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186 スライムたち

 ピイと一緒に下水槽の方へと歩いて行くと、「ぴぃぴぃ」という鳴き声が聞こえてくる。


「スライムたち元気だな」

『げんき!』


 スライムたちは下水槽の外に出て、ぴょんぴょんと跳ねて遊んでいた。

 俺とピイに気付くと、臣下スライムたちは跳ねながらこちらに駆け寄ってくる。


「ぴぃぴいぴい!」「ぴいぴい」「ぴっぴい」

 俺とピイを取り囲んで、元気にぴょんぴょん跳びはねている。

 前より少し数が増えている気がする。



「スライムたち、いつもありがとうな」

『ぴ!』

「「ぴぃ~」」


 ピイに褒められて、スライムたちは声を合わせて嬉しそうに鳴く。


「何か困ったことはないか?」

「ぴぃ?」


 どうやら特にないらしい。

 俺の頭の上に乗っていたピイがぴょんと地面に降りる。

 すると、臣下スライムたちがピイのことをあっという間に覆い尽くした。

 ピイを包み込むように、大きなスライムの山ができている。


「ピイ、大丈夫か?」

『だいじょうぶ』

「ぴいぴい」「ぴっぴいぃ」「ぴぴぴい」


 どうやらピイも臣下スライムたちも嬉しくて楽しいらしい。

 スライムという種族の遊びなのかもしれなかった。

 とりあえず、放っておいて良いだろう。


 俺は下水槽の中を覗いてみる。

 下水槽の底には透明な水が少しだけ溜まっていた。


「全く臭くないな」

『じょうかした!』

 臣下スライムの山に埋もれているピイが自慢げに言う。

 臣下スライムたちの言葉を、ピイが翻訳して伝えてくれる。

 俺にはテイムスキルがあるので、臣下スライムたちの言葉もわかる。

 だが、臣下スライムたちは一斉にしゃべるので、ピイが伝えてくれるのはとても助かる。


「いつもありがとう。スライムの浄化能力は凄いなぁ」


 一応、水と下水槽の自体に鑑定スキルをかけてみる。


「水は飲み水にしても問題ないレベルだし、下水槽は普段使っている食器より綺麗だな」

『えらい?』

「えらいぞ」

「「「ぴぴぃい」」」


 臣下スライムの山が声を揃えて嬉しそうに鳴いた。


「いつも、外でひなたぼっこしているのか?」

『してる』

「下水槽の蓋は?」

『でるときにあける! もどるときしめる』

「そっか、すごいな」


 臣下スライムたちは賢いので下水槽の開閉も自分でできるらしい。


『どのくらいためるのかも、やってる!』

「排水調整までやってくれているのか?」

『やってる!』

「…………ほんとうにすごいな」

『すごい!』

「「ぴぴぃい!」」


 ピイが賢いことは知っていたが、臣下スライムたちも充分賢いらしい。

 早朝、外に出ているのも、夜の間に下水をしっかり浄化しおわったからだろう。

 昨日の分の浄化が終われば、皆が起きてくるまで、新たな下水はほとんど流れてこないのだ。


「便槽の方も確認しておこうかな」


 俺は下水槽の近くにある便槽へと歩いて行く。

 下水槽と便槽は別々に作ったのだ。


「蓋はしまっているんだな」

『よるにもたまにながれてくる』

「あー、そうだな。たしかに」


 真夜中にはほとんど流れてこない下水と違って、夜間にも人はトイレをするものだ。

 俺は便槽の蓋を開けてみる。

 悪臭を覚悟していたが、全くの無臭だった。


「ぴぴぴぴい」「ぴぃぴい」「ぴい」「ぴいい」


 便槽の中にいた臣下スライムたちが嬉しそうに鳴いた。

 便槽の底には少量の透明な水が溜まっている。


 俺は一応便槽自体と水に鑑定スキルをかけてみた。


「こっちも下水槽と同様に飲めるレベルだし、便槽自体も普段使っている食器より綺麗だ」

『えらい?』

「偉いぞ。いつもありがとうな」

「「ぴぴぃい」」

「なにか困っていることはないか?」

『ないって』


 俺は便槽の臣下スライムたちを見てふと思った。

 外で遊べていない便槽の臣下スライムが少しかわいそうだ。


「外で遊びたくないのか? もし遊びたいなら、何か工夫して遊べるようにしたいが……」

『きのうあそんだ』

「ん?」

『いちにちこうたい』

「下水槽と便槽を」

『そう』

「そうなのか。それならよかった」

『よかった』


 俺は改めて便槽にいる臣下スライムに尋ねる。


「冬に備えて、何かして欲しいこととかないか?」

「「ぴぃ~~」」


 山のように積み上がった臣下スライムと便槽の中の臣下スライムが、同期するように鳴いた。


「ピイもなにか思いつかないか?」

『ふゆ~』

「下水も凍るだろうし、蓋の上に雪も積もるだろうし」

『みんな、さむさにつよい』

「そうなのか?」

『そう』


 そういうとピイは

「ぴ~~~~い」

 と長く鳴いた。


 するとピイを包んでいた臣下スライムたちが一旦散らばって、ピイの横に山をもう一度作る。

「ぴ~~」

 そして、プルプルし始めた。


『さわって』

「ん? スライムたちをか」

『そう』


 俺はピイと臣下スライムの山まで移動する。

 そして、臣下スライムの山に手を触れた。


「熱っつ!」

 スライムたちは、とても熱くなっていた。

 もう少し長く触っていたらやけどしていただろう。


『とかせる』

「「ぴぃ~~」」

 ピイと臣下スライムたちが自慢げだった。

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[一言] やっぱしスライムさん最強!
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