表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

210/282

210 ヒッポリアスに鞍を乗せよう

 俺に気付いた陸ザメたちも集まってくる。

「べぇむべむ!」

「みんな、麦の収穫ありがとうな。喉とか乾いてないか?」

「べむう!」

「大丈夫か。いつでものどが乾いたら言ってくれ」

「べむぅむ!」


 子供のベムベムが右手に俺の作ったスコップを持ち、左手に持った燕麦を、

「む!」

 と言って差し出してきた。

 口から、燕麦の茎の一部が少しはみ出ている。


「ありがとう、ベムベム。助かるよ」

「べぇむ!」

 俺が燕麦を受け取ると、ベムベムは満足げに地面に座りもぐもぐを再開した。

 そして、チラチラと横目で俺を見る。


 ベムベムから、俺に撫でて欲しいという気持ちを感じた。

 それは大人の陸ザメたちも同様である。


「陸ザメたち、俺は急いで魔法の鞄を向こうに持って帰らないといけないんだ」

「べぇむぅ……」

「撫でるのは、それが終わってからな」

「べむ!」


 ベムベムはいま撫でないことを納得してくれた。子供なのに聞き分けが良い。

 大人の陸ザメたちも納得したようだった。


「さて、ヒッポリアス。待たせたな。鞍を乗せてみよう」

「きゅおおお」


 俺は魔法の鞄から大きな鞍を取り出して地面に置く。

 陸ザメたちの座る部分を四本の柱で、支える形になる。

 その柱の上の方、陸ザメたちが座る場所のすぐ下に、縄で作った網が張られている形だ。


「べむう~」「べむべぅ」

 陸ザメたちは一斉に鞍を見る。

 好奇心が強いのだろう。


「はい、ヒッポリアス、姿勢を低くして」

『きゅお~、ひっぽりあすちいさくなる』

「ん? ああ、それがいいな」


 ヒッポリアスは小さくなっって、鞍の下に入る。

 そして、巨大化した。

 しっかりと鞍が背中に乗った状態になる。


「きゅお?」

「ヒッポリアスは賢いなぁ」

「きゅっきゅお!」

 ヒッポリアスは嬉しそうに尻尾を揺らす。


「ヒッポリアス、当たって痛い部分はないか?」

『ない!』

「そうか、じゃあ、固定してみるな」

「きゅお~」


 俺は四本の柱同士を縄でくくって、ヒッポリアスに鞍を固定する。


「きつくないか?」

『きつくない。ゆるい!』

「ゆるいか。もう少しきつく締めよう」


 俺は縄を締めたり緩めたりして調節する。


『ちょうどいい!』

「そうか、それなら良かった」


 ヒッポリアスはきつめに締める方が好きらしい。


「今は良くても、時間が経ってきつく感じることもあるかもしれない」

「きゅお?」

「そのときは遠慮しないですぐに言うんだよ」

『わかった!』

「調節は簡単だからね。遠慮は絶対したらだめだよ」

『わかった!』

「それに、どのくらいの強さがちょうどいいのか調べるのも大事だからね」

『わかった!』


 ヒッポリアスはご機嫌だ。

 何を言っても『わかった!』と元気に返事をしてくれる。


『きゅお~、みんなをてつだいにいっていい?』

「いいよ。痛くなったり、違和感を覚えたらすぐに戻ってきなさい」

「きゅお!」

「あと、魔法の鞄も……」

『もってく?』


 ヒッポリアスの鞍に燕麦を乗せるなら、魔法の鞄は必須ではない気がする。

 だが、すぐに返すと俺は言ったし、ヒッポリアスの鞍がどう運用されるかもわからない。


「そうだな。イジェに渡してくれ」

『わかった!』

「でも、ちょっと待ってくれ。材料を取り出しておこう」

 俺は魔法の鞄から、金属インゴットと、木材を取り出した。


「大鎌がもっと必要になるかもしれないからね」

 ヒッポリアスが運搬を担って効率的になれば、その分の労働力を大鎌担当に割り振ることができるかもしれない。


「きゅうおー」

「お待たせ」

 俺が魔法の鞄を手渡すと、ヒッポリアスは口に咥えた。


『いってくるーきゅおー』

「気を付けるんだよ」

「きゅおー」

 ヒッポリアスは元気に走っていった。


「……フィオがいないけど、大丈夫かな」


 向こうにテイムスキル持ちがいないから、少し不安になった。

 だが、鞍に燕麦が積めると言っていたイジェがいるから大丈夫だろう。


 俺は去っていったヒッポリアスの後ろ姿を眺める。


「……べむ」

「ん? ああ、撫でるのがまだだったな」

 いつの間にか陸ザメたちが俺の前に行列を作っていた。


「ありがとうなー」

 俺は一頭一頭、順番に頭を撫でていく。


「べ~む~!」

 撫でられた陸ザメたちは満足そうに燕麦の収穫作業に戻っていく。

 全員を撫でおわると、燕麦の回収をピイに任せて、俺は大鎌の製作に取り掛かる。


「さっき作ったのと同じだからな」

 全く難しくはない。

 あっというまに、新たに大鎌を三本作り終わる。


「べむ?」

 作り終わった時には、陸ザメたちに囲まれていた。

 何をしているのか気になったらしい。


「向こうで冒険者が使う大鎌を作っていたんだよ」

「べぇむぅ~」


 陸ザメたちは納得したようだ。

 なにやらまた頭を撫でて欲しそうなので、順番に撫でていく。


 燕麦を収穫する、撫でられる、また収穫する。

 そういう流れが陸ザメたちにはいいらしい。


 俺が陸ザメたちを撫でていると、

「テオさん」

「どうした?」

 冒険者が三人やって来た。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ