたが、他に生き物は見なかったか?」

「ダニはいたな」

 ダニが付いたので、ピイにとってもらったのだ。


「ふむ。ダニだけか」

「気付いたのはそれだけだな。もちろん探せばいただろうが」

「鳥害を受けてないうえに、虫害もうけていない。理由がわからない」

「全く受けていないわけではないぞ。虫食いのあとはあったし」

「その程度で済んでいることが奇跡だろう」

「べつのいきものがいる?」

「フィオ、その推測はあたっているかも知れないぞ」

 そういって、ケリーはフィオの頭を撫でた。


「虫と鳥を防いでいた謎の生物か。何だろうな」

「鳥かもしれないな。肉食の」

 ケリーの推測は当たっている気がした。


「確かに鳥なら可能性はあるな。イジェ何か聞いたことはないか?」

「ウーン。ワカラナイ。デモ、トリとナカイイオジサンはイタ」

「どんな鳥だ?」

「フクロウ」

「魔獣の? 大きさはどのくらいだった?」

「ワカンナイ。コノグライ」

 イジェは手を広げた。

 かなり大きいが、魔獣のフクロウではなくともあり得る大きさだ。


「こんどヤギが来たら、聞いてみるか」

「それがいいかもしれないね。テオさん、そのときはお願いするよ」

「わかった」


 ヤギは近いうちに拠点に来てくれるという話だった。

 削蹄と毛梳きのためだ。

 そのときに、もっと詳しく聞けばいいだろう。


「とりあえず、燕麦の干し場を作るよ。鳥害虫害対策は、後で考えよう」

「ワカッタ。イジェもカンガえる」


 俺とイジェ、ケリーは、食堂を出てボアボアの家へと向かうことにした。

 フィオとシロ、子魔狼たちとヒッポリアスにピイも一緒だ。


 ジゼラとアーリャ、ヴィクトルと数名の冒険者たちも付いてくる。

 残ったのは地質学者気候学者、それに収穫で疲れた冒険者たちだ。

 どうやら、お風呂に入るらしい。


「洗濯スライムと浴槽スライムにダニを取って貰わないとだしな!」

 そんなことを言いながら、ぞろぞろとお風呂場へと歩いて行った。


 ボアボアの家まで歩く途中、

「うーん、鳥害を防ぐには……網を張るぐらいしかないか?」

 ケリーは歩きながらボソボソ呟いている。


「網か。小鳥も入れない目の細かい網だろう?」

「ああ、そして、日光や風を遮らないよう、細い糸で作られているとなおよい。絹のようにな」

「絹か。絹はないが、丈夫で細い糸で作った網ならばいいんだろう?」

「もちろんだ。テオさん。作れるか?」

「作れるか作れないかで言えば、作れる。材料次第だが……」

 ヒッポリアスの鞍に使った網よりも、ずっと細い網だ。


「材料に、テオさんは心当たりはないのかい?」

「ヤギの毛を使わせてもらえれば作れると思うが……」

「ヤギの毛は服に使いたいんだよね?」

「ツカイたい! ケイトにツムぐタメのキカイもムラからモッテキテる!」

「おお、準備が良いね」


 以前、イジェの村から使えそうな物はまとめて魔法のカバンに入れて持ってきた。

 その中に糸を紡ぐための機械もあった。


「まあ、ヤギの毛の量次第かな。ヤギの毛が少なければ、なんとか別のもので代用しよう」

「うん。頼むよ」

「イジェ。燕麦を干す時間はどのくらいだ?」

「トオカぐらい!」

「そうか、そのぐらいなら、耐久性もさほどいらないし、ヤギの毛を使わなくてもいけるだろう」

「網ができるまで、ぼくが見張っとくよ!」

「そうか、ジゼラ、頼んだ」

「うん!」


 俺たちはゆっくり歩いて進んでいく。

 ゆっくりなのは、子魔狼たちが自分の足で歩きたがったからだ。

 子魔狼たちはまだ小さいので、歩行の速さはかなり遅い。

 俺やフィオが抱っこして運んだ方がずっと早いのだが、子魔狼たちが歩きたがったので仕方が無い。


「疲れたらいいなさい」

『つかれない!』「ぁぅ」『はしる』


 子魔狼たちが楽しそうなので、何よりである。

 それに、走りたいときに好きなだけ走らせてあげた方が、子魔狼たちの成長にも良いだろう。

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