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179 甜菜の収穫

 飛竜が降りてきたついでに俺は全員のことを陸ザメたちに紹介しておいた。


「べえむべむべむ」


 陸ザメたちもそれぞれ挨拶していた。

 その後、俺は甜菜でもてなされながら、俺はベムベムに尋ねた。


「ベムベム。何か困っていることがあったら手伝うよ」

「べーむ」


 俺があげたスコップを大事そうに抱えながら、ベムベムは考え込む。


「住処でもいいし、農具とか道具の補修でもいいし。みんなも何かあればいってくれ」


 ベムベム以外の陸ザメにも尋ねた。


「べぇむぅ?」


 みんな首をかしげて考えている。

 もしかしたら、特に困っているわけでもないらしい。


「収穫はどうする? 人手が足りないなら手伝うけど……。そもそも収穫したあとどうやって保管するんだ?」

「べむべーむべむ」

「ふむ。収穫した甜菜の葉っぱを切って、土中に並べて埋め直すのか」

「べえむ」

「それで春まで持つと。すごいな」


 甜菜が大きいので、重労働になるだろう。


「手伝おうか?」

「べむべむー」


 収穫したいというので、手伝うことにする。

 陸ザメたちと一緒に、すぐ近くにある甜菜畑へと移動する。


「べえむう」

「そうか。収穫できなくて困ってたのか」


 収穫の時期が来たのに、畑に近づくと悪魔が現われるのだ。

 住処にも戻れないから、農具も取りに戻れない。

 収穫できなくて、ひたすら困っていたようだ。



 俺とジゼラにアーリャ。

 そして再び大きくなったヒッポリアスに飛竜がいる。

 大きい甜菜でも、あまり苦労せずに収穫できるだろう。


「べむべむ!」


 陸ザメたちは嬉しそうに、大切な農具をつかって収穫していく。

 その手際はとても良い。

 俺たちはその様子を真似て、手伝いをするだけだ。


「きゅうお」「があるう」

「べむむ!」


 ヒッポリアスと飛竜は身体が大きく力も非常に強いので、軽々と掘り出していく。

 陸ザメたちも尊敬のまなざしでヒッポリアスたちを見つめていた。

 全ての甜菜が掘り起こされるまでに、一時間もかからなかった。


「掘り起こした甜菜は、土中に埋めるんだっけ?」

「べむ!」


 わざわざ埋めるために掘り起こすと言うのも変な感じはする。

 だが、葉っぱを切り落して、適切にやれば、腐らずに保管できるようだ。


「穴掘りも手伝うよ」

「きゅうお」


 ヒッポリアスも任せろと言っている。


「……べえむう」「べむべむ」


 陸ザメたちは考え始めた。


「保管場所は決まってないのか?」

「べむ」「べえむべむべむ」


 例年なら、収穫前に時間を掛けて選定するのだという。

 だが、今回は悪魔のせいで、そんな時間は無かった。


「べむう」

「なるほど、来年の植える場所の近くに移動して保管するのか」


 陸ザメは、収穫と同時に、住処を変えるものらしい。


「べむべむう」

 陸ザメたちは、とても困っているようだ。


「じゃあ、新しい住処が決まるまで、俺が保管しておこうか?」

「べむ!?」

「いいよ。このぐらいの量なら、魔法の鞄に全部入るし、魔法の鞄に入れておけば、品質も落ちないし」

「べむう!」「べむべむ!」


 是非お願いすると、陸ザメたちが言うので、俺は魔法の鞄に甜菜を入れていく。


「べえむう」「……べえむう」


 魔法の鞄に入る様子を見て、ベムベム以外の陸ザメたちはぽかーんと口を開けている。

 どうやら、感動しているようだった。


 その後、何か手伝えることはないか、改めて尋ねる。

 しばらく話した結果、陸ザメたちは、これ以上手助けは必要ないらしかった。

 困っていないならば、それに越したことはない。


「じゃあ、俺たちはいったん帰るね。ベムベムは一度来たから知っているけど、俺たちの拠点はあっちにあって……」


 ベムベム以外の陸ザメたちにも俺たちの拠点の位置を教える。


「困ったときや手伝って欲しいことなんかがあれば、いつでも来てくれ」

「べえむべむ」

「特に用がなくても、遊びに来てくれ。引っ越して来てもいいよ。イジェも喜ぶ」


 陸ザメたちが遊びに来て、一番喜ぶのはケリーの気がしなくもない。

 ケリーは、陸ザメたちが遊びに来なくても、明日にでもここに連れて行けと言うに違いない。


「それじゃあ、また来るよ」

「べえむ」


 俺は陸ザメたちに別れを告げて、ヒッポリアスの背に乗った。


「があるう?」

「うん、ありがと。でも帰りは走ろうかな。運動不足になるし」

「がるる」


 ジゼラは飛竜の背に乗らずに走って帰るつもりのようだ。


『あーりゃ、のる? きゅうお!』

「アーリャ、ヒッポリアスが乗って欲しいみたいだが、どうする?」

「えっと、うん。のる」


 俺とアーリャが背に乗ると、ヒッポリアスはゆっくりと歩き出す。


「べむうべむ」

「うん、またな」


 陸ザメたちが俺たちの後ろを付いてくる。

 見送ってくれているのだろう。


「きゅうおー」


 陸ザメたちが付いてくるので、ヒッポリアスも走ったりしない。

 ヒッポリアスも別れを惜しんでいるのだろう。


 そう思ったのだが……

「ベムベムたち、ずっと付いてくるな」


 歩きはじめて十分が経ったのに、陸ザメたちは全員がずっと付いてきていた。

 別に甜菜を取られると思っているわけではない。

 それは、テイムスキルがあるのでわかる。


「一緒に来たいのかな?」

「連れて行ってあげよ?」


 ジゼラとアーリャがそんなことを言う。

 二人は、陸ザメを拠点に連れて行きたいようだ。


「そんな気がするな」


 陸ザメたちは、短い手で農具を持って、短い足で一生懸命付いてきている。

 ベムベムは俺の作ったスコップを抱えてヨタヨタと付いてきていた。

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